第9話 オタクの現実
一般人がイメージする、キモいステレオタイプのオタク。
小太りにメガネで清潔感がない。
チェックシャツにジーパン、伸びてるだけの長髪。
リュックサックからポスター。
なぜか指だけ出てるどこで売ってるかわからない皮の手袋。
推しのサインだらけで耳なし芳一状態のTシャツ。
当然、風呂キャンセル界隈。
そんな生理的に無理、いかにもなドルオタは令和には、存在しない。
あれ小説の中のキモオタで、ヤバイオタクは、一見普通に見えて、距離感バグってる。
嫌悪より恐怖を与える存在だ。
つまり殆どのオタクは怖くはないし、キモくない。
地下アイドルへの解像度が低い人間の脳内にのみ存在するアバター、平成初期の怪物、それがキモオタだ。
私にとってオタクの価値はチェキ残数。
いかに自分と多くのチェキをとってくれるかで決まる。
逆にアイドルの価値はいかに多くのチェキをとってもらえるかで決まる。
チェキ残数は、アイドルの力であり寿命なんだ。
それは、オタクにとってもアイドルにとっても同じ。
絶対のルールだ。
ただし清潔感は本当に重要。臭いはキツイ、マジで風呂入って洗濯しろ、オキシで。
私は、よほどの異臭がしない限りガマンはできた。
お給料とはガマン代だ。
同情するなら金をくれ。
ただ私は以前より、そんなオタクにも優しい存在になれていた。
優しさとは、実は経済的余裕から産まれる概念だ。
精神的余裕→優しさも経済的余裕に大きく左右される。
金持ちがケンカしないのは余裕があるからだ。
私は、物販列にならぶオタクの頭上にあるチェキ残数の合計を集計している時が1番安心できた。
私には、存在意義、商品価値があるのだと。
オタクはアイドルが持つ資産なんだ。
資産は、運用方法が何よりも大切だ。
私はチェキ残数を増やすことに必死だった。
それにはまずオタクの好物を知らなければならない。
私は、反応に並ぶオタクの好物を見つけていた。
それは、口実(言い訳)だ。
普段チェキを撮りに来ないオタクが私に来た時を思い返す。
やれ髪型が好きだから〜
やれ推しに干されただ〜
やれ最近、人気出てきたから〜
やれ運命、やれ奇跡の出会い
そういったうすっぺらい口実で
私とチェキをとりに来るオタがなんと多いことか。
その法則、真理を掴んだ私は、オタクに都合のいい口実を与え続けることにした。
そう考えると地下アイドル界は、なんて優しい世界だ。
世間では通用しない、しょうもない言い訳が甘受される。
現実社会では、そうはいかない。
オタクが地下アイドルにハマる理由は
現実社会が厳しすぎるのかもしれない。
世知辛い、言い訳が効かない世の中が、不遇でパッとしないオタクを地下の甘い優しい異世界へと誘うのだ。
私はオタクの偶像になっていく過程を噛みしめていた。
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