裏路地で (前半)
「さあ行くよ!」
剣に変形した彼女は裏路地の方向まで飛んで行った。
「お、おい待て!」
俺は急いで飛んで行った彼女のあとを追った。
裏路地に入り込むと剣を腰に差した大柄な男が小さな女の子の手を縄で縛り、その縄を手綱のように握っている様子が見えた。
「誰か……助けて……」
「誰も助けになんか来ねぇよ、いいからさっさとこっちに来い!」
男は女の子ににらみを利かせながらそう言うと、持っていた縄を強く引っ張った。
「こんな街中で誘拐なんて、随分と大胆な犯行だね」
リリアはそう言いながら剣になったその体で男が持っていた縄を切り裂いた。
突然縄を斬られた反動で倒れそうになる少女を後ろから駆け付けた俺が抱きかかえ、後ろ向きにジャンプして大柄な男と距離を取った。
「誰だぁ、お前ら!!」
男はそう言うと剣を鞘から抜き、俺の居る方へ振り落とす。
剣に変形したリリアがその斬撃を受け止めようと刀身を合わすのだが……
「やっぱり使用者が居ないと……うわっ」
彼女は軽々と吹き飛ばされ、元の姿に戻りながら地面に叩きつけられた。
「リリア、大丈夫か!」
「平気だよ、いつもの事さ」
そう言って立ち上がるリリアを見て剣を構えた男は鼻でわらう。
「おいおい誰かと思えばリリアじゃないか、ビビらせるなよ」
「え?なに知り合いなの?」
「いやぁ……知り合いってわけじゃぁないんだけどね……」
歯切れの悪いリリアの言葉を遮るように男は言葉を放つ。
「そこの坊主は始めて見る顔だが……この様子を見るにお前もその女の新しい被害者ってところだなぁ。どーせその女の素性も教えてもらってねーんだろ」
「お前何言って、大体俺はリリアと出会ったばかりでー」
俺がそう言い切るまでに男はリリアを睨み詰めていやらしい口調で叫んだ。
「なぁそうなんだろ!この世界を守る『英雄円卓』唯一の落ちこぼれ!!」
男はリリアをバカにするように高笑いをしながらこちらを見つめる。
そんな男を無視して、リリアはそっと俺に近づいて耳打ちをする。
「ケイ……きっと今の君は色々と知らない情報といきなりの戦闘で混乱していると思う」
「うん、『英雄円卓』とか何なのって感じだし、正直足が震えてるし」
「でも今はひとまず僕を信頼して言うとおりにしてほしい、そうすれば僕たちこの子も助かる」
リリアはそう言って俺が抱きかかえている少女の頭をやさしくなで始める。
そうしている間にも、男は剣を振りかざしながらこちらに走ってきている。
「お前らもそのガキと一緒に奴隷として売り飛ばしてやるよ!」
「せっかく異世界に来てまで奴隷になんかなってたまるかよぉ!リリア、俺は何すればいい?」
「強くイメージして。あの男を倒すにはどんな武器を使ってどんな動きをすればいいのかを!」
リリアにそう言われて俺がとっさにイメージしたのは日本刀を使って素早い居合切りを撃ちこむ風景だった。
俺がイメージしたその風景を【シンクロ】の能力で見たリリアはすぐさま【武器化】の能力で日本刀に変化した。
「いいね、それじゃあ反撃開始だ」
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