18 改元令
翔太の笑いに、刹那的なものを感じ、晶子は不安を覚える。
「すると、どうなる? 新しい帝というのは、予定どおりに——」
「長男の、皇太子がそのまま即位だ。彼には、公式に四人、非公式に二十人程度の男子がいると聞く。我が甥たちということだな。姪も十人くらいは顔を知っている。その者たちと、そのさらに子供達もすでにいるが、彼らが表舞台に立つ、新たな皇室だ。我ら帝の弟たちは、排除される。
強制的な排除だ。政変を生じさせず、自然主義的に繁栄を繰り返すための優れたシステムだ」
「逃れるために、東京に避難していたのか。潜伏するつもりだった?」
「逃れられると考えてなどいない。今日までの警護の者どもが、明日からは刺客に変わる。様々に便宜を図ってくれた電子的、量子的サービス群が、追跡者となる。
伊勢では、知らなかったのか? それとも、自分たちのあり方とは異なりすぎて、現象の意味を理解できなかったのか?」
世代交代に遠なう人事の正体に目を背けていたことに気づく。
すべてに投げやりに見える翔太の態度に、晶子は今、初めて納得がいった。
どこが自然なものかと思うが、霊長類の群れの中には、同じような習性を持つものがいたことを思い出す。
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