第七話 再確認
高い塀に囲まれた部長の家へ行きました。
純和風の平屋です。
玄関の前に着くときっちりした性格の部長にしては珍しく玄関扉が少し開いていました。
木製の引戸です。
人が半身になって通るくらいの幅は開いていました。
声を掛けながら玄関に入って中を覗くと、廊下から入る月明かりに照らされて部長の指らしきものが見えました。急いで駆けつけると部長が倒れていて、何分か立ち尽くしたことを覚えています。
ようやく正気に戻って通報しました。
◇◇◇
「なるほど、帰れ。信用できない依頼人は依頼人にあらず」
元探偵は分かりやすくイラついている。
「でもそれは……」
「おおかたその家で彼女の痕跡を見つけ、証拠の一つでも持ち去ったのだろう」
俺は眉一つ動かせなくなった。
「矛盾男は彼女が犯人だと確信している。そして話を聞く限り十中八九事件現場でその結論を得た」
「……なんで」
「考えるまでもない。そして婚約者とは別れた方がお互いのためだ」
「それは占い師としてですか、それとも」
「もちろん後者だ」
俺は何も言い返す言葉を持たない。
あの家へ続く道で彼女とすれ違い、玄関で彼女の香水を嗅ぎ、廊下で彼女のイヤリングを拾った。
全てが彼女に繋がる。
彼女は犯人だから別れろというのだろうか。あまりに酷ではないか。
「それとこれは占い師としてのオレが言う。彼女は犯人ではない」
それだけいうと、不審者に使う棒であるさすまたで俺を外に押し出した。
厚い扉が閉められると重めの施錠する音が響く。
頭の中でさっきの言葉を反芻しながら階段を昇る。一段ごとに足取りが軽くしっかりと地面を掴む感覚がある。
「そうだよ俺の知ってる彼女を信じよう」
そして地上に出た時、靴がないことに気付いた。
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