第34話 コルダラ城塞都市 01

 コルダラ城塞都市は王都から西に約600Kmの場所にあり人口約30000人、エルキーポ聖王国との国境の都市だ。

 城塞都市というだけあった周りは城壁に囲まれた都市である。建国当初は、エルキーポ聖王国との国境争いが頻繁に起こっていたが200年経った今では聖王国からの攻撃は途絶えており、ここ百年の間は平和な期間が続いている。南には穀倉地帯が広がり、麦の生産を行い、王都への輸出も行われている。

 しかし、近年聖王国からの移民が大量に流入し、城壁の外にも移民が暮らす住宅がひしめいている。城壁内に住む市民と城壁外の貧民の差が激しくなっている。そんな状況もあり、聖王国では生きていくことが難しい状況が起きていると推測され、実際に王国側に流れてきた移民からも聖王国が急に住み辛くなりこちらに流れてきたという者が数多くいた。


 そんな城塞都市で、最近奇妙な噂が流れ始めた。

 それは、王国内で起こっている無差別連続殺人事件の犯人がこの城塞都市にいるというものだった。その噂は瞬く間に広がり、城塞都市内ではこの事件を話題にしない日はないほどだった。そのため、急遽この城塞都市の領主であるカルディア侯爵は、この城塞都市を守る為の憲兵達を集め、警戒を強めているところだった。

 王城からも今回の事件について伝令があり、まもなく王都から特別捜査隊もやってくることになっている。憲兵隊と合同で捜査を行っている姿を見れば民も落ち着くだろうと考えている。


 カルディア侯爵はこの事件の解決の為に、優秀な人材を集めていた。

 そして今まさにカルディア侯爵の元へ一人の少女が訪れた。少女の名前はパリー・フォン・アルフレット辺境伯令嬢、齢17歳。彼女はアルフレット伯爵家の長女であり、この領の騎士団長でもある父を持つサラブレッドであった。

 彼女の父は騎士爵でありながら王国最強の男として名を馳せていた。その強さ故に騎士団長を任されることになったのだ。また、彼は平民出身ながらも高いカリスマ性を持ち、貴族の中にも彼のファンは多い。


「フォン・アルフレット、参りました」

「うむ、楽にしてくれ。すでに聞き及んでいるとは思うが間もなく王都から特別捜査隊がやってくる。彼らと合同捜査を行ってもらいたい」


「!? 公爵。 以前から申し上げておりますが合同捜査など特に必要ないかと思われます。この城塞都市では事件は起こっておらず、民の噂話ばかりが大きくなっている状態です。我々が街に出向き民を安心させれば済む話ではないでしょうか?」


 凛として言い放つ。


「君の言いたいことはよくわかっている。だがな、王都からの命だ。逆らうわけにはいかんしな、ここは堪えてくれ」

「そうですか…… わかりました。それでは私は何をすればよろしいのでしょうか?」

「そうだな、まずは特別捜査隊と合同で街の様子を見て来てほしい。噂話の出所を探ることも大切だからな」

「承知しました」

 そんな会話が行われているなどとは知らず、俺たちはコルダラ城塞都市に到着する。

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