第11話 事件 ノア 02
アベルは俺と同じく、父親が騎士で男爵のアベルファナ・シラーニ。勇気と行動力があり、同じような環境で育ったこともあり入学当初から気が合い、話もよく合った。騎士学校で初めてできた友人である。彼になら戦場で背中を預けられる、彼もきっとそう思ってくれていると感じている。彼は緑髪を短くかりあげていて、顔つきは中性的だ。
リリアナは茶色い髪が肩にかかるくらいの長さで、目が大きくとてもかわいらしい女の子だ。子爵家の三女で少し特殊な境遇の持ち主である。彼女はその境遇からか常に周りに気を使う優しい心を持った少女だ。彼女もまた俺にとって初めての友であり、彼女だけはどんなことがあっても守ってやろうと思える存在でもあった。
馬車の中で何か昔の夢を見ていたような……
なんだろうこの違和感は?
何か忘れている様な気がするんだけど思い出せない。
う〜ん 何を忘れてるんだっけ?
頭を捻り必死に考えるが何も思い出せない。
そんなことを考えているうちに徐々に意識がはっきりしてきた。
すると隣に座っていたアベルが話しかけてくる。
「よりによって初任務が貴族の殺人事件とはなあ、ついてないよなあ」
俺はため息をつきながら答える。
「しかたないよ、最近は戦争だけじゃなく王国内でも頻繁にこんな事件が起こってるし」
最近、ずいぶんきな臭い事件が起こっていて犯人は単独とも複数とも言われている。ある時は女性を殺し死体を切り刻んでバラバラにし、それを町中にばら撒くという残忍極まりない行為を行っているのだ。しかも犯行方法は毎回違っていて、被害者も無差別に選ばれているため、捜査はかなり難航している。
さらに恐ろしいことにそれらの事件は王国内だけでなく周辺の国々にも広まっていて、既に被害にあった数は50を超えてしまっている。そのため、他国からもかなり警戒されているのだが未だに犯人の目星すらついていない状況だ。
そして我が国でもここ数日だけで3件もの事件が起こり、うち1件が今回俺たちが調査に向かっている王都から北東約140Kmにあるハイダックの街である。
今回の事件については既に憲兵隊が情報収集をしているらしく、現場付近を封鎖して関係者以外立ち入れないようにして大規模な捜査を行っているらしいのだが、それでも事件の解決には至っていない。ちなみにこの事件、殺された貴族はハイダック領フィンダード子爵家の第4子で、当初フィンダート子爵夫妻が留守にしている間の強盗殺人事件かと思われていたが、被害者の殺害状況から子爵に対する怨恨による犯行ではないかと言われているそうだ。
これらの情報はあくまでもこれまでの報告に過ぎず、正確なところは分からない。だから今回は我々が実際に現地に行って調べるしかないわけだ。
そんなことを考えていると馬車が大きく揺れる。
どうやら目的の場所に着いたようだ。
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