限界オタク系のメイド
「ミミ、こんなところで何してるの」
「た、たまたまこの近くを通っただけですよぉ……扉に耳当てて盗み聞きなんてしておりません」
ミミと呼ばれたメイド服を着た女性はリリアの質問に対し、思いっきり目を泳がせながら返答している。
というかさっきの返答は墓穴掘ってるのでは?
「そっかぁ、偶然かぁ。それなら仕方ないね~」
リリアは笑顔でミミさんにそう言うが、目が全然笑っていない。
絶対めちゃくちゃ怒ってる。
「それじゃあ、実家にいるクソおやじにメイドの交換をお願いして」
「ああ、お嬢さまそれだけはご勘弁を!!私の生きがいはこの小さな別荘でお嬢さまの幸せを見守ることだけなのです。どうかそれだけはご勘弁を!!」
ミミさんはリリアの言葉を聞くと、すごい勢いで土下座をした。
そんな彼女の様子をみたリリアは小さくため息をつく。
「冗談だよ、僕の専属メイドはミミ以外ありえない」
「お嬢さま……私は今ものすごく感動しております。あのお嬢さまがこうもストレートに感情をぶつけてくれるなんて……今日は記念日ですね」
目からうれし涙を流しながらそんなことを言うミミさん。
ミミさんの行動になんか既視感を感じると思っていたがこれはあれだ、推しの前で限界化してるオタクの動きにそっくりだ。
「まったくもう……急に大声出すなんて何考えてるのさ」
「だってぇ……お嬢さまはこういう日が訪れたときのために色々準備していたのに、いざ本番になったらひよってるんですもの。見ていてじれったいです」
ミミさんはそう言ってリリアを応援するポーズをとる。
二人のやり取りを見ているとなんだか微笑ましくて、普段から仲がいいんだろうなという事を感じさせる。
それにしても……メイド、お嬢さま、別荘
「もしかしてリリアって……良いところの家の娘さんなの?」
「え……お嬢さまから聞いていないのですか?彼女のお父様の事や『英雄円卓』のこと」
「あーっそうだよ『英雄円卓』。ずっとどういうものなのか気になってたんだよ」
裏路地にいたあの男がリリアを見て放った台詞の中にあった言葉だ。
あの時は戦闘中だったのでゆっくり気にしている場合ではなかったが、今思えばとても重要なキーワードだった気がする。
「あ、ああ……色々あってまだ説明できていなかったね」
リリアは少し顔を下に向けて口ごもる。
そう言えば、裏路地の時も『英雄円卓』の話が出たときも、口調が歯切れ悪くなってたな
……もしかしたら、あんまり触れてほしくない事だったりするのかな。
「もし、言いにくいことなら俺はー」
「いや……言うよ。ミミの言う通り……僕はケイのような人が現れる奇跡を夢見てきたんだ。ちゃんと私の家族と『英雄円卓』のことも君に話さないとね」
俺の言葉を遮るようにしてリリアは顔を上げてこちらを見つめてくる。
その瞳から強い意志のようなものを感じたのだった。
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