第36話 ジムでの3人

 考えてみればこの状況って、かなりヤバいんじゃなかろうか。

 

 俺たちをニコニコしながら見つめるどうみても20代半ばにしか見えないジムのマドンナと俺は2回もとてつもなく激しい関係を持った。


 そしてそのマドンナが産んだ環奈は、環さんと俺がそういう関係であることを知っている。それに加えて俺は環奈とキスをしてしまったのだ。


 この親子と関わることによって、俺は実に様々な経験をする事ができた。


 だから今日は歯を食いしばって、身体を鍛えて、環奈が筋トレについて何か聞いてきたら親身になって懇切丁寧に教えようではないか。


 と、考えた俺は笑顔の環さんに視線を送って口を開く。


「久しぶりです……」

「そうね。ここのところ、ここに顔出さなかったから何かあるんじゃないかと心配してたわよ」

「い、いいえ。別になんもなかったっていうか」

「本当に?」


 ニットに長いスカートを身に纏っている環さんは目を細めて俺と環奈を交互にみる。


 すると、環奈が身体をひくつかせて頤に手を当てる。そして、その手は徐々にツヤのある唇へと近づく。


 環奈よ……


 環奈のウブな反応を見て俺がめっちゃ困った顔をすると、環さんがドヤ顔を作った。だがそこには隠しきれない艶美があった。


「ふん〜樹」

「は、はい」

「樹は高校生よね?私は大人で」

「はい!環さんはとても立派な大人で、私は調子こいたガキンチョウでございます」


 環奈が妖しい表情を見せたせいでもあるが、環さんって本当勘がいい。


 俺が超絶気まずそうに親娘を交互にみていると、環さんは勝ったと言わんばかりに嬉々とした様子でまた話す。


「環奈、ジムは初めてだから、

「は、はい……わかりました!誠心誠意尽くさせていただきます!」

「ふふ、可愛いね」


 俺は丁重に頭を下げた。


 相変わらず環さんは嬉しそうに俺を見つめている。

 

 うう……環さん。次ベッドで一緒になったらマジで許しませんよ。


 環奈は、俺が環さんに礼儀正しく振る舞っているのが気に入ったのか、頬を緩めて俺を満足げに見る。


 かくして俺たちは、ジムの中に入った。


 今日は月曜日ってことで、退勤したサラリーマンやOLが結構いる。そして中にはそんな退勤した女性たちに自分の身体を見せびらかしにきた連中も少々。


 つまり、いつものメンツってわけだ。

 

 スポーツウェアーに着替えた俺はスポーツドリンクを手に、しばしぼーっとして待っていると、急に人々がざわつき出した。


「おい……見てみて、マドンナ、今日は妹連れてきたみたい」

「妹もすっごい綺麗……」

「これはナンパするしかない的な?」

「よせよ!強制退会させられるぞ!」


 人たちの反応を見るに、どうやら神崎親娘が来たような。なので、俺は人々の視線の先に目をやる。


 そこには、


 露出多めのスポーツウェアーを身に纏った親娘がいた。

 

 環さんは、いつもの紫色のレギンスとハーフトップ。しかし一つ大きく違う点は、恥骨周りのラインを隠すためのパンツを履いてないところだ。

 

 とても煽情的な姿。


 真ん中には割れ目……うん。これ以上の説明は省略する。


 そして環さんの隣を歩いている環奈の姿も、とても刺激的なものだ。薄いピンク色のレギンスとハーフトップ。


 あの服装は彼女らの身体的特徴をよりよく強調してくれる。巨のつく胸、細い腰、大きいお尻、長い足。


 この神崎親娘と似たような服装をしている女性は多いが、彼女らが放つ雰囲気と色香は別格である。


 思わず、俺の海綿体が反応してしまった。


 そんな俺の気持ちなんぞどこ吹く風と、早足で歩いてくる環奈と環さん。


「なんか、周りの視線がいやらしい……」


 環奈はげんなりしながら俺を見つめてくる。


「まあ、普通に考えて環奈が魅力的だからな。それに、その格好だし……」

「わ、私が、魅力的!?」

「あ、ああ」

「っ!」


 俺が何気なく放った言葉を聞いて環奈は、急にモジモジし出す。そして上目遣いで聞いてきた。


「樹も私を魅力的だと思ったりする?」


 なっ


 そんな格好と表情で見つめられたら、ちょっと困る……


 待ってよ。


 そういえば、環奈が俺の見た目を褒めた事はあるが、逆に俺から彼女の外観を褒めたことは一度もない。


 何回も言うが、環奈はエロ漫画のメインヒロインだ。なので、男心くすぐる要素の集大成のような女の子だから、それを本人に直接伝えるという発想はなかった。


 だが、環奈は漫画の中の人じゃなく、こうやって自由意志があり、生きている女の子だ。


 だから、俺も環奈の人格と自我を尊重してあげなければならない。


「……俺が見てもすごく魅力的だよ。環奈は」


 環奈の顔を見て話たつもりだが、ちょっと背中がむずむずする感覚に見舞われた。


 別に女性の見た目を褒めることくらい造作もないこと。しかし、いざその相手が環奈となると、緊張してしまうから不思議だ。


「へへ……嬉しいな。でも、この格好はちょっと恥ずかしいから、樹と一緒の時以外はあまり着たくないかも……」

「っ!」


 照れくさそうに身を少し捩って言う環奈の反応があまりにもピュアすぎるけど、体は全然ピュアじゃないギャップに俺は身悶える。


 そこへ、いつの間にやら俺の近くにやってきた環さんがニヒッと笑って脇腹をつつく。


「やっぱり、若い子は自分の気持ちに素直にならなくちゃね〜ほれほれ♫」

「環さん……ちょっとうざい」

「なんか言った?」

「なんでもありません」

「よろしい♫」

 

 環さんは口角を吊り上げ、続ける。


「環奈は樹と一緒に行動しなさい。その方が他の男からしてみたらちょっかいかけづらいし」

「わ、わかったわ!ということで、今日はよろしく……樹」

「お、おう。なんか、鍛えたいところとかないか?」

「ん……ちょっとお腹の脂肪を落としたいけど……お母さんみたいなお腹がいい」

「わかった。最も効率いい鍛え方教えてやるからこっちきて」

「うん!」

 

 俺は環奈を人があまりいないところに連れていき、ヨガマッドを2枚とってきた。


「えっと、まず俺がお手本見せるから真似してみて」


 と、言って、俺はヨガマットの上で仰向けになり、両足と両手と頭を上げる。


「こうすれば、お腹の筋肉を結構使うから、贅肉を落とせるし、腹筋もできるよ。まあ、環奈は初めてだからとりあえずやってみて」

「わかったわ!」


 自信満々に言う環奈は早速俺の隣のヨガマッドで仰向けになって俺の真似をした。


 だが、


「うう……上がらない……」


 環奈は結構苦戦しているようだ。


 顔はすでに上気しており、全身はブルブル震えている。


「しんどいんだったら下ろしていいよ」

「ううん……私も、お母さんみたいな体になりたいから!っ!」

「おい……」

「はあん!」


 案の定、環奈は力が尽きたのか、変な呻き声を上げてから、ギブアップする。


「だから言ったろ?初めてだから無理しなくてもいいって」


 俺が子供をあやす口調で言うと、環奈は頬を膨らませて再び足を上げた。


「ふん!!はあ!!」


 秒で失敗かよ。


 俺は仕方なく、環奈の足を掴んで上げた。


「っ!!」

「ほら、手伝ってあげるから、ゆっくり上げ下げしてみて」

「……」

 

 環奈は急に俺から目を逸らして、身体をひくつかせる。俺は小首を傾げて、仰向けになっている彼女の体全体を眺めてみる。


 仰向けになっているにも関わらず、ハーフトップに包まれている巨大なマシュマロはその存在感をこれみよがしに俺にアピールしている。そして、上げられた両足の下の真ん中の部分が俺の視界に入った。


「っ!」


 いや……転生前の俺はこのような光景は飽きるほど見てきたはずなのに、どうして俺はこんなにも動揺してしまうのだろうか。


「樹」

「あ、ああ」

「どこ……見てるのよ」

「すまん!えっと……」

「樹、全然動かないから心配になったけ……ん?」


 環奈が話しながら視線を俺の顔から下半身へと移した。おそらく俺の変化に気づいたからだろう。


 環奈はふいっと顔を逸らして小声で呟く。


「樹のエッチ……」

「悪い……注意するから」


 俺は環奈から少し離れ深呼吸を数回してから心を落ち着かせた。


 冷静を取り戻した俺は、再び環奈のいるところへと行き、彼女に真面目な表情で話かける。


「真面目にやるから」


 すると、環奈は顔を背けてぼそっと言う。

 

「う、うん……お願い」


 幸いなことに拒絶はされなかった。


 気のせいかもしれないが、横顔の環奈の口の端は、ちょっとだけ吊り上がっているように見える。



(器具を使って身体を鍛えつつ、二人の様子をチラチラ観察する環)


(血涙を流して羨ましそうに樹と環奈を見つめる男女)




追記


一話でまとめるのはあかん


もっと書くん



 


 

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