第18話 黒い髪の男を捜してた女の子のお話(限界突破)

ごめんなさい!

上中下で終わらせるつもりだったが、

やっぱり前の話とちゃんと繋げたいので、

また1話を書き足しました。

―――――――――――――――――――――




 夢を見た。

 緑の景色が溢れる、そんな夢。

 夢の中での私は、いまよりほんの少し小さい、

 森に出る前の私なのかな。

 小さい私は、木の枝と木の枝を走って渡り、

 好き勝手に、思うままに飛び跳ねてた。

 そんな、自由気ままで、気持ちいい夢。

 跳んだ先の枝を踏んだ瞬間、突然それが音を立てて折れた。

 私は何かを掴みたくて手を伸ばすが、

 結局なにも掴めないまま、体暗闇に落ちる…

 落ちる…


「ん、んん…」


 目を微かに開けて、夢から覚めたようだ。

 体を丸くして身を隠したまま寝っちゃったせいで、体の所々が痛い。

 手を伸ばしてると、なにかにぶつかった。


「はっ」


 壁に背もたれてるほうきがさっき手が触れたせいで、

 つつぅーと壁に沿ってちょっとずつ滑り落ちるのを見えた。


「っっ」


 体を弾いて手を伸ばし、ほうきが地面に倒れる前になんとか摑まえた。


「ほっ」


 ほっと一息吐いて、目を周囲にやる。

 光りが隙間から刺さって、どうやらもう朝のようだ。

 さっきの出来事で一気に目が覚めた。


 昨日は日が落ちるまであの人たちがずっと居たのせいで、

 外に出る機会はなかった。

 えーと、確かあの家の隣の小屋で寝てたような…

 目を何回かぱちぱちさせ、落ち着いて思い出してみる。


 昨日は黒髪のお兄さんにびこうして、

 このお兄さんが働いてるかもしれないこの道具屋にたどり着いた、

 そして丁度それはお兄さんの誕生日だったみたいで、たくさんの人が来て、

 日が落ちるまではしゃぎ騒いでたのを、外から見てた。

 それから…お兄さんたちの事を見てると、なんか、泣いちゃって…

 声を殺して泣いて、泣いて…それで疲れてそのまま寝てしまいました。


 運よく、誰にも気づかれなかったみたい。

 門の隙間から外を見ると、庭は誰にもいないみたい、出るのなら今です。

 ドアに手を掛けて、私は何のためにここに来たのだろうとふと思う。

 あの黒髪のお兄さんの事を、知りたいから、追いかけてきた。

 知ってどうするかは、これから考える、今は観察しよう。

 そう思い、ドアに触れた手を下ろして、窓に通して昨日騒いでた大部屋を見る。

 …居た!黒髪のお兄さんが!

 お兄さん以外に二人がいて、三人もここに住んでいるのか。

 それ以外の昨日ここに来た人たちはもう帰ったみたいで、ここにいない。

 一人はあのちーちゃん見たいに元気な女の子、

 もう一人女の人はあの子お母さんかな?三人をやりとりをみて、そう感じた。


 お母さんと子供、家族…もしかして、黒髪のお兄さんも?

 お母さんと黒髪のお兄さんと妹ちゃん、ここからでは声聞こえないけど、

 こうしてみるとなるほど、三人はたしかに家族だ。

 また森とお母さんの事を思い出しそうで、頭を振る。


 だめ、また泣きそうになる。

 いまはこっちに集中、ぐっと堪える。


 この三人は家族のはいいとして、昨日見た他の人たちは?どういう人だろう?

 お兄さん以外全部女の人のも謎で、一体どういう関係なのだろう?


 すごく謎。


 そう考えるうちにその三人は向うのドアを開いて、大きい部屋から出ていった。

 その方向は…たしか道具屋って書いてたところの方だよね、開店するのかな?

 周りに人がいなくなったいまなら、ここから外に出るいい機会だ。

 扉に手を掛け、少し力を入れる。

 キィーの音をなるべく抑えながらゆっくり押してく。


 ガッ


「うん?」


 扉を前に押すと、なにかが引っかかってるみたいにとまる。

 もう少し力を入れて扉を押す。


 ガッ ガッ


 押すと少し扉は動くけど、そのあとすぐ何かに引っかかって、

 それ以上は動かない。


「え、うそ?」


 カギが掛かってる!?

 どうやら、昨日の夜ここで寝てたのはバレなかったのはいいとして、

 でもそのまま誰かが倉庫を閉めてカギを掛けたみたい。


 そんな、どうしよ!?

 このままじゃ出られない。


 いや、まだ店に人がいるのなら、倉庫にくるかもしれない、

 その時カギ開けてもらったら…いやダメ!

 ふほうしんにゅうしてるのバレちゃう!

 だったら誰かがカギを開けるのを隠れて待って、そのあと逃げよう。


 うん、それでいこう。

 そう思ってしばらく待つと、誰にも来ないところが、

 人の気配が全然感じないときた。


 え?そんな…

 まさか店の方にも人がいないの?

 もしかして出掛けた?

 もしあの人たち出掛けてたのなら、どうしよう。

 もしかしてこのまま誰にも気づかれないまま閉じ込められて…

 そう思うと急に怖くなってきた。


 弱気になってた考えを振って、頭から追い出そうとする。

 そんなことない、ふつうに考えて、また人が帰ってくるはず、

 その時まで待てばいいだけ。


 ぐー

 お腹が鳴った。

 そうだよね、昨日から何も食べてないから。

 なにか食べ物ないかと周りを見ると、

 麻袋に入った穀物があった。

 お兄さんの家の物を盗んじゃいけない、

 めいわくを掛けたくない、

 ただ本当に、お腹が空いた。


「お兄さんごめんなさい!」


 指で掴んで口に入れる、なんだか苦い、パンやかゆみたいな香りがない。

 ちょっと齧ってみたが、すぐ吐きだした。


「うぇ」


 まちゅい…

 ですよね…そのまま食べられるものなら、倉庫に置かないよね…


「はぁ…」


 仕方ない、これ以上お腹が空かないように静かに座って待つことにした。



 あれからどれくらいの時間経ったのだろう、日差しの方向が逆に回った。

 静かのままで誰にも近づいてこなかった。

 窓とかを試したけど開けられるような窓じゃない、

 一瞬蹴破ってやろうとおもったが、すぐにその考えを捨てた、

 お兄さんたちにめいわく掛けたいってわけじゃないから。


 そうしているうちに、ようやく人の気配を感じた。

 身を低くして、息をひそめて隠れる。

 すると足音が近づいて来て、門の前にとまるとガチャっていう声が聞こえて、

 扉が開いた。


 人が奥まで入ってこないと祈りずつ、見られないように位置をちょっと調整する。

 倉庫をあけた人は中に入って、何かをあさる音がした。

 とりあえずこのままやりすごそう、人が出ていくのを待つことにした。

 もし気付かれたら?

 なにか出来るわけでもない、その時はその時だ。


 しばらくして、足音が遠くになった。

 ほっと一息して、頭を出す。

 よし、誰にもいない、いまのうちに出よう!

 さっき扉のカギを開けたのは誰なのかわからないけど、特に問題ない。


 庭に出てから、また窓を覗いて、中のようすをみる。

 ちーちゃん似の女の子とその子のお母さんの姿を見えた、

 楽しそうになにかを話してるみたいだ。

 あのお兄さんはここにいないみたい、店のほうかな?とりあえず外に出よう。

 細道を通って、一日ぶりの大通りに出た。


 カラーンという軽快な音が聞こえて、身を隠して見ると、

 黒髪のお兄さんが店のドアから出たみたい。

 帰った?ばっかりみたいだけど、またどこかに出かけるのか?

 とにかく追いかけてみよう。

 そう思ってまた陰に隠れながらお兄さんの後ろについていった。


 大通りをそのままずっと歩いてるみたいだけど、どこにいくのかな。

 結構の距離歩いたと思ったけど、まさかこのまま人間の町から出ていくのか?

 あ、本当に出て行った…どうしよう、このままついていっちゃいいのかな…?

 黒髪のお兄さんが出ていくのを見て、足を停まった。

 今じゃなくても、家?は分かったし、また別の時でも来たらいい。

 ううん、やっぱり追いかけよう。

 少しずつ遠くなる黒髪のお兄さん背中を見て、また追いかけていった。


 人間の町を出て、平原の道を沿って歩く。

 困ったな…

 ここは森や町のなかと違って、隠れる場所が少ない。

 いくつかの木と岩を陰にして、身を隠しながらお兄さんの後ろを追う。

 このままではバレちゃいそう、どうしよう!

 そう焦ってたけど、幸いお兄さんの目的地はそう遠くなかった。

 広い平原のなかで一つだけの家、お兄さんはそんな建物の前に足を止まった。

 前の庭?背が私くらいの子供が何人かいる、

 黒髪のお兄さんは子供たちに囲まれてる、

 ここでなにをするのだろう?


 考えているうちに、お兄さんは家から出て来た女の人と中に入って行った。

 …気になる、どうしよう。

 周りに隠れる場所が少なさ過ぎる、近づくとバレちゃいそうでこわい。

 やっぱりお兄さんが出てくるのを待ちましょう。


 しばらく木に隠れると、子供たちの姿が見えなくなった、

 もしかして中に入ったのかな?

 うん…

 よし!近づいてみるか。


 日に照らされ過ぎたか、またはお腹がすきすぎたか。

 私はなにも考えなくてあのお家に近付いた。

 周りに人がないのをいいことにして、

 私はまっすぐに走って近づいて、窓から覗いた。

 いくつかのベッドが置かれている、ここはあの子供たちの寝るところかな?

 中に誰にもいない。


 壁つたえに、もう一つの窓を覗いてみた。

 いた!黒髪のお兄さん!

 お兄さん以外にもう一人女の人がいた、なにかを話していたようで、

 窓の外からはうまく聞き取れない。

 あの女の人は、町で見かけた大人のじょせいみたいに綺麗な服を着てないけど、

 すごく綺麗なひとだ。

 またお兄さん、綺麗な女の人と一緒にいる…

 いったいどういう事なの?

 胸がざわざわして、なんだろうこれ、初めて感じ…


「おい!誰だおまえ」


 後ろから声がして、肩が大きく飛びあげた。

 集中力が切れたのか、まさか人が近づくの気付かないなんて…!

 振り返ると、私の背高とそう変わらない子供たちが立っていた。

 真ん中にいる男の子は、腕を組んで怒ってるような顔を作って睨んできた。


 囲まれた…!

 早く逃げたいのに、足に力がでない。

 お腹が減りすぎて、走る力がもうでないみたい。


「何事です?」


 立ち竦んでいる間、女の人の声が聞こえて、二人の人間が走ってきた。

 さっきの窓から見た綺麗な女の人と――


「エルフ…?」


 黒髪のお兄さん…


 見つかっちゃった…


 どうしよう、今回は隠れるところがない、逃げられない。

 お兄さんの事を知りたい、話してみたい、また話を聞きたい。

 でも何を話そう、いまこの状況で、なにを…

 私、なにをしたら…


「付いて来て」


 目の前のお兄さんの声は、どうしてなのか、

 お母さんの優しな声と、重なって聞こえる。


「お腹空いただろ?」


 夕陽の光は、黒い髪と目を反射して輝いてるように見える。


 森の広場で見たのと全然違う人だったけど。



 わたしは、黒い髪の男を見つけた。



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