第14話 黒い髪の男を捜してた女の子のお話(上)
「んしょ」
しんせいな森から果物をいただいて、かごの中にいれる。
「っよ、っと」
木の枝をつたい、果樹から降りた。
「ひーふーみー、よし!」
今日のせいかを数えて、かごをふたにした。
「らららー」
いつもの森なのに、最近はなんだかワクワクしてとまらない。
「ふん~ふふん~♪」
なにせもうすぐ弓が貰えるなのだから。
お父さんはいないけど、代わりにお母さん作ってくれるって、お母さんが言った。
「アナだけの弓…ふふ」
大人たちと違って、れんしゅう用の弓だけど、それでも初めての弓だもん!
「たのしみだなー」
ワクワクが収まらなくてステップを踏んで踊って、おうちに向かう。
何時も静かな森の広場は、今日はなんだか騒がしいです。
でも広場の中心が大人たちに囲まれてるせいあんまり見えない。
「んっしょ」
近くの蔦に辿り、木の上に登った。
ここならよく見えるね。
「あれ?また俺なんかやっちゃいました?」
おとなのひとがいっぱいで、そのまんなかに、黒い色の髪をした男の人がいる。
黒い髪!初めて見た!
ちょうろさまたちとあの黒い髪の男は、なにかあったのでしょうか?
「いい加減にしてください!勇者ハシモト」
優しいちょうろさまが、あんな風に大きいな声を出すの、初めて見た。
「神聖な森になんてことを…」
「いや、あっちの森どうせお前たちも使ってないだろ」
黒い髪の男の顔は、ここからではよく見えないけど、
もしかして喧嘩してるのかな。
「それに俺は討伐の依頼のためにやってんだから、むしろ感謝しろよお前ら」
「そのような乱獲を繰り返すような行為では、森の生態系が崩れて、大いなる災いになるぞ!」
「そおつんけんすんなよ爺さん、血圧がやべぇことになるぞっ☆」
「この…」
大人たちみんな、モンスターが森に入った時みたいに怖い顔してる。
「どうしようどうしよう…」
声が荒げた大人たちが怖くて、どうしたらいいのか分からない。
人だかりから一人のエルフが、
ちょうろさまたちと勇者と呼ばれる男の間に飛び出した。
「もうやめてください!」
あれ?お母さん?
「貴方…」
ちょうろさまはお母さんを見て、おどろいてるようだった。
なんで?なんでお母さんが?
「お願いします、もうやめてください…」
お母さんのそんな悲しくて泣きそうな顔は見たことない。
何でだろ、もやもやがいっぱいで、どうしてか分からない。
お母さんの泣き顔、黒い髪の男、怖い顔になったちょうろさま、
頭の中でぐるぐるまわって、何も分からない。
「おっ、なんだぁ、話分かるやつもいるじゃん」
「勇者様…!」
「てっ君かわいいね!どこで会ったことあったっけ?」
「えっ…」
「しっかし、エルフは美人ばっかでよう見分けがつかんわ」
距離があるのと、周りが人だらけだからちょっとしか聞こえなかった。
「まあ俺は忙しいんでもう帰るわ、じゃあな!」
気が付いた時、あの黒い髪の男もういない。
残されたのは、ちょうろさまたちと、大人たちと
「お母さ…」
膝を土について、悲しい顔で目を閉じてるお母さんだけ。
あの日から、ちょうろさまたちは家に来るようになった。
ちょうろさまが来るとき、
部屋から出っちゃいけないってお母さんに言われたから、
みんなは何の話をしたのかよく分からない。
あの黒髪の人間が来てから、村のみんながなんだかすごく変な感じになってて、
お母さんも、笑わなくなった。
家から出るときも、みんなには変な顔で見られるし、
森に果物を取るときもずっと一人で、
ともだちとも遊べなくなっちゃった…
「はぁ…」
木の上から降りて、取った果物をかごに入れる。
最近森のみんながいると変な空気になっちゃって、一人にいる時間が増えた、
またみんなと仲良くなりたいのに、どうしていいのか分からない。
「ねえ、せいれいさま、アナ、どうしたらいいのかな?」
風のせいれいも、木のせいれいも、いつものように静かに森と共にいる、
なにも答えてくれない。
ため息ばっかりがでっちゃう。
村に付くと、なんだか広場の方は人が多くて騒がしい。
少し前にも似たよな空気を感じたことがある気がして、
むねがぞわぞわして、いやな感じになる。
近づいていくと、まるであの日のように、
ちょうろさまたちは、誰かを囲んでいた。
前にでていくと、そこにはお母さんがいた。
お母さんはこっちを見て、泣きそうな表情で叫んだ。
「アナ!」
「お母さん!」
お母さんの傍に走っていこうとすると、誰かに肩を掴まれた。
「は、はなして!ッ、お母さん!」
その力はおおきくて、掴まれた肩は痛い。
手をのばして、お母さんに近付こうとする。
「お母さん!おかあさん!!」
でも一歩も前に進めなくて、どうすればいいのかわからなくて、泣きそうになる。
「ビビアナよ…」
ちょうろさまは冷たい表情でこっちを見る、
なにを考えてるのか分からないその顔はすごく怖い。
「ひっ…」
ちょうろさまは目を閉じて、長い溜息をはいた。
「ビビアナよ、よく聞きなさい」
――森のエルフの掟により、
お母さんは世界樹が枯れるその日まで、
森に出ることは許されない。
私は、森から追い出されて、一生ずっと森に帰ることはできない。
そう、ちょうろさまに言い伝われました。
お母さんと、人間との子供…
それのどこがか悪いのか、よくわからない。
あの日村に来た人間は、髪が黒くて、耳が短くて、
目は小さくて顔つきはちょっと怖いけど、
他に私たちと変わるところは分からなかった。
私のかおも、耳も、髪も、なにもおかしなことないのに、
となりのちーちゃんも、アウラも、みんな一緒に遊んでたのに、
一緒に森の中で走って、木を登って、これからは一緒に弓の練習もするのに…
どうして…?
お父さんは誰なのか、どんな人なのか、お母さんに教えられたことはなかった。
それでもみんなは私たちをエルフ、仲間同士だと接してくれた、
まさか私は、お母さんと人間の子供だなんて、今まで考えたこともなかった。
お母さんのことはすき、ともだちも、たまに厳しいちょうろさまもすき、
森の皆が、だいすきです!
なのにもう…ここに来ることはできないなのか?
お母さんとももう、会えないなのか?
「うっ…うう、うわぁああああ」
なにもかも分からなくなって、あかちゃんみたいに泣いた、泣きじゃくった。
それからどうやって森の外に出たか、よく覚えていない。
どこに行けばいいのか、何をすればいいのかもわからない。
わからない、わからないよ…!
また涙がでちゃった。
ふと、あの黒い髪の人間のことを、閉じた目の目蓋に映った。
あの人は誰なのか、お母さんとはどんいう関係なのか、私の…お父さんなのか…
私はあの人が嫌い。
勇者かなにか知らないけど、あの人が森に来てから、お母さんが、ともだちが、
みんなが、ぜんぶぜんぶめちゃくちゃになっちゃった…ッ!
私はあの人に会ってみたい。
会ってどうするのか、分からないけど、とりあえず一度会って…それからえっと…
とにかく一度会ってみたい、会って、それからまた考える。
慣れない怒ってる感情を抱いて、昔ともだちから聞いた、人間が住む、
大きいな町に向った。
――――――――――――――――
ビビアナがエルフと勇者の間の子、
つまりハーフエルフですが、
外見の特徴がエルフと同じ、
正確に言うと母親と同じなのはいずれ説明したいです。
他のいくつかの設定も含めて、
私の拙い文章作成能力を考慮すると、
違和感なく作中に織り交ぜるのは難しいので、
設定だけをまとめて書き出すかもしれません、
ご了承ください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます