第4話 王子さんへの質問コーナー!
「あれ、どうしました殿下、ずいぶん早いですね」
私たちが外に出ると、間葉王子はすぐに自分が乗ってきた車の運転手を探し出した。
「いやぁ、実はのっぴきならない事情が起こってね。悪いけど、
もう一働きしてもらうよ」
王子は今までの出来事を、桜田さんという名前らしい運転手に詳しく話した。さすがに王家側の桜田さんには、玉璽を見せるだけで事情が伝わるというわけにはいかないらしい。もちろん途中で見せはしたが。
桜田さんは興味深そうに王子の話を聞いていた。どうやら桜田さんもこの事情は知らなかったらしい。いったい、私が元は王家の人間であるということは、どこまでの人に知られているのだろうか。もしかすると一家の重大機密なのかもしれない。
「まあ、とりあえずの事情は了解できましたから、皆さんは車にお乗りください」
私と中野は後部座席に座る。やはり高級車なのだろう、かなり座り心地は良い。
「ところでだ」
車が出発するなり、王子は助手席から振り向いて話しかけてきた。
「僕たちは兄妹になったわけだ」
「ん? ああ、そういえばそうでしたね」
もう少しカジュアルに接してほしいのだろうか。しかし、一応向こうは年上なわけだし……。
「了解です兄上! 呼び方はカジュアルに改めます! ……でも敬語は続けますよ?」
「あー、もうちょい崩してもいいぞ。『間葉〜、今日の夕飯何〜?』くらいでいい」
「……えーと、敬語はなしでいいことはわかったけど、王族の食事なんて想像もできなさそうだからその質問をするのはやめとく。つーかなかなか庶民的だね間葉」
「超無抵抗でカジュアルになったなこいつ……まああれだ、普通に養子にもらわれただけだと考えてくれればいい。僕たちはたまたま国を治めるという家業を生まれつきに義務付けられているだけだからな、あんまり気負わずにやってくれ」
タメ口になると、急に間葉が身近に感じられてきた。よくある小説なら、ここで『兄上』と呼ぶのを渋って間葉を焦らすところだけど、一気に言ってしまえば速攻で赤面するかと思ってやってみたーーが、どうやら想像の上だった。
「といっても、お姉さんーー
「うん、そのイメージは確かにあるかもしれないな。でも陽子は僕たちを代表しているだけだからな。政治は王族のみんなと、それから議会の人たちと一緒にやってるよ。ていうか、議会は一般に公開されているはずなんだけどな……テレビとか動画配信とかでやってるよ。あんまり見ないの?」
「実はあんまりなんです」
「もしかしてめっちゃ頭悪い?」
「何ですかその超絶ストレートな質問……頭はいいですよ。この前の社会のテストは57点でしたし」
「悪いじゃん」
「どこがですか! これでも前回から16点上がったんですよ!」
「前回もう少しで赤点じゃねぇか。雑魚やん。とりあえずまともになるように教育しないとな」
「ひえええ! なんか今の言動からして、怖そうな家庭教師にスパルタにやられる未来しか思い浮かばないっ!」
「大体正解だ」
「ふぎゃぁぁぁ!」
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