第14話 鳴海朋香は仲良く説教を受けます

 俺と朋香は何故か正座をしていた。

 目の前には母さんが怒りをあらわにして足を組んでソファに座っている。


「それで二人とも、今は一体何時なのかしら?」


「「夕方の五時です……」」


 母さんの威圧感のある声に委縮する俺と朋香。

 元ヤンだけあって、やっぱり怒ると怖い。


「好きにしていいとは言ったけど、さすがにヤり過ぎだとは思わない?……ねぇ、圭太?」


「え?なんで俺なの!?」


「当たり前でしょ!」


「何が当たり前なんだよ!俺だけに責任あるとかおかしいだろ!」


「お義母さん、違うんです!全部私が悪いんです……」


 俺と母さんの討論に朋香が割って入る。


「朋香ちゃんは何も悪くないのよ。だから静かにしてなさい」


「いやいや、全部こいつが悪いんだって!」


「自分は散々性欲満たしておいて、そうやって朋香ちゃんに擦り付けるつもりなの?」


「まじで朋香が悪いんだって!一から十まで母さんにちゃんと説明してくれよ、朋香!」


 確かに俺は思う存分に性欲を満たしたのは事実だが、そこに至る流れが存在するのだ。

 それを知れば母さんも納得してくれるはず。


「……本当に朋香ちゃんが悪いの?」


「そうです、私が悪いんです……私がちゃんと圭ちゃんに説明していれば……」


 母さんが優しく問いかけると、朋香は小さな声で呟いた。


「ちょっと、圭太!朋香ちゃん泣いてるじゃないの!あんた本当に下衆な男ね!そんなの子に育てた覚えはないわよ!」


「いやいやいや、母さん!朋香のこともっとよく見ろよ!これ嘘泣きだから!」


 俺の方からは両手で顔を隠しながら、俺に視線を向けて舌を少しだけ出す朋香の姿が見えた。

 明らかにこいつは俺で遊んでいるな。


「そんなわけない。私は泣いている」


「ほら、朋香ちゃんだってそう言っているじゃないのよ」


「泣いているやつは自分で泣いているよって言わないだろ……」


「朋香ふっかーつ!」


 俺は朋香の頭にチョップを入れた。

 朋香は「ぎゃあぁぁぁぁ」と声を荒らげる。


「ふざけてないで早く説明しろ」


「……はい、すいませんでした」


 朋香は自分の特異体質について、母さんに説明をした。

 そして、俺の身体がそのせいで性欲モンスターに変わってしまったことも全て。

 母さんは顔色一つ変えること無く、最後まで話を聞き続けた。


「……なるほどね、概ね理解したわ」


「母さんは意外と冷静なんだね」


「そりゃそうよ。だって、朋香ちゃんのお母さんも同じ体質を持っているのよ?」


「は……?どういうだよ……?」


 俺はすぐ横にいる朋香に視線を送る。

 しかし、朋香は首を横に振った。


「多分、朋香ちゃんには言っていないと思うわよ。あの人はかなり体質のことは気にしていたみたいだから」


 母さんの話によると、朋香のお母さんはお父さんとのセックスの際に気付いたらしい。

 その時点で時すでに遅しってやつだ。


「それなら朋香はどうやって体質に気付いたんだよ?」


「私は母さんに定期的に病院に行きなさいって言われてただけだよ。それで言われたの。私だけだと思っていたんだけど……まさか、お母さんもだっただなんて……」


 朋香は暗い表情を浮かべている。

 それが同じ体質を隠していた母さんに対する苛立ちなのか、ショックなのか、俺には分からなない。雰囲気的にもあえて聞くことはしなかった。


「とりあえず、二人がそういう状態になってしまった以上はどうしようもないわ。薬でどうにかなるものでもないみたいだし」


「畜生……俺の正常な身体が……ああ……」


 これを言うのも何回目だろうか。

 あれだけセックスをすることを拒んでいたのに、今度は逆に求めなくていけない身体になってしまった。


「どんまい、圭ちゃん」


「お前の言うことは全部軽すぎるんだよ……もっとことの重大さに気付けよ」


「私は圭ちゃんとセックス出来ればそれだけで幸せだもん」


「……そうかよ」


 俺の肩を叩いて「ぷぷっ」と笑う朋香に対して呆れた声で返答した。


「まあ、思う存分にセックスしたりすれば身体に問題はないんでしょ?後は朋香ちゃんに圭太の性処理の管理はお任せするわね」


「良いんですか!?」


 朋香の声のトーンがかなり高くなった。

 というか、性処理の管理ってなんだよ。


「もちろんよ。私達じゃ手に負えないもん」


「分かりました!ありがとうございます!」


「その代わり、今日みたいにヤり過ぎないようにね?さすがに朝から夕方はダメ」


「はい!気を付けます!」


 母さんの言いつけにも朋香はハキハキとした声で答えた。

 いつもこれくらいなら扱いやすいんだけどなと俺は少し残念がってみる。


「じゃあ、この話はこれで終わりね。次いでに二人でちょっと買い物行ってきてくれない?朋香ちゃんご飯食べていくでしょ?」


「食べまふ!何作ってくれるんでふか!」


 興奮して噛んだな。可愛いな。

 心の声だから。聞こえてないよ、大丈夫。

 てか、こいつ昨日の夜から家に帰ってないけど帰らなくても大丈夫なのか。


「ハンバーグがいいかしらね。挽肉とか買ってきて貰ってもいい?」


「了解です!」


「でもその格好だと、さすがに外に出れないわね……圭太、服貸してあげなさい」


「お、俺の!?」


「私のだと朋香ちゃんに似合う服無いのよ。圭太のなら大丈夫だと思うわ」


 何が大丈夫なのかさっぱり分からん。

 動揺した俺はその場に立ち尽くす。


「圭ちゃんの服だ!着たーい!」


 一方の朋香は目をキラキラさせて飛び跳ねる。

 どうして俺の服が着れるだけでそこまで喜べるんだ。


「分かった分かった!うるさいから少し静かにしろ!」


 一体何を着せれば正解なのだろうか。

 俺はひとまず部屋へと向かった。


「……これで良いか」


 リビングに戻り、適当に選んだ地味なパーカーとショートパンツを俺は朋香に渡した。


「わーい!圭ちゃんの匂いだ!」


 いきなり服の匂いを嗅ぐのはやめてくれ。

 犬じゃないんだから。

 そして朋香は堂々と俺の前で着替える。


「お前は少しは恥ずかしがったりしないの?」


「だってもう裸見られてるし。別に隠したりする必要もなくない?」

 

 確かにそれはそうだが、女子として多少の恥じらいは持っておいて欲しいものだ。

 俺としてもそっちの方が朋香の可愛さが更に上昇するからな。


「それじゃあ行ってくるわ」


「はーい。二人とも気を付けてね〜」


 これが俺にとって引退した朋香と私服で外を歩く最初の日となった。

 どうせならデートが一番最初が良かったなと心の片隅では思っている。


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エロが続いたのでここで一息付きましょう。

次ものんびりな感じで行きます〜。

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