第10話 武道館

災い転じて福となすとはよく言ったものだ。

現場での友和を唱えた私は、オタクがさらに増えた。


高速ファンタージュのワンマンライブが決まり

グループで圧倒的1番人気になった頃に

私は、コンビニのバイトをやめた。

やっと本物のアイドルになれた気がした。


それでも気を緩めずバイトをしていたはずの時間は

路上でビラ配り&チケット手売りに当てた。

残チェキ数を10以上捕まえれば

1日バイトするより多く稼げるからだ。



前は心が折れた路上のビラ配りも楽勝になった。

ビラ配り≒数字狩りだ。

この時は残チェキ0の天使は無視して

頭上の数字を探せばいい。

2桁の数字を見かけたときは猛ダッシュだ。


今度ワンマンがあるんで絶対に来てください

今なら手売りのチケットが500円なんです。



数字という未来が見えている私には

余裕のキャッチセールスだった。

高ファンメンバーからワズカさんて

本当に人を見る目がありますよねーと言われる。


そう。わたしには、オタクをみる眼があるのだ。


ただ100発100中ではあまりに不自然なので

休憩がてら天使にも声をかけていた。

簡単な狩りだからこそ単純に機会の数が重要になった。


私はなるべく人が多くかつオタクが多い場所を狩場にした。


第一候補地は秋葉原。

ただオタク自体は多いがアニメ、ゲームとはジャンルが

ドルオタとかぶっていそうでかぶっていない場合が多い。


ドルオタを見つけても既に主現場があり

なかなか新規ファンになろうとはしない。

オタクもそれなりに現場での立場や

絆ができると、ゼロからスタートはダルいのだ。



DDとよばれるフリーの客は1桁ばっか。

この前の1桁は延々と自分の推しの良さを話してきた。

推しは○○はっぴーずのゆずというらしいが、知らない。


ただ、どこかでタイバンがあるのだろう

その時まで残チェキ数がなくならないように

ツイッターのフォローだけは頼んだ。


私はオタクを天使と1桁、2桁以上でわけて覚えた。

いわゆる認知は2桁以上からだと思って貰いたい。

残チェキ数2とか3にボクのこと覚えてると聞かれても

覚えてるはずがない、シンプル脳内メモリー不足だ。


アイドルに自分を覚えてほしいオタクは

自分を覚えないと損だと認識させるしかないのだ。


第二候補地が渋谷、既にオタクの街だ。

ハチ公口をでれば地下アイドル、メン地下が

常にチラシをくばって新規客を探していた。


それ以外にも一見関係なさそうな

社会人に偽装したオタクや若者もノリで

当日ふらっとライブに来てくれたりする。



それとメンズ地下アイドルがお互いのノルマ消費のため

チケを交換招待したり、

営業としてオタクのフリを現場にくる。

ただこれは、女側がハマることが多い。

やつらメン地下はアイドルとしてでななく

オンナとしてみてるきがする(ド偏見)

あるいみ共食いの狩場だ。


この調子でどんどんオタクが増えて

私がメジャーアイドルになって

武道館ライブをやったら

いったいどんな光景になるのだろうか


きっと数字の海なんだろうな。


その時は残チェキ数1000オーバーの

石油王オタクが最前に居たりするのだろうか。


いやいやその頃にはチェキ物販なんかしていないよな。

数万人×1分なんて時間とれる訳がない。

グッズに生写真、私が直接介在しなくても

オタクは喜んでお金を出すようになっているハズ。


今より高い単価のタオルやTシャツには

サインすら入っていない。

豆粒ほどの私しか見れないチケットも売り切れ。

仮にチェキ会をするとしても1枚1万とか?

それでも人気のため抽選。

武道館は天使だらけだろう。


武道館でも最前をとる必死系が

1桁の数字で3や4とかになるのだろうか。

そんななかにぱたとかが

目減りした数十くらいでいたりするのかな。



ただ、ぱたの残チェキ数が

まだ3桁あるということは、


武道館はほど遠い未来のようだ。


よかったな、ぱた。

まだ私と沢山チェキとれるぞ。

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