第17話 事件 エレナ 05

 私達もエレナ様を探している事を伝えた上でエレナ様がいなくなった日の事を彼に聞いた。

 すると、驚くべき答えが返ってきた。

「俺はわけあって執事見習いから離れて王宮内にいました。そこで仕事をしている時に突然意識を失ってしまったんです」


「それで?」


「目が覚めたら知らない場所でした」


「そこはどこなんでしょうか?」


「わかりません。ただ、とても大きな建物がありました。そこで働いている人たちはとても忙しく動き回っていて大変そうでした」


「建物ってどんな感じの建物だったか覚えていますか?」


「すみません、覚えていません……」


「そうですか…… ちなみにそこで働いていた人たちはどのような服装をしていましたか?」


「そうですね…… 黒いローブのようなものを着ていて、腰帯をつけている人が多かった気がします」


「他には?」


「はい。あと、変わった服を着ていた人もいました。見たこともない服だったのですが、あれは何だったんでしょう……」


 国外か?? この国以外の場所であれば変わった建物、変わった衣装ということにも納得がいく。しかしだとするとなぜ彼はこの街に??


 まぁいい。とりあえず情報を集めよう。

 それから私たちはいくつかの質問をした。

 その結果わかったことは、彼と一緒にいた人がエレナ様のことを知っていたということだけだった。

 だが、これで確信に変わったことがある。

 それはエレナ様が攫われた可能性が極めて高いということだ。

 そうなるとエレナ様を攫った人物は国外の人間ということになるだろう。

 他国の仕業ということだ。ただ、それがわかったところで何も変わらないのだが……。

 とにかくこの情報を報告しなければ。

 そう考えていると、目の前の男が急に苦しみ始めた。


「ガストンさん?!」


「うぅ…… ……ぐああああっ!!!」


 ガストンは頭を両手で押さえながら地面に倒れた。


「ガストンさん!! しっかりして下さい!! ガストンさん!!」


 私が何度も呼びかけたが返事はなかった。


 くそっ!! 一体何が起きているんだ!?


 するとガストンの体から黒いモヤのようなものが浮かび上がる。


「なんだこれは!?」


 次の瞬間、その黒いモヤは形を変えて巨大な蜘蛛の姿になった。


「なっ…… 魔獣だと!?」


『グルルルルッ!! アブ! アブブ…』


 その魔獣はこちらを見ると、牙を見せながら威嚇してきた。


 まずい…… このままではやられる!!


 そう思った私は剣を抜き戦闘態勢に入った。

 そして、すぐに攻撃に移ったのだが……。


 こいつ強い!!


 まるで歯が立たない。


 私の渾身の一撃を食らってもビクともしない。

 それどころか全く効いている様子もない。

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