能力【武器化】

 リリアが最初に俺を連れてきたのは服を売っている店だった。

 彼女が選んでくれた服を身に纏い、俺は店をでる。


 「うんうん、似合ってる」


 リリアはそう言いながら俺のことを見つめる。

 俺は店の鏡でみた自分の姿を思いだしながらしみじみと感動していた。


 首に巻いたローブがいい味を出している。

 腰には本をしまうホルスターのようなものが付いているベルトを巻いていて、そこには元の世界でよく読んでいた愛読書の『読んだだけで幸福になれる本』を収納している。


 「本当にありがとう、この服動きやすいしカッコイイよ」

 「いいんだよ、これからケイには僕の相棒としてたくさん働いてもらうんだから」

 「過労死するほど酷使するのはやめてくれよ」


 リリアとそんな言い合いをしながら俺達は町を歩く。

 段々リリアとも打ち解けてきて、俺はリリアになっていろんな質問をしている最中だ。


 「そう言えばさ、リリアにも俺の【シンクロ】みたいな能力ってあるの?」

 「うん、あるよ。僕の能力は【武器化】と言ってーー」


 彼女はそこまで言うと、突然黙り込んで道の端にある見えにくい裏路地を見つめだした。

 

 「どうしたんだよ急に」

 「ケイ……よく注意してあの裏路地を見て」


 リリアにそう言われて俺はよく目を凝らしてその裏路地を見る。

 そこには小さな女の子が大柄な男に手を縛られている様子が見えた。


 「あれってもしかして誘拐?!」

 「ここら辺に認識を阻害する結界が張られてるね……道理で誰も気づけないわけだ」


 リリアはそう言うと一気に険しい顔色になる。

 

 「僕のいる町でこんな犯罪なんて許さない」

 「どうする、速くギルドとかに連絡したほうがいいんじゃないか」

 「いや、それじゃあ遅い。今すぐに彼女を助けないと」


 リリアがそう言った直後、彼女の身体が黄色い光に包まれる。

 彼女の前には一つの鏡が出現し、彼女の姿を映す


 

 「僕が先に行ってあの子の縄を斬るからケイは急いで僕に付いてきて!」


 そして、鏡に映っている彼女の姿は、段々とファンタジーなんかでよく見る洋風の剣の姿に変化していく。


 「戦術斬撃!」


 彼女はそう叫びながら目の前の鏡に回し蹴りを当てる。

 すると鏡はリリアの足が直撃した所からぐにゃりと曲がり、やがて彼女を包みこんで発光した。


 次の瞬間には、リリアの身体は鏡に映っていたのと同じ洋風の剣に変化し、空中を浮いていた。

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