改元下の恋人たち ——〈自然主義者／優生工作者〉の時代

16 計画的に

　伊勢の世代交代は、混乱なく王朝を維持するために、計画的に行われている。他国の情勢も考慮されているのだが、最重要視されているのは、出雲の動向だ。自然主義を標榜する出雲において、帝の崩御の日をあらかじめ特定することは困難だが、中央病院の職員の中にも、伊勢の密偵は潜んでいる。

　伊勢の朝廷は改元時期を同期させる事を決定し、分析の結果、その時期を来年早々と内密に定めた。

　伊勢の血統は、アルゴリズムによって最適化された各々のミッションを実行し、新皇即位と同時に礼節を弁えた外交によって、出雲に対して優位に立つ準備を開始した。

　三女の行動は完璧に計画に沿っており、同時にその精神は完全に逸脱していたが、当日まで、それを知る者はいなかった。