第2話 主婦は家族の奴隷なの?

 URLをクリックしてみると、夫と知らない20代くらいの女の人が、半裸姿でベッドの中で抱き合っている画像が出てきました。夫の顔はちゃんと映っているけれど、女性は口元しか映っていません。

 なぜこんな画像を私に送りつけてくるのか? 私には夫の浮気相手の私に対する挑発的な意思を感じました。夫を私から本気で奪う気か。それとも何かの恨みで、他人の家族を不幸に陥れたいだけなのか。分からないけど、挑発してきた相手に対してとにかく下手に動くと、相手の策にハマりそうだと感じました。

 それで私はできるだけ、いつもと変わらない生活を送り続けることにしました。それでも心の中は不安でいっぱいです。しかも今まで通り家事をこなすのが苦痛で仕方がないのです。

 私は自分で言うのもヘンなんですが、私なりに精一杯家族に尽くしてきたんです。例えば、夫は洗濯糊が効いたパジャマで寝るのが好きなんです。夫の母がマメな人で、小さい頃からそうしてもらっていたそうで、私にもそうしてくれというのです。

 私は結婚してすぐ、勤めていた会社を辞め、すぐにいわゆる専業主婦の立場になりました。夫は大手の不動産会社の営業マンで収入がそこそこ高く、それに甘えていたのと、最初の頃、私は夫をとても愛していたので、夫のために尽くすのはそれほど苦にならないと思っていました。でも、夫の私に対する要求はエスカレートする一方でした。

 こんなこともありました。私が妊娠した時、ツワリが酷くて苦しんでいたのですけど、夫が「コロッケが食べたい」と言ったんです。夫は私の手作りのコロッケが大好きで、たまに食べたいと言うのです。ところが私はその時妊娠中で、匂いにとても敏感になっていて、コロッケを油で揚げるときの、むせかえるような油の匂いに耐えられなかったんです。それで、近所で人気のお肉屋さんのコロッケで済ませることにしたんですが、その時の夫ときたら、私の体調のことなど気にもしないで、

「専業主婦なんだから、料理くらいちゃんと作れ、今日一日何をしていたんだ」と、怒鳴ったんです。

 私はその時以来、自分は夫の妻ではなく、家政婦扱い、下手すると奴隷扱いされていることに気づきました。

 夫は生活費としてひと月に30万円家に入れてくれます。家のローンは別に夫が支払ってくれているので、30万円はおもに食費や水道光熱費、通信費、子供の塾代などで消えていきます。人それぞれ、お金に対する感覚は違うので、「30万円もあれば、家族4人なら余裕じゃない」とか、「30万円じゃ、かなりキツいわね」とか、いろいろご意見はあろうかと思います。私は正直、30万円ではキツいし、やりくりが大変です。だって上の子と下の子の塾代だけで、月10万円かかるのですから。夫はあれ食べたい、これ食べたいと、好き勝手に注文してくるし、それに応えないと機嫌が悪くなるし。私はできるだけ生活費を切り詰めているので、よそのお母さんたちに比べて、服や小物がとてもみすぼらしく、みじめな気持ちで暮らしていました。

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