第21話 事件 ノア 09
屋敷に到着し、玄関にいる執事に話しかけるとすぐに案内してくれた。
執事は事件のショックから憔悴しきっていて今にも倒れそうだ。
事件現場に入り、あたりを見まわす。現場は保存されており、あの事件以降何も変わっていない。
俺は執事に事件があった時の状況を屋敷で働いていた人たちの話もあわせて再度詳しく尋ねる。
「お嬢様の件、お悔やみ申し上げます。心労もおありと思いますが、お嬢様を殺害した者をなんとしても拘束したいと考えております。なにとぞ、お話をお聞かせください」
と、できるだけ丁寧に執事に伝える。
執事はゆっくりとうなずきながらぜひともと小さくつぶやいてから語り始める。
「あの日フィンダード子爵夫妻は王都へ出向いており、事件が起こった時この屋敷には殺害されたアリシア嬢と私、メイドが5名、お嬢様の侍女、庭師、警備4名が屋敷におりました。夜間ということもあり、警備2名以外はそれぞれ屋敷の自室で休んでいたと申しております。あの日の夜中、突然悲鳴が聞こえ急いで駆けつけてみると、メイドと侍女たちが怯えた表情でこちらを見ておりました。そして部屋に入ると、そこには血まみれになったお嬢さまが床に倒れておりました」
そう言い終えると、執事は床に倒れこんでしまった。相当なショックだったことがうかがえる。
最初に発見したメイドについて尋ねると、憲兵長が
「最初に遺体を発見したのはメイドの1人ということですが、彼女はあまりの恐怖に錯乱してしまい、何を言っているかわからない状態で、結局他の者の証言も参考にしています」
「ちなみにその時部屋にいた人数は?」
「はい、4名でございます。執事、メイドが2人、警備の者が1名でございます」
「なるほど。ちなみに、遺体はどのように発見したのですか?」
「はい、窓の鍵は内側から閉められていました。唯一の出入り口である廊下側の扉の鍵は開いており賊はここから出入りしたと思われますが、警備の者は特に侵入者もなく物音もなかったと証言しています」
と憲兵長が答える。
部屋の中を調べたが、特に不審な点は見当たらなかったことを伝えると憲兵長は少し驚いた様子を見せる。
俺は続けて室内を歩きながら尋ねる。
ベッドの下、クローゼットの中、机の引き出しなど調べるが、やはり怪しいところはない。続いて窓の外を見るが、ここも同様に調べる。
やはり特に怪しいものはなかった。
次に壁を調べるが、やはりこちらも変わったところは見られない。
床板を外すが、隠し通路のようなものもない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます