能力【シンクロ】
「手を握ってくれたってことは承諾してくれたってことでいいんだよね」
「ああ、これからよろしく」
俺がそう言うと、リリアはニッコリと笑ってこちらを見つめ強く手を握り返してくれた。
俺はつい気を緩めてその顔を眺めてしまう。
すると、握っている俺と彼女の手の甲が突然赤く光った。
「え?な、なに?なにこれ?」
俺がそう言って困惑していると、お互いの手の甲には赤い線で出来た五芒星のマークが出来ていた。
「ああ、それは僕がケイと契約した証だね」
「契約……一体何の?」
「もちろん、ケイの持つ能力についての契約だよ。これ見て」
リリアはそう言って、俺の情報が書かれた紙の能力について書かれている所を指さし、読み始めた。
「能力名【シンクロ】、契約した人間と脳内イメージの共有が出来る。契約方法は互いに心を許した人間が強く手を握ること」
「え……契約方法なんて今知ったんだけど」
どうしてそんな大事なことを転生したときに誰も教えてくれなかったんだよ!
いや……そう言えば、あの石造りの部屋にいた人たち誰も俺と契約しようとしてなかったから知る機会もなかったし……教える必要もないって思われてたのかも。
俺がそんなネガティブなことを考えているとリリアは目をキラキラと輝かせながら俺の肩を揺さぶる。
「ねぇ、せっかくだから何かイメージしてみてよ」
「ウーム、何かって言われると何をイメージしようか迷うな」
「それならさ、ケイが一番強くてカッコイイと思う武器を想像してみてよ!」
リリアはそう言いながらぐいぐいと俺に迫ってくる。
一番強くてカッコイイと思う武器か……
俺は昔見た漫画で主人公が使っていた長さ30m、太さ7mの巨大な剣のことを思い浮かべる。
主人公がその剣を使って町一つを叩き切る豪快なシーンがあって、少年時代の俺の心はそのロマンあふれる攻撃に魅了されていたことを思い出す。
俺がそんな思い出のシーンを思い浮かべていると、二人の手の甲にある五芒星が赤く光りはじめリリアは賞賛の声を上げていた。
「すごい……こんなに鮮明なイメージが頭の中に送られてくるなんて」
「マジで、そんなに凄い力なのかこれ」
リリアの表情や声色から自分の能力が特別なものであることを初めて認識した。
まぁ戦闘で使えるかどうかは微妙なところではある気がするけども……それでも特別な能力を手にいれたという事実だけですごく嬉しかった。
「流石にこんなに大きな武器になるのは骨が折れるけど、ケイの能力を使えば僕の【武器化】は最強になれる……そうすればきっと僕だって役目を果たせるはず」
俺が一人舞い上がっていると、リリアは小さな声で何か独り言をつぶやいていた。
その顔は新しいおもちゃを貰って喜んでいる子供の様にも見えるし、何か重大なことを抱えている深刻な顔にも見えた。
「ん?どうかしたのか」
「ううん、なんでもないよ」
彼女はそう言うと、席を立って再び俺の手を握る。
「さっきいいもの見せてもらったから、お礼に今度は僕がケイにいいもの買ってあげよう!」
「ちょ、ちょっと引っ張るな引っ張るな!」
「善は急げって言うでしょ、ほら行こう」
少しテンションが上がっている彼女に連れられて俺は町に繰り出した。
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