第15話 事件 ノア 06
その後、ひとしきり俺に「姫」を外したエレナ呼びを強制され、何度もエレナと呼ばせていただいた翌日、俺はリリアナにエレナ姫の服や日用品の買物を頼んだ。
エレナ「姫」は昨日と同じ服装で、しかも汚れていてボロボロだ。
「本当に申し訳ありません。何から何まで……」
エレナ姫は申し訳なさそうにしている。
「何を言っているのです。困ったときはお互い様です。何も思い出せない状況でお一人でいらっしゃったのですから…… 何も心配いりません。ノアが放り出しても私が姫様をお守りいたします」
と言い放ち、改めて、外では「姫」はつけないほうがいいだろうと話し合い、エレナを連れて街に出ていった。
しかしリリアナが姫と呼んでもまったくスルーなのに俺が姫や様をつけるとにっこり笑顔でエレナと呼び直させるとか解せぬ。にっこり笑顔なのに殺し屋の目をしてるし…解せぬ。
俺は事件の聞き込みに向かう。まずは街の憲兵隊詰所に行き話を聞こうとするが、たいした情報は得られず、仕方なく今度は冒険者ギルドに行って聞いてみるが、やはり情報は得られなかった。
俺は一旦詰所に引き返し、先ほどは会えなかった衛士長に会うことにする。
「すみません、ちょっといいですか?」
「ああ、なんだ?」
俺は事件について新たに分かったことはないか尋ねてみる。
「残念ながら今は何もわかっていない。目撃証言も一件だけだ」
「そうですか…… 目撃証言とは?」
「ああ、事件のあった場所の近くにいた商人の話によると、夕方頃、館が襲われる前に何かが館に入っていくのを見たらしい。もしそれが犯人だとしたら大変なことだ。一刻も早く見つけ出さなければならない」
「そうですね、ありがとうございました」
俺は礼を言い詰め所を出ると再び聞き込みを開始する。
だが結局有力な手掛かりは得られないまま夜を迎えてしまった。
俺はため息をつくとリリアナ達が待つ宿に戻る。
宿に戻るとリリアナが待っていた。
そして俺の顔を見るなり小声で話しかけてくる。
「やっぱり何も覚えていないようです。このまましばらく様子を見るしかないかと思います」
「そうだな、仕方ないな。明日また色々調べてみるよ。リリアナも疲れただろ、ゆっくり休んでくれ」
「はい、ありがとうございます」
リリアナは笑顔で答える。
俺はエレナにも部屋で休むように促し、自分も部屋に戻りこれからのことについて少し整理する。まず、この事件についてある程度調べ終わるまでは王都に帰ることにはならないだろう。目撃証言のあった館近くの商人にもう一度話を聞くしかない。
エレナ姫については、しばらくこのままリリアナに任せておき、王都に戻って王女の側近に尋ねるしかない。現状、打てる手はあまりない。
俺は諦めるとベッドに入る。
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