第11話 鳴海朋香は熱い夜を過ごす

 この状況、俺は一体どうすれば良いのだろうか。


「圭ちゃん、今からセックスするよ!」


「しねぇよ!さっきも言ったけど帰れよ!」


「こんな格好でどうやって帰るの?」


 暗闇でよく見えていなかったが、朋香は肌が透けて見えるくらいのベビードールを着ていた。

 朋香の豊満なDカップ、薄らと覗かせるくびれと引き締まったお腹、スラッとした美脚に興奮した俺は赤面する。


「……お前!なんて格好してるんだ!」


「え~?私はいつもこんな感じだけど〜?」


 朋香はベビードールのスカートの部分をヒラヒラとたなびかせながらニヤつく。


「嘘つけ!」


「あれ〜?もしかして、圭ちゃんってば、私の身体見て興奮しちゃってるの?えっち♡」


「し、してねえし!」


「だってさ〜、さっきから言葉が単調になってきてるもん。いつものツッコミはどこにいっちゃったのかな♡」


「う、うるせぇ!いい加減、お前は俺の上から下りろよ!重いだろ!」


 朋香が俺の部屋に侵入して来てから、朋香はずっと馬乗りになったままだ。

 俺の顔のすぐ傍まで朋香の胸が迫っている。

 この状態に俺は耐えられる気がしなかった。


「ちょっと!女性に重いとか圭ちゃん失礼だよ!」


「重いから重いって言ったんだ!早く下りろ!」


「私重くないし!ちゃんと体重管理してるし!四十三キロずっとキープしてるもん!」


「誰も体重まで暴露しろとは言ってない!」


「圭ちゃんが重いとか言うのが悪いんじゃん!」


「あー、そうだなー。俺が悪かったー、すまんすまんー。だから下りてくれー」


 俺が棒読みで答えると、朋香が眉間にしわを寄せる。


「反省の色無しだね?それなら……こうしてあげる♡」


『ムニュッ……』


 俺の顔に何か柔らかい物が覆いかぶさり、目の前が真っ暗になる。

 これは初めて味わう感触だ。

 マシュマロみたいにふわふわしていて、眠気を誘うような温かさ。

 そしてこの大きな二つの


 ……グレープフルーツ!?


 俺は自分の顔に何が覆いかぶさっているのか、瞬時に察した。

 間違いなく、朋香のDカップおっぱいだ。


「おい!朋香!どういうつもりだ!」


「あれ?声を出すまで随分と時間が掛かったね?もしかして気持ちよくて昇天してた?」


「んなわけあるか!早く離せ!」


「やーだ!私を怒らせた罰だからね!」


 朋香は俺の首の裏に両腕を巻いて固定すると、更に胸を押しつけてきた。

 やばい、苦しい。息が出来ない。だけど、幸せ。

 このままなら死んでもいいかも。

 俺の意識が飛びそうになった瞬間、部屋のドアが開いて電気が付く。


「ちょっと、圭太?さっきからガタガタうるさいよ?今何時だと思って――」


 最悪のタイミングで母さんが入ってきた。

 この状況をどういう言い訳すればいい。


「あ、どうも。圭ちゃんのお母さん。お邪魔してます」


 いやいや、それで通用すると思ってるのか。

 お前は俺に自慢のDカップ押しつけたままなんだぞ。


「あっ!もしかして朋香ちゃん?久しぶりね!テレビで見るのと生で見るのとじゃ、やっぱり可愛さが違うわね!」


「そう言われると照れちゃいますよ〜」


 何故か知らないが通用した。

 やはり母さんも朋香に負けず劣らずのバカだった。


「……もしかして、私お邪魔だったかしら?」


「大丈夫ですよ!夜はまだまだこれからですから!」


 全くもって大丈夫じゃない。

 母さん、早く朋香を止めてくれ。頼む。


「それもそうよね!……あっ!ちょっと待ってて!今良い物持ってきてあげる!」


 母さんは駆け足で寝室へと戻っていく。

 そして何かの箱を持ってきて朋香に差し出した。


「これは……なんですか?」


「コンドームよ?ちゃんと避妊対策はしないとね?」


「さっすが!圭ちゃんのお母さん!分かってますね!」


「でしょ!全部使って良いわよ!それじゃあ二人とも楽しんでね!……圭太、朋香ちゃんのことちゃんとイかせてあげるのよ♡」


 母さんはそう言い残して満足そうに戻る。

 あのクソババア、コンドームなんて何処に隠し持ってやがったんだ。


「さてと、圭ちゃん始めよっか♡」


「……マジでやるの?」


「だって圭ちゃんのお母さんのお墨付きだよ?ヤラないわけにはいかないでしょ?」


「……お前は怖くないの?」


「あ、十個もあるじゃん!圭ちゃんがもし早漏でも十分間に合うね!」


「朋香!俺の話を聞いてくれ!」


 俺が声を荒らげると朋香の表情が少し強ばる。


「……なに?」


「怖くないのかって聞いているんだ」


「何が怖いの?」


 朋香は首を傾げる。


「セックスすることに決まっているだろ」


「何に対して怖がる必要があるの?大好きな人とセックスして一つになれるんだよ?私は幸せな気持ちしかないよ?ずっと、ずーっと楽しみに待っていたことだから。逆に圭ちゃんはどう思ってるの?」


「俺は怖いよ。キスとかならまだしもセックスなんて。万が一のことがあった時に俺はどう責任を取れば良いんだよ。まだ俺にはお前を養えるだけの力は持っていない。俺が二十歳って言ったのはそういうことだ」


 自分でも根性無しと思えるほどの答えだった。

 これだけ俺のことを考えてくれている朋香の気持ちをすんなりと受け入れられない自分が惨めで恥ずかしい。


「圭ちゃんは私のこと大好きなんでしょ?セックスしたいんでしょ?」


「そりゃ大好きに決まってんだろ。だからこそ自分が満足する形でしたいんだ」


「もしかしてだけど、圭ちゃんはセックス=子作りって考えてない?」


「半分くらいはそうだけど?何か間違っているか?」


「だからだよ、その考え自体がおかしいんだよ。セックスはしたい時にするものだよ。子作りのためだけじゃないんだよ?」


「でも、もし……妊娠したらどうするんだよ」


「そのためにコンドームがあるんじゃん?……それに私は圭ちゃんの子供なら産む覚悟は出来てるよ♡」


「覚悟があるって言われてもな……」


「ねぇ、圭ちゃん?もう少し自分に正直になっても良いと思うよ?」


 朋香は俺の手を掴んでおっぱいを触らせる。

 驚いた俺は思わず揉んでしまった。

 朋香の口から「あんっ……♡」と甘い声が漏れる。


「す、すまん!」


「ううん、大丈夫。初めて、圭ちゃんにおっぱい揉まれちゃった……私もう我慢できない……!」


「ちょ、とも――」


 興奮した朋香は俺にキスをして口の中に舌を入れてきた。

 突然の出来事に俺は抗えず、互いの舌が絡み合う。


「……圭ちゃんどーう?これが大人のキスだよ?興奮しちゃったでしょ♡」


 唇から垂れる唾液を舌でペロリと舐めながら朋香はささやく。


「……そうだな」


「私とこれ以上のことしたくなったでしょ?今なら特別に……きゃあぁぁぁぁぁ!」


 俺は朋香を力尽くで押し倒し、お姫様抱っこでベッドまで運んだ。

 そして今度は俺が馬乗りになる。遂に俺の理性が壊れた瞬間だった。


「け、圭ちゃん……?か、顔が怖いよ……?」


「そうか?」


「う、うん……」


「安心しろ。気持ち良くしてやるから」


「え?それって――」


 次は俺の番だ。朋香の唇を塞ぎ、口の中に舌を入れる。

 濃厚なキスの中で俺が朋香の胸を揉むと、微かに喘ぎ声が漏れた。


「どうだ?朋香?」


「……ふへへっ……もう……しゃいこう……けいちゃんだいちゅき♡」


 完全に呂律が回らなくなった朋香は頬を赤くして涙目になりながら半分イキかけていた。


「どうした?もう限界か?」


「まだまだ……これから……早くセックスしよ……?」


 着ていた服を全て脱ぎ捨てた朋香は俺に抱きついて甘い声で誘惑する。


「後悔しないんだな?」


「しないから……早くしよ♡」


「分かった」


「うん♡」

 

 俺も着ていた服を全て脱ぎ捨てて朋香にコンドームを付けて貰う。


「じゃあ、始めるぞ」


「いつでも来ていいよ♡」


 こうして俺達は初めてセックスをした。

 ベッドが揺れる度に朋香の喘ぎ声が部屋全体に響き渡る。

 母さん達に聞こえていないかなど考えている余裕も暇も無い。

 ただただ気持ちいい。大好きな朋香とのセックスを俺は思う存分に堪能した。


「朋香、気持ち良かったか?」


「……うん……けいちゃんの……おっきくてすごかった♡」

 

「……まだ、残ってるけどヤるか?」


「いいよ。わたし……もっと……けいちゃんのでイキたい♡」


 もう一度、朋香にコンドームを付けて貰い準備完了。


「我慢しないでいっぱい声出していいからな」


「うん……せっきょくてきなけいちゃん……だいすき♡」


「俺も朋香が大好きだ!」


「んんんっ……あんっ……はぁんっ♡」


 そこにはあれだけセックスをすることを躊躇っていた男の姿は無い。

 俺は本能の赴くままに女性の身体を痛めつける獣と化した。

 まんまと朋香にしてやられたのだ。流れとは恐ろしいものだと俺は思った。

 



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