第4話 オタクの性質

地下アイドルにとって一番重要なのは、

歌でもダンスでも顔や若さですらない。


いかに上手くオタクを『勘違い』させるかだ。


大事なことなので2回言おう。


いかに上手くオタクを『勘違い』させるかだ←←



全てのオタクは基本かまってちゃんだ。


自分勝手に交換レートを設定し、コスパのいいサービスを求めてくる。


現場に来たオタクと1枚でも多くチェキを撮るのが命題。

地下アイドルはそのために活動してるのではないだろうか。

それにはオタクを勘違いさせて、自分とチェキを撮りたい、〇〇だから撮らなくちゃと思わせる技術が必要だ。


地下アイドルは、いかに上手にオタクをかまうか。

地上アイドルは、いかに上手にオタクにかまわないか。

地上アイドルと地下アイドルは似て非なる存在なのだ。


オタクは勝手な理想をこちらに求めてくる。

それゆえパパ活や風俗、オタクが嫌がることはしていない。


バレて商品価値がさがり、クビ(卒業)になったら、資格も学歴、職歴なにもない適齢期の女だけが残る。

ファンティアや投げ銭で稼ぐにも別のノウハウがいるだろうし。


今は、ステージで歌い踊るアイドル活動をしていたい。



純粋な欲をいえば、昔テレビで憧れたキラキラした、かわいいアイドルになりたかったんだ。


かわいいは正義だ。


現にかわいければとりあえずチェキを撮って貰える。


楽屋で他のアイドルから言われる嫌味→

あのこかわいいだけじゃんは、至高の誉め言葉なのだ。


もし私がそんな陰口を叩かれたら

そのかわいさオンリーに負けてるのが

お前なんだぞと反論してやるつもりだった。


ただ、残念ながら私にその機会は無かった。

だが、神は私に残チェキ数がみえる能力をくれた。


この眼の力で絶対に誰よりも売れてやる。



ピピピピピ、狭いライブハウスの片隅に

時間終了のキッチンタイマーがなる。


『またきてね、ありがとー、浮気しちゃヤだよ』

私はそう言って頭上に数字のあるオタクに

撮ったチェキを渡す。

よしよし物販列には数人の私推しが並んでいる。

残チェキ数が見えるようにはなったが

それ以外は全く変わりばえのない自分。

チェキ数ゼロは死を意味していた。


毎回思うがオタクはチェキをどうするんだろう。

チェキ飯といって、自分の食事に一緒に映して

〇〇ちゃん美味しいね♪とかツイートするしか

利用法が思いつかない。

なぜチェキがそんなに欲しいのだろうか。


私はオタクの頭に浮かぶ残チェキ数を見て気付いた。

残チェキ数は単純にカウントダウンしてはいない。

例えば残チェキ数10のオタクが1枚チェキを撮るとする。


オタクの頭上の数字が絶対に9になる訳じゃないってことだ。

チェキをとった会話が盛り上がると残チェキ数がむしろ増える。

当然逆もあって、あるオタクの残チェキ数が

イッキに10減った時は流石にへこんだ。

10Kはシンプルにいバイト1日の稼ぎより大きい。


 私がなにかしらオタクの地雷を踏んだらしい。

そういった物販トラブルの後には

現場にくるスパンがあいたりする。


オタクは干されただなんだすぐスネる。

私はそのオタクへのリプに力を入れる。


オタクが何よりも好きなのは

胸や目の大きさより『反応』の大きさ。

リアクションの大きさの方が求められる。

自分に対する特別な反応である

いわゆる私信は効果バツグンだ。


弱点がポ〇モン以上にわかり易い。

大量のリプ返を終えて、私は頭上の残チェキ数が増えてることを祈り、眠りにつく。


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