第10話 事件 ノア 01
「……い ぉい おい!! 起きろ、ノア!!」
なんだか昔の夢を見ていたような気がするけど、誰かに呼ばれて目を覚ます。
目の前には俺の顔を覗き込んでいるアベルとリリアナがいた。
俺は何事かと思い体を起こすが、頭がボーッとしていて思考が纏まらない。
一体どうしたんだろう? そんな事を考えていると
「やっと起きたな。ってかよくこんな時に寝ていられるもんだ。むしろ感心するわ」
「大丈夫ですか? お疲れだったのでしょうね」
アベルとリリアナが心配そうな顔で聞いてくる。
「あぁ、ちょっと寝ぼけてたみたいだ」
まだ少し頭がボーッとしているから、軽く頭を振りながら答えているとリリアナがコップに入った水を差しだしてくれた。
「ありがとう」
そう言って受け取ると、水を一口飲む。冷たい水が喉を通り胃の中に入ると体が目覚めていく。ふぅーっと息を吐きながら周りを見渡すと、そこは我々の初任務地へ向かう馬車の中だった。途中で眠ってしまったらしい。
俺はリリアナに声をかける。
「俺ってどれくらい寝てた?」
リリアナは一瞬驚いた表情をしたけれどすぐに笑顔になり
「約2時間ほどでしょうか。お疲れだったようですね。よくお休みになっていましたよ」
と答えてくれた。
そっかやっぱり二時間も寝ていたのか。確かに疲れていたし、移動中に眠れるのはありがたいんだけどね。でも今は目的地に向かっている途中だし、こんなところで眠っていたら魔物に襲われてしまうかもしれない。まあ襲ってきたとしても、整備された街道でたいした魔物は確認されていないので大丈夫だとは思うけど。
ちなみに俺たちは騎士学校を卒業し、派遣警察騎士団に配属されている。今回の急行は派遣警察騎士本体到着前の地ならしのためだ。
派遣警察騎士団に配属されたきっかけは、俺たちが騎士学校在籍中に起こったとある事件を解決してしまい、それを見込まれてしまったというところである。
くそったれ校長め、あ、いかんいかん。
本当は近衛騎士になって第三王女エレナ姫に仕えることができればと淡い期待もしていたのだが見事に打ち砕かれてしまった。もっと言うと騎士学校在籍中もエレナ姫とは会う機会もなくただひたすら強い騎士になるために訓練を行ってきた。
唯一の長期の休みにあんな事件にも巻き込まれさんざんな目にあってしまった……
まあそれはさておき、ともかくそういった経緯で俺、アベル、リリアナの三人は仲良く派遣警察騎士団の騎士見習いにあいなったわけである。
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