第17話 黒い髪の男を捜してた女の子のお話(4凸)
上中下で終わんないのかよ!
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あれからは、あの黒髪のお兄さんを探すために、
市場だけじゃなくて町中に散策するようになった。
結局それから盗人の仲間たちは見なかった、本当に捕まれたらしい。
それもあって、最近警戒がさらに薄くなってるようで、
盗んでるとこ全然気づかれることはなく、動きやすくなった。
最近はパン屋さんの売り残りとか、店の余りものを拾ったりで、
本当にお腹空いてしかたなくなった時にしか物を盗まなくなった、
悪い事なのは知ってるけど、他の方法は、私は知らない。
J&R。
あれは店の名前だと判るまでに何日も掛りました。
市場で待ち伏せしたりもして、何回か見掛けたことはあったけど。
人混みから見失ったり、忙しそうにしていたりで、声を掛ける機会はなかった。
そんなある日、
ようやく荷物背負っている黒髪のお兄さんが一人で歩いてるのみかけた。
市場から後ろにつけて、物陰を隠れながら、
今度こそ見失わないようにしっかりと後ろにつける。
しばらく歩いてると、お兄さんはある建物に入りました。
ぶら下がってる看板には、ジュード&ローナの道具屋って書いている。
なるほどそれでJ&Rなのか、一体何なのかとずっと悩んでいたのに、
知ってればなんだそのことかと思った。
あのお兄さんは、ここで働いているのか。
場所は知ったものの、入る勇気はまだない。
せめて窓からでも覗けるのなら…
そう思って近づこうとしたら、
「ッ!!」
視線を感じてまた路地の陰に隠れる。
「あれ?」
「うん?どうしたのネフィー」
「うん?うーん…見間違えたかな」
「なーに?早くタロー君の顔が見たくて幻覚でも見たかな?」
「ちょ、な、どうしてそうなるの!もうお母さん!」
「あははは!ごめんごめん、ネフィーが可愛かったからつい」
「むー顔をもむなー!」
私よりちょっと背が高い、かわいい女の子は頭に付いてる二つの尾を上下に振らせながら、お母さんと呼ばれる綺麗で活発な女の人に抗議する。
騒がしいふたりはそれはもう騒がしくて道具屋のドアを押しのけて入った。
すごい存在感を放つ二人だった。
お客さんがいると、私が入ってもそんなに目が立たないかな。
と思ったものの、自分の今着ている所々汚れた服を見て、その考えを諦めた。
いまの私なら、却って目が立っちゃうかもしれない、
もしくは乞食とか思われるかもしれない。
別にそれで、お施しをもらうと装って、接近するのも出来るかもしれない、
あのお兄さん、いい人っぽいし。
でもなんだか、あの人に乞食だと思われたくない。
はぁ…
悩んで悩んでいても仕方ないけど、打つ手がなくて、
とりあえずここで待て様子見でもしよう。
そうしているうちにいつの間にか昼が過ぎた。
あのあと何人かの客が入って、また出て来たけど、
あの騒がしい親子はそとに出てこなかった。
「あっ…」
ドアが中から開かれ、あの黒い髪のお兄さんが出て来た。
でもお兄さんは看板を畳めて、ドアに掛かっていた板を裏返して、
また店に入っていった。
うん?もう店じまいですか?まだ明るいのに。
人間の町にある店と市場は、まだ日がまだ明るいうちにはほとんどは閉めない、
夜も開いてるお店はあるみたいけど、怖くて近づいたことはない。
店が閉まった、どうしよう、もう入れないかな。
そう慌てていると、一人私と似てるような髪色の女の子が店に近づいてきた。
ドアを見て帰るのではなく、店の横の細道に入った。
うん?なんだろう…
ちょっとへんだなーと思っていると、また人が店に近づいた。
凄く高そうな服を着た綺麗な女性と、背が小さくてかわいい女の子でした。
二人はドアを見て、またしても横の細道に入った行った。
また?
なにもないように見える細道にどうしてこんなにも人が入ってくるのか、
好奇心に抑えられず、私もついていきました。
細道を通るとそこは、庭のようだった。
そして庭から道具屋の裏に続く門がある、ここから入っていったのかな。
でもそれはそれで、分からないことが増えた。
閉店したのを見て、裏から入るのはどうして?
そしてあのツインテールしてる子とその子のお母さんはどうしてるの?
まさかまだ中にいるのかな?
考えても答えが出ないので、近くの窓を覗くことにした。
「「お誕生日おめでとーぅ!!」」
突然響いた歓声に驚いて、尻餅をついた。
幸い声をが出なかったので、気付かれなかったみたい。
頭をそーと窓に近づいて、中を覗く。
思ってたより人が多かった、細道を通った人たちと、
道具屋から出てこなかったおやこ、他にも何人かいて。
そして、黒髪のお兄さんも、そこにいた。
色んな食べ物を置いた机に囲んで、楽しそうに、そこにいるみんなが笑ってた。
ぼんやりと眺めていると、後ろから足音が近づいてくるのを聞こえた。
びっくりした私は急いで花壇の陰に滑り込んだ。
いたっ!
頭がぶつかった、だけどいまは我慢。
「うん?」
「どうかした?」
「ううん、なんだか声が聞こえて…」
「まあもう始まってるみたいだし、そりゃ賑やかで騒がしいでしょ」
「あ、いえ、でも…考えすぎたかな、なんでもない」
そんな会話が聞こえて、足音が遠ざかった。
バレなかったみたい、危なかった…
立ち上がって、また窓を覗くと。
淡い褐色肌の人が二人も増えた、さっきの声はこの人たちだろう、
そしてまたしてもすごく綺麗な人たちだった。
一体どうしてこの道具屋にこんなにも、美人が集まるのだろう、
不思議で仕方がない。
それからはしゃいで騒いで、お兄さんがもみくちゃされて、
でもみんなが楽しそうだった。
そんなわいわいと騒いでる彼女たちを見て判ったことはあった。
今日はあの黒髪のお兄さんの誕生日だったらしい。
お兄さんはいくつになったのだろう、私よりすこし上みたいだけど、
人間とエルフだから一体どれくらいの差なのかよくわからない。
机の真ん中に置かれていた大きいなケーキを、
お兄さんともう一人誰かで一緒に切り分けるのか揉めているらしい。
あのお兄さんと年が近そうな子たちは喧嘩でもするのかと思えば、
譲り合っていたらしい、
最終的にはあの元気がすごくて小さな子と一緒に切り分けた。
その子を見ると、なんだか隣のちーちゃんを思い出す。
元気いっぱいなところがすごく似ている。
ぼんやりと眺めてたら、何人かが庭に出るのを気付いた、
だけど気付くのが遅くなって、外に出るの出来なかった。
誰かが庭に出てくる直前ようやく隣りの小屋に滑り込んだ。
静かに待っていると女の人の話し合ってる声が聞こえてくる、
時々あがってくる笑い声伝わってきて、少し安心する。
ここにいるのはバレなかったみたい、ほっとして身を起こす。
周りを少し観察する、鉄器や穀物が入ってる麻袋、
他に、これは庭用の道具なのか、が置かれている。
ここは倉庫のようだ、丁度ここにも大部屋に繋がる窓があるようで、
別の角度からお兄さんたちの姿が見れる。
そしてここは丁度死角になってて、庭に出た人たちに見られないけど、
出るに出られない。
仕方ない、この人たちがまた部屋に入るのを待つことにした。
ついでにお兄さんたちを覗く。
この人たちの関係は考えても考えてもすごく謎で、一体どうなってるのかな。
それでも、家族のように見えた。暖かくて、幸せな家族が。
ふとお母さんのことと、森のみんなを思い出した。
お母さんはいま、どうしてるのかな…
ちゃんと食べてるのかな、泣いてないのかな、
森のみんなとまた仲良くなれるのかな…
そう考えると、視線がぼやけて、涙が流れ出てしまった。
森に出てから涙が出たのは、初めてだった。
胸がぎゅーっと締め付けられる、とても居た堪れなくて、
悲しい気持ちになった。
窓の中の暖かい光景をみながら、
気付かれないように、私は声を殺して、涙を流し続けた。
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