第29話 不明
――真夜中
とある豪華な屋敷の一室。男は豪華な椅子に座りワインを口にした。
横には薄い服を纏い肌を露わにした女が横になっている。男の名前はバルバロッサ・ドゥプレ。
ドゥプレ子爵家の現当主である。
バルバロッサは、銀色の長い髪に赤い瞳をしている目の前の女を見ながら考え事をしていた。
ついにここまで来た。
この日のために、多くの犠牲を払ってきたのだ。
今さら引き返すわけにはいかない。
必ず成し遂げる。
そのために今日も準備をしてきたのだ。
バルバロッサは、頭の中で計画を反すうしながら、これからの行動について考えていた。
この女、カーミラ・グラシアンは当初娘の侍女としてこの屋敷にやってきた。はじめは侍女の中の一人で顔も覚えていなかった。娘の侍女として働き、特に問題も起こさなかったが、ある日娘が体調を崩し寝込んでしまった。その時に看病したのがカーミラだった。もともと娘の体調が悪いことは知っていたが、まさか倒れてしまうとは思わなかった。
わざわざ医者を呼び、治療させたのだが、娘は一向に良くならず、医者の出した薬が原因でさらに体調を悪化させてしまった。
そんな時、侍女カーミラがどうしてもと娘を看病し、どこで得た知識なのか娘の治療も行った。徐々にではあるが様態は回復し、そのうち屋敷内であれば自分で移動できるまでに回復した。
もちろん感謝はしたが、その時点では侍女が優秀であるだけで自分が何かしらこの侍女と関わることになろうとは思いもしなかった。
それからしばらくしてカーミラは娘を伴い度々私の仕事部屋にも訪れるようになった。
はじめは娘との談笑など楽しんでいたが、徐々に私の仕事にも興味を持ったようだ。娘も私の仕事に興味を示してくれてうれしかったものだ。そうこうしているうちに、私はカーミラの有能さに気付いた。カーミラは書類の作成、計算、予測、展望など多岐にわたって有能さを示した。私は、仕事がしやすいと喜び手元に置くことにした。
そして、カーミラを私の補佐役として正式に採用し、現在は屋敷内の重要な仕事まで任せるようになり、今では実質的な領地運営をカーミラが行っているといっても過言ではない。
カーミラとそういう関係になるのも時間の問題であった。若く美しく、知的であり実務能力も高い。この女を手放したくはないが…
私はグラスに入ったワインを飲み干し立ち上がった。
やっとここまできた。
あとは、計画を実行に移すだけだ。
計画は順調に進んでいる。
すでに準備は整っている。
後はこの女を使って実行するのみ。
この国を変える。
そのためには……
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