第22話 事件 ノア 10
死体が発見されたアリシア嬢の部屋、ここで何か見落としていないかを確認してみる。
「魔法の痕跡があったと思うんですが、解析は終わってますかね?」
憲兵長に尋ねると難しい顔をして答えてくれる。
「どうやらあの時見た模様は幻術の類だったらしく詳しい解析は現在ラステア王国立古代遺物研究所に調査を依頼しております」
あそこかあ、ラステア王国立古代遺物研究所…… その場所こそ俺たちが騎士学校時代に事件を解決した場所だったりする。あの時の事件がなければここにこうしていることもなかったなあなどと考えたが、今はそれは関係ない。
あの蜘蛛のような模様の幻術は既に解除されているとのことだった。俺は念のためもう一度、床、ベッド、クローゼット、机の引き出し、すべてを確認するが、やはり何もない。あの蜘蛛のような模様とアリシア嬢の遺体の位置関係をもう一度考えてみるが何もわからない。俺は最後に部屋全体を眺める。
すると、ある違和感に気づく。
天井に目を向けると、ちょうど死角になっているところになにかがあるように見えた。
その場所だけ暗くなっておりよく見えないが、天井裏に抜ける何かが置いてあったような跡が残っている。おそらく何かを置いていたのだが、その何かは消えてしまったのではないかと思われた。
俺がそのことを告げると憲兵長は驚き、すぐに天井裏を確かめに行った。
しばらくして戻ってきた憲兵長は 申し訳ございません、天井裏には何もなかったと報告してきた。天井裏に抜けると思われる痕跡については確認できていなかったと悔しそうな顔で伝えてきた。
俺はもう一度確認したいと伝え、天井裏へ向かう。天井裏に上がると、憲兵隊長の足跡のほか、何かを置いてあったような埃のかぶっていない箇所があった。
(犯人はここにあった何かを持ち去るために2回の侵入が必要だったのか?)
しかし、それが何なのかが分からない。
なぜこの部屋から天井裏に何かを隠す必要があったのかも不明だ。
(これは一度屋敷内の調査をした方がいいかもしれないな)
そう思い屋敷内を調査することにした。
リリアナとアベルにも確認し、俺たちは屋敷内の調査を行いたいと憲兵隊にも伝え合同で各部屋を捜索したが、この部屋以外に天井裏に抜けられる部屋は存在せず、特にこれといった情報は得られなかったようだ。
続けて使用人たちに聞き込みを行うことにした。第一発見者のメイドについては錯乱しておりとても話すことができないということなので、応接室で侍女に事件の前後の状況聞き取りを行う。
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