第13話 敏腕弁護士のウラの顔

また、例の喫茶店の事務所に戻りました。藤井代表はニコニコしながら私を見て、「どう、面白い人だったでしょう。それにとても優しくしてくれたでしょ」ときいてきました。

「まぁ、優しくはありましたね。でも仕事の自慢話が長くて、ちょっとうんざりしました」と、私は正直な感想を述べた。

「うん、うん。この仕事は接客業だから、そういうイヤな目に遭うこともこともあるよね。だけど、まさみさんみたいな大人の女性なら、簡単に乗り越えられる障害だと思うんだよね」と、また人懐っこい笑顔で説得されました。

「それで、そんな大人の女性のまさみさんに今日最後のお仕事をお願いしたいんだ。やっぱりボクの友だちで、ちょっとクセのあるヤツなんだけど、優しいし、弁護士だから自分からトラブルになるようなことは絶対にしないし、信用できる人だから、ぜひまさみさんにお願いしたいんだよ」

 私は、今のところ何も仕事をしていない気分だった。確かに精神的には深いダメージを負っている気がする。だけど、肉体的には何か物足りないものを感じていました。

「紳士的な方なんですか。それなら行って来ます」

 私がそう答えると、藤井代表はうれしそうな顔をした。しかし、

「でも、優しいのは間違いないんだけど、紳士的っていうのはちょっと違うんだよ。うまく説明できないんだけど…。まぁ、会ってみれば分かるよ」

 何か奥歯に物の挟まったような言い方をする。私はちょっと引っかかったけど、ここまで来たら「どうとでもなれ」だ。少しでもお金を多く稼いで帰ろうと考えました。

 

 そして髪の毛とメイクを直して、指定されたホテルに向かいました。そこで待っていたのは、弁護士の人。かっちりとしたスリピースを着こなし、黒ぶちの眼鏡の奥で、知性的な眼差しがキラリと光って見える感じ。一見して「優秀なんだろうな」と信頼できるタイプの男性でした。

「まさみです。今日は呼んでいただきありがとうございます。それではシャワーを浴びますか、それともソファでちょっとおしゃべりしますか」とお決まりの挨拶をすると、「そうだね、ちょっと汗をかいちゃったから、まずはシャワーを浴びたいな」と弁護士さん。

 それではと、弁護士さんのかっちり着こなしているスリーピースを脱ぐ手伝いをしました。ジャケットを脱がして、ベストを脱がそうとしたら、ワイシャツの下から赤い何かが透けて見えた。

「これは何だろう」と不思議に思いました。思いながら、肌触りがとてもいいワイシャツを脱がせると、私は思わず「えっ」と声を漏らしてしまうような”物”を発見したのです。

 なんと弁護士さんはワイシャツの下に深紅の高級ブラジャーをしていたのです。

 弁護士さんは、ブラジャーを見られても何とも思わないようです。あっけにとられている私にかまわず、スラックスも脱ぎました。すると弁護士さんの股間はブラジャーとセットの深紅のTバックパンティが、覆っていたのです。

 さらに弁護士さんは金髪のウイッグを被り、眼鏡を外して深い緑色のヒスイのようなイメージのカラーコンタクトをして、赤いルージュで口に紅をさして完成したようです。

 私を見て「私はルイです。よろしくね」と裏声で女性っぽく挨拶してくれました。

「紳士的っていうのはちょっと違うけど」と藤井代表が言いにくそうにしてたのは、コレのことだったのかと、私はやっと気が付いたのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る