第4話 緊急会議
帝王の号令の元、王室に部下、メイド長、執事、召喚呪術者が集められ、席に着いていた。
「みんな忙しい中よく集まってくれたのぅ。 今日集まってもらった理由はわかっていると思うのじゃが……」
帝王は顔の前で手を組み、俯きながら切り出した。
「召喚の件……でございますね? 陛下」
メイド長はメガネを拭きながら食い気味に訊ねた。普段は温和なメイド長が眉間にシワを寄せ、その声は苛立ちを隠せないでいた。
その声に慌てた様子で召喚術者が立ち上がった。ビビったのだ。
「陛下! 私どもの召喚術は完璧でありました! 術式の手違い等は一歳御座いません! あ、いでててて……」
老いた召喚術者は無実を訴える。腰が痛いようなアピールをしてか弱さを演出しているのだ。
「わしは異世界召喚術が失敗したなんか思ってないから安心するのじゃ……確かに召喚はされておるからのぅ」
召喚術者は何世代にもわたり帝王の城に尽くしてくれた家系であった。疑いなどは微塵もなかった。
「しかしながら陛下。 あの者たちの召喚は果たして成功と言えるのでしょうか?」
メガネを拭き終わったメイド長が少し威圧的に帝王に訊ねる。
その威圧に部下は言葉を失い、俯いてしまう。メイド長のブチギレていた姿を先日見たことにより、ビビっているのだ。帝王に至っては少しちびっていた。
「これこれ……会議の空気を悪くするのではない。 そやつがちびりそうになっているだはないか」
執事がメイド長に釘を刺した。この二人は昔から仲が非常に悪かった。どちらの方が料理が上手いか、どちらの方が胸が大きいかなど、常日頃競っている。
「あん? なんか言いましたか?」
2人は睨み合ってしまう。威圧的なメイド長に部下もちびっていた。
「みんな苛立ってしまうのはおそらくわしが誤った情報で召喚を実行させたからじゃ。 本当に申し訳ないことをしたのぅ」
帝王は席から立ち上がり頭を下げる。その帝王の行動に皆驚き、さすがのメイド長も慌ててしまう。
「陛下どうか頭をあげてください」
メイド長は帝王に寄り添った。ビビって俯いていた部下も顔を上げた。みんなの顔を見ながら帝王は決断した。
「これからは誤った召喚が行われた場合、こやつに全ての責任をとってもらうこととする!」
帝王は部下を席から立たせた。
「……へ、陛下!?」
部下は指名されたことで呆気に取られる。
「つまり……また間違いがあるようであればこの方のクビを飛ばしても良いと言うことですね陛下?」
メイド長がすんなりと怖いことを言った。メガネに光が反射しより怖い雰囲気を出している。
「うむ……その通りじゃ!」
帝王は即答した。
「陛下!?」
部下は狼狽える。
「たしかにこの者の命令通りに私どもは召喚を実行してますからな。 意義なしで御座います、いでてて」
召喚術者は納得して受け入れた。責任を負いたくないのだ。
「これこれ……これまでの失態を挽回するチャンスを陛下がくれたのだ。 よかったではないか」
執事も賛成した。
「ようし、異議のある者はいないため、これにてこの会議は閉会とするのじゃ!」
帝王は納得のいく会議となり満足したのだった。
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