12 想像力・欲求と文明の相関図
図:https://19084.mitemin.net/i645494/
この図では図11よりも進んで、
人間がもつ想像力と欲求が、
三つの文明活動の相互作用を生む
ところまでを描きました。
特に想像力が知性を通じて技術、
欲求が人間性を通じて政策を生み出し、
それが他の二つの文明活動に働きかけて
文明発展の
というところを示します。
ここでは単なる空想や欲望ではなく、
実利的・社会的に有用な想像力や欲求に、
結果の検証や手段の選択のための
事実認識・総合判断能力が加わって、
知性や人間性となり、
技術や政策を生む場面を重視しています。
しかし、以下の説明文では引き続き、
想像力と欲求という言葉を使います。
知性と人間性という言葉の意味には、
多義性や可変性があるからです。
第一に、知性が技術を生むというと、
何か当たり前の表現になってしまい、
実はそこには想像力が含まれるという、
大切な考えが抜け落ちる恐れがあります。
第二に、人間性が政策を生むというと、
日常的な語法からみて違和感を覚え、
人間性は何か政策的な実利を越えた、
より高いものだという反発が生じ得ます。
第三に、想像力や欲求が技術や政策に
なるための〝有用性〟の判断基準は、
地動説・進化論や人権思想のように、
文明水準などによって変わり得ます。
第四に、知性と人間性には必ず
働き合って
想像力も欲求も含んで重なり合う
部分があると思われるからです。
もちろん、空想だけでは技術にならず、
人々の社会性や共感性という意味での
人間性が政策を作るということに、
間違いはありません。
しかし以下では、内容を分かりやすく、
意味の限定や誤解を起き難くするため、
複雑な意味をもつ知性や人間性でなく、
想像力や欲求という言葉で説明します。
(1)相互作用の種類
発展の流れを
次のようになります。
①限りない想像力→自然科学的技術
→経済・社会活動の生産性増大
②限りない想像力→社会工学的技術
→制度・政策の生産性(効率性)増大
③限りない欲求→現技術下での利害調整政策
→経済・社会活動の健全性確保
④限りない欲求→新技術の開発・普及政策
→科学・技術の健全性確保
想像力が技術、欲求が政策を生み出すと、
その技術と政策がさらに玉突き式に、
他の2つの文明活動に働きかけて、
発展への動きを作り出します。
その動きはロータリーエンジンのように、
技術革新→社会変化→政策変更→技術革新……、
という文明発展の
そこでさらに想像力や欲求が無制限化します。
すなわち、想像力と欲求が文明を発展させる
→さらなる想像力と欲求の無制限化となります。
3つの文明活動と人間の2特性、
全ての間で相互作用が起きます。
(2)相互作用の順序
以上を
次のようになります。
第一に、人間の限りない想像力は、
合理的推論から自然科学的技術を
生み出します。
第二に、自然科学的技術は、
経済・社会活動を拡大させ、
複雑加速化させます。
第三に、経済・社会活動の変化は
人々の欲求を多様化させるので、
利害衝突の機会を増やします。
第四に、その変化に対応すべく、
既存技術のもとでの利害調整政策が、
経済・社会活動を健全に保ちます。
第五に、このとき科学・技術は、
完全な空想(
社会工学的技術で政策を助けます。
第六に、他方で制度・政策は、
人々の限りない生活向上の欲求を受けて、
既存技術向上も含む技術的政策が、
新技術の開発・普及を促します。
こうして、文明発展の
ところで、以上のような
技術と政策の各二分類は、
図5~8で述べた技術と政策の
左右対称的な各四分類
(詳しく言えば各七分類)と、
どう関係するのでしょうか?
元々四・七分類も理論的なものであり、
現実的には重複があります。
そこで社会工学的技術と他の技術、
技術的政策と他の政策という二分類も、
分類のいくつかをまとめただけで、
同じ分類体系といえると考えます。
(3)知性と人間性の連続性
技術と政策を生み出すのは、
知性と人間性ですが、
意味が多義的、可変的なので、
以上の説明文では使いませんでした。
特に、初めに述べたように、
両者の間には連続性のようなものが
あるのではないかと思います。
まず、知性の側から見ると、
知性には人間性を含む部分があります。
私は脳科学者ではありませんが、
両者は
広い意味では両者は同義であって
限りない想像力と欲求を含み、
使い分ける時も、どちらを重視するかの
違いにすぎないのではとさえ思います。
もちろん人工知能(知性)のように、
生存のための欲求を持たない
知性というのも現れつつありますが、
そこでも類似の部分は存在します。
高度な認識を可能とする知性と、
複雑な行動を生み出す人間性は、
そこでは高度な認識は複雑な活動を導き、
自己改良型の
活動の複雑化は必然的に、より高度な
認識を求めるはずだからです。
また、人間性というのも
多義的な言葉です。
狭い意味での人間性とは、
欲求の多様性の中でも特に、
社会的に好ましい部分をさしますが、
そうでない言葉の使い方もあります。
例えばルネサンスは、
厳格な中世キリスト教文化に対する、
古代のギリシャ・ローマ文化的な、
人間性回復の学芸(学問・文化)思潮です。
しかしその〝人間性〟の中には、
芸術表現の自由化だけでなく、
道義だけでは君主になれぬと説く
『君主論』も含まれています。
また、同じくルネサンスを担った
レオナルド・ダ・ヴィンチは、
芸術作品だけではなく、
科学・技術上の業績も残しています。
そこでは豊かな想像力や科学的思考、
多様な欲求や価値観を全て含めて、
人間性と言っているのではないか
と思います。
しかし、二組の関係がどうであれ、
〝知性と人間性〟あるいは
〝限りない想像力と欲求〟は、
人間がもつ二大特性です。
そしてそれらの二大特性が、
文明の両輪である技術と政策を生み、
文明を発展させる一方で、
文明発展がさらに二大特性を拡大し、
次なる発展の可能性をもたらす、
ということが言えると思います。
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