第23話 商人見習いの大仕事(中)
速足で来たものの、日がもう既に傾いている。
出掛けるのがもう少し早ければと後悔したが、
今更のことで仕方がない。
「あ、兄ちゃんだ!」
孤児院の柵に近付き、子供たちにすぐ見つかれてしまった。
「こんにちは、お兄さん(ちゃん)」
他の子供たちも囲まってきて挨拶してきた。
「こんにちは、みんな。今日も良いものを持って来たよ」
「わーい!」
はしゃいでる子供たちに向けて、笑顔を見せる。
フローラルとビビアナは手を繋いてるのを見て、
本当にもうすっかり仲良しさんだねと、うんうんと勝手に感心した。
昨日ぶりの客間に案内され、早速カーラさんに要件を伝えた。
「子供たちに働かせる、ですか」
「はい」
爺さんが運んできた大量の資材を使って、
孤児院の子供たちに修業をさせ、商品を作らせる。
目標は、二か月後の収穫祭にて販売させること。
今の所目途がついたのは、
パン屋さんにて簡単のパンもしくはクッキーの焼き方を学ばせる事と、
裁縫や刺繍など針子の仕事。
子供たちには新しい事を学ばせることが出来て、
今後出来る仕事の幅も広がるでしょう。
児童労働?
私も一応児童だが?
「なるほど、分かりました」
「いかがでしょうか」
「確かに、子供たちにも悪い話じゃありませんわね」
少し考え、カーラさんは私の目を直視してきた。
「わかりました、まだみんなは幼いですが、将来の道を少しでも先に目を通すのに、いい機会かもしれませんわね」
「ありがとうございます!」
「そんな、こちらこそ、礼を言う方でしょうに」
そう言って、またその慈母の微笑みを浮かぶ。
「子供たちのために、いろいろありがとうね」
つまるところ今回私がしたことは、業務提携ということだ。
今回の話の内容は収穫祭の二か月間だけだったが、
もし何かしらの成果が出したら、そのまま続けることもできそうだ。
それからカーラさんは子供たちを呼び寄せて、ことを説明した。
「兄ちゃんとおしごと?やりたい!」
いっしょにやろう!
とリーダー気質な男の子は第一声にそれを上げた。
他の子たちも興味津々のようで、追随するように賛成してくれた。
あーしよう、こーしようと、
子供たちは輝かしい笑顔で話し合う光景は微笑ましくて、
その無邪気さに一口お茶を含み、しばらく見守った。
「ところでタロート君」
「はい?」
「収穫祭の時どこで出店するの?」
「そうですね…」
去年の収穫祭を思い返す、その時はたしか、
町の中央の広場が一番人多かったし、
その周りの露店でも貸してもらえるか頼んでみよう。
「爺さんの知り合いに頼んで、中央広場に場所借りようとの考えです」
いままで爺さんと商売の勉強してきたから、
町中色んな商人とは顔見知りになり、
そしてこれは公では誰にも言わないが、
勇者の息子という立場は結構を利用できる。
私もできればこの方法を使いたくなかったが、
だが今回は別だ、妹たちのためにならば、
そのちっぽけなプライドは捨てよう!
利用できるものはとことん利用して、
頼れる人はとことん頼っていきましょう。
「あといま思いついたのは、荷馬車ちょっと改造してもらって、合わせたら結構手広く売り物出来ると思います」
「まあ、よくそんなの思いつきますね。でもそれでは売り子さんは足りるのでしょうか」
「あっ…」
考えてなかった。
確かに露店を出すのに、しかも商品棚を広くするのなら、
一人じゃどうにも回らない。
その日だってうちのみんなだって忙しいし、
レイナとネフィーたちだってその日はせっかくの祭りでは遊びたいだろうし…
いやこの際、二人にも頼んでみよう!
あの子たちは普段から家の事手伝ってるし、
売り子さんになってくれるなら頼れる即戦力だろう。
ただそれでもまだ心許ないかも、
なにせ子供三人で露店開くなのだから、
せめて大人がいれば。
「お困りでしたら、私もお手伝いしましょうか」
「へ?」
予想していなかったのと、
丁度良すぎる人選からの声にちょっと間抜けな声が出てしまった。
「それは是非、お願いしたいです、はい!」
「ああ!」
何かを思いついたのか、カーラさんは声を高く上げた。
「フローラとビビアナも、一緒に売り子さんになりましょうか!」
「売り子さん?」
「そう、売り子さんよ」
カーラさんの嬉しそうな声に、
名前呼ばれた二人は頭を合わせて傾げる、可愛い。
「二人はどうかな?」
改めて二人の妹を見る。
確かに、この二人の美少女が売り子になってくれれば、
繁盛するの間違いなしだろう。
「私からもお願いするよ、どうかな、フローラ、ビビアナ」
視線の高さを合わせて、出来るだけ優しく声を掛けた。
「やりましょうよ、二人ともとってもかわいいから、きっと素敵な売り子さんになれますよ」
私とカーラさんにお願いされ、少し困る表情を作る二人、
何か心配ことでもあるのかな。
「でもわたし、売り子さん?はやったことないし、なにをするのか分からないよ。ビビアナちゃんは?」
フローラルはそう言い、横にいるビビアナも、困る表情で頭を横に振る。
それもそうか、フローラルも売り子の経験ないとして、
人の町で育ってないビビアナはなおさらだろう…
やっぱりだめか…。
「それなら」
カーラさんは笑顔のままに、解決策を出してくれた。
「二人とも、タロート君の家のお手伝いをしていけば良いではありませんか」
たしかに、そうだな…
売り子の経験が無ければ、すこしずつやっていけばいいだけです。
いきなり路上の露店販売より、うちの道具屋で慣れさせるのが一番なんだろう。
どうしてその発想は出てこなかったのだろうと、自分の頭を叩く。
こうして、カーラさんのやや強引さもあって、
私の提案はすっかり通してくれた。
子供たちとのファーストコンタクトも良好なので、
皆これからの仕事の勉強についてすっごく乗り気で、
本当に良い子たちでよかった。
その後、フィリスさんとこのパン屋さんとも掛け合い、
カチューシャさんの伝手で裁縫の先生もすんなりと見つけた、
授業のお代はこちらから支払うつもりでしたが、
教会のシンボルをモチーフした作品を作ると言って、
代金は教会から出すことになった。
さすがにクリスタ様には敵わないです。
頼れる人が周りにいて、物事が円滑に進めた。
妹たちのための大仕事は、
まだ始まったばっかりである。
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