第9話 事件 エレナ 03
会議の後、アルバン元帥は軍務省の元帥室にエレナ王女の部下3名を呼び会議の顛末を伝えた。この3名はエレナ王女の側近として王女が幼いころから仕えていた者たちで、事件には確実に関りがないとされた者である。
「そうか、王がそんな事を言ったのか…… 」
「信じたくありません……」
「…」
王に報告した時の様子を伝えると3名の顔色が変わる。
さらに、自分たち以外の側近の処遇について、それぞれ取り調べを受け身の潔白が証明されてもしばらくは王宮内に留まることになることも知らされた。
「エレナ王女様の足取りは全くつかめておらん。あの化物も含め今どこにいるのか全く分からん。そこでだ、貴様ら3名はこれより王女捜索の特別任務に就いてもらう。何か心当たりがあればどんな些細な情報でも構わん。そして、もし見つかった場合は直ちに王都に帰還する事を命じる。いいな?」
「「「はい!謹んで拝命いたします!」」」
3名が揃って敬礼する。
「王からのお言葉にもあるように、決して国民に王女が誘拐されたなどと気取られてはいかん。そしてこれはあくまでもわしの勘なのだが、どうも他国に敵がおるような気がしてならんのだ」
アルバン元帥の言葉に3名が息をのむ。
何者かによってエレナ王女が攫われた事は間違いない。だがそれが一体何者なのか? 誰がなんのためにやったのか? そして目的はなんなのか? 現時点では何も分かっていない。
エレナ王女がいなくなった事でいったい誰が得をするのか、王族・貴族だけではなくそれこそ王国の弱体化を狙う他国の敵まで想定される。
しかし、現状では情報が少なすぎるため、そちらは軍務省が調査を行う事になった。
すると3名の内の1人がアルバン元帥に質問をした。
「その情報は我々にも伝えていただけるのでしょうか? 王女の誘拐が他国の者も関与しているのであればそれこそ我々だけでは姫の救出は難しくなります」
「当然じゃな。姫様にはわしも借りがあってな。ほんの小さな時分に… まあこの爺にも優しく接してくださったのじゃ。何としても姫を探し出さねばならん! 王族・貴族、他国についてはこちらで情報を集める。貴様らはまず盗賊など犯罪者集団から洗い出してほしい。まあ蜘蛛のような化物などそこらのチンピラには用意できまいて。ある程度の者が裏におろうがな。そなたらも何か心当たりがあればどんな些細な情報でも構わん。知らせよ」
「「「はっ!!」」」
エレナ王女の行方を探すための特別部隊が結成された。
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