第36話 コルダラ城塞都市 03

 その商家は城壁内にある商店の一つで「モンテ便商会」、王都への積み荷の輸送を行っている。店主のオダリスと話をすると、次男のマーチムは真面目でしっかりした青年だったらしく、何かしらのトラブルに巻き込まれたのではないかと話していた。最近起こっている無差別殺人の噂が流れていることもあり、不安を感じている様子だった。

 その後、聞き込みを続けると、マーチムは最近よく夜に出かけるようになり、父親が誰と会っているのかを問うといずれ紹介する、とても素敵な人と出会えたと嬉しそうに話していたため、ついに身を固める決心をしたのかと思っていたとのことだ。しかし、どこに出かけ、誰と会っているのかまではわからないと言う。


(タイミングが良すぎるな……)


 王都からの捜査員が来ることを予想して、犯人に口封じをされた??

 考えすぎか?


 俺はそのことをアベルとリリアナ、エレナに伝える。


「まず失踪者の交友関係からかな」


 アベルが答えるとリリアナが続ける。


「失踪者と会う可能性のある人物を洗い出し、そこから足取りを追いましょう」


 俺は、二手に分かれることを提案する。


「俺とアベル、エレナはリリアナと共に行動して。まずは交友関係の洗い出しからはじめよう」


「わかりました。任せてください!」


 とエレナは張り切っている。


「エレナ、あんまり無理はしないでね」


「はい、わかりました」


 俺達が話を進めていると、後ろの方で声が聞こえてきた。


――ドンッ!


 と扉が開き、怒りに満ちた声をあげながら若い女性が近づいてきた。

彼女はこちらを睨みつけながら話しかけてくる。


「貴殿らが王都から来られた派遣警察騎士団の方々か!? モンテ便商会の一件についてはまだこちらでも把握していないことが多く勝手に先走ってもらっては… って若いな??」


(ええ? そちらこそ)


と思いながら静かに答える


「えーっと、そちらは? お名前をお聞かせ願えますか?」


「あ、ああ! 失礼した! とにかく! この件についてはまだ我々も把握できていない状況なのだ。勝手に捜査してもらっては困る!」


だめだ、お話にならない。ここはひとまずもう一押し。


「申し訳ありません、どこの誰かわからない方に返答をする気はありませんし、必要を感じません、申し訳ありませんが、所属とお名前をお伺いしても?」


「うぬううう! も、申し訳ない。私は、カルディア侯爵領捜査隊隊長で騎士のパリー・フォン・アルフレットだ」


あら、やればできる子だった。


「申し訳ありません、パリー隊長。今朝の連絡時にお見えにならなかったのでご挨拶もできませんでした」


ついでにもう一押しさせていただいた。


「い、いや構わんよ。こちらの件に関しては我々も一緒に話を聞かせてもらえるとありがたい」


そういうとパリー隊長は静かになった。

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