11 想像力・欲求説明図

図:https://19084.mitemin.net/i645492/


人類は文明により、栄えました。

では、人間のどんな性質が、

文明をもたらしたのでしょうか?


人類に文明を与えた二大特質は、

知性と人間性であり、

その基礎にあるのは、

限りない想像力と欲求だと思います。


この図では想像力と欲求が、

技術、政策、社会活動という

3種の文明活動に対して個別的に、

どう影響するかを示しました。



(1)知性と想像力、人間性と欲求


まず、文明を発展させるのは、

『こうすれば、こうできる』という

技術などの因果法則を発見・活用できる

〝知性〟です。


そうした知性の基礎になるのは、

『この事実とこの事実の間には、

こんな関係があるのでは?』と思う、

無制限的な〝想像力〟です。


また、発展を持続させるのは、

『技術による文明活動を健全に保つ』

政策を立案・実施できる、

良い意味での〝人間性〟です。


そうした人間性の前提となるのは、

良くも悪くも色々な利益を求め、

人間社会の可能性と危険性を広げる、

無制限的な〝欲求〟だと思います。


この図では文明の発展に役立つ

知性や人間性の基礎にある、

なまの想像力や欲求が、

文明活動に与える作用を示します。



(2)想像力について


ここでいう想像力とは、

広い意味でのものであり、

合理的な推論から完全な空想まで含む

抽象的な思考能力です。


第一に、想像力は科学・技術の基礎です。

合理的推論は、科学・技術の目的である、

〝ああいう時はああなる〟

〝こうすればこうできる〟という

法則や技術の発見を可能にします。


しかし、推論と空想の境界は連続的です。

様々な仮説は、実証されれば事実、

誤りと分かれば実は空想だった、

ということになります。


生命の起源、燃焼の原理、原子の構造など、

科学理論の歴史はそのことを示しています。

波動関数や超弦(超ひも)仮説となると、

『事実は小説より奇なり』とさえ感じます。


第二に、想像力は文明活動の本体、

経済・社会活動の源泉でもあります。


自分以外の人はどう思うかとか、

こんな製品があればという想像力が、

それを尊重しよう!とか、作りたい!

という欲求とあいまって、

社会活動を可能にし、発展させます。


また経済・社会活動は、

実利活動に加えて文化活動も含みます。

人間の多様な想像力と欲求は、

そのような文化活動の必然性と

有益性も説明します。


蛇足だそくながら私も、

夢のある『古代の宇宙人』説や、

様々な文化的創作に刺激を受けて、

『神や悪魔は異星人だった!』という

素人SF小説を書く中で、

この文明論を考えることができました。


第三として、意外なことに想像力は、

完全な虚構フィクションであっても、

制度・政策の実現に役立つ

社会工学的技術の基礎になります。


権利・義務や法人格・役職

といった法律概念や、

一定規格の紙片・金属片・電子情報に

与えられる貨幣価値が、それです。


私はこのことを、岸田秀先生や

Y.N.ハラリ先生の本で知りました。

両先生は宗教や政治思想イデオロギー

その中に含めています。



(2)欲求について


次に欲求とは、物理的には

脳内の化学反応による

電位変化などと説明される、

知的な生命活動の動因です。


人間の欲求もまた、

想像力と同様に無制限的です。

翼もないのに空を飛ぼうとしたり、

多様な文化を生み出したりします。

戦争などで大量殺戮を行う一方、

社会を改善する崇高な理念も考えます。


そうした欲求の無制限化は、

技術が生んだ文明生活に

適応する過程で起きたか、

促されたと思います。


技術によって複雑化する文明活動は、

遺伝的・本能的な欲求だけでは営めず、

他方でより様々な欲求の充足を

可能としてゆくからです。


無制限的な欲求は第一に、

制度・政策を求めさせます。


人々の様々な欲求は

利害の衝突を増やすので、

社会的な意思決定の必要が

生じるからです。


ただ興味深いことに、

近代国家の統治政策においては、

自由主義が最高の価値とされ、

民主主義もその手段といわれます。


この、国家は決めるのが仕事だが、

無用の規制などは防ぎたいという

発想もまた、人間が持つ欲求の

無制限性を表していると思います。


また、国際的な総合政策SDGsが、

単なる〝持続〟ではなく、持続可能な

〝開発(発展)〟を目指すのも、

欲求の無制限性に応じたものでしょう。


第二に、先述のように人間の欲求は、

尽きせぬ想像力とあいまって、

文化活動を含む経済・社会活動の

原動力となります。


たとえば、ある製品が人気を得ると、

人々はさらなる性能や意匠デザインの向上を求め、

企業もそれに応えて新製品を作れば、

もっと社会は豊かで快適になります。


第三に、〝必要は発明の母〟

という言葉があるように、

人々の欲求は科学研究や

技術開発の推進力にもなります。


特に、現代の研究・開発事業は

大規模なものが多いので、

企業戦略なども含めた、

政策による支援が不可欠です。


もちろん科学的な発見は、

偶然によることも多いです。

しかし技術としての開発や普及には、

社会需要が必要ですし、

発見と活用の可能性を高めるのも、

好奇心や知識欲といえます。


技術革新による文明発展を

止めることは難しいので、

健全な発展のための政策による

適切な支援や規制が必要だ、

という一般的な考えも、

欲求の無制限性から説明できます。

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