17 ゆく年くる年

 大晦日。明治神宮は参拝客で賑わっていた。和服に着替えた翔太と晶子は、その中を並んで歩いている。

 境内の中でも紅白歌合戦の経過は空中に流れ、各地の新年を迎える様子が共有される。


 いつの間にか————除夜の鐘が、鳴り止んでいた。

 遠くの寺院から響いていた鐘の音も、都市のノイズも静まっていた。


 あらためて、重い鐘の音が響く。

「あれは————弔いの鐘?」

「無論————

 誰のために鐘はなっているのか——などと訊くなよ」

 崩御だ。公表されたらしい。翔太は笑った。

「お前の国の予測より、少なくとも一日早かったな。伊勢は、来年のことと踏んで準備を進めていたのだろう? 

 今日、十二月三十一日が出雲朝の新しい元号の元年、帝の即位日だ。その宣言の鐘だよ」

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