第5話 鳴海朋香のサプライズとは
翌朝、俺は自分の身体の上に重みを感じて目が覚めた。
重みを感じる方へ俺が目を向けると、
「あ、起きた、圭ちゃんおっはー」
「……おい、これはどういうことだ」
「圭ちゃんおっはー」
「うるさい。いいからこの状況について早く説明しろ、朋香」
「圭ちゃんおっはー」
俺の上に乗っていたのはどういうことか朋香だった。
どうして俺の部屋にいるんだ。なぜ下着姿でいるんだ。
そして、さっきから「圭ちゃんおっはー」しか言わないのはあれか。
遂に朋香の脳みそが完全に破損したのか。そうだとしたら、めでたいな。今日は赤飯だ。
「……とりあえず、服着ろよ」
「圭ちゃんおっはー」
もしかして、俺がおはようって返さなかったら永遠に言っているつもりか。
なんて面倒くさい女なんだ。
ひとまず、もう一度だけ確認してみるか。
「おい、降りろ、ブス」
「だ、誰がブスだ!こちとら次世代のカリスマ高校生アイドルだぞ!」
「残念ながら「元」だけどな。ご愁傷さまでーす」
「きぃぃぃぃぃ!腹立つぅぅぅぅぅぅ!」
朋香は頬を膨らませ顔を真っ赤にして俺を睨む。
「それで俺がおはようを言うまで他のことは喋らないっていう作戦はどうなったんだ?」
「……あっ、すっかり忘れてた。えへっ☆」
「それでお前はなぜ俺の部屋にいる」
「玉玉通りかかったからだよ。それで心優しい朋香様が圭ちゃんにモーニングコールしてあげようと思ったのさ」
「おい、読者にしか分からない言葉の使い方をするのはやめろ」
「えー?なんのことかな?私さっぱり分からないなー」
俺の股間をチラチラと見ながら朋香はとぼけたフリをする。
呆れ果てた俺はため息をついて左手で顔を隠した。
「朝から下ネタぶち込むのは勘弁してくれよ……」
「たまたまと玉玉、かけてみたんだけど面白くない!?最高傑作なんだけど!わははははっ!」
「そんなことどうでもいいから。とっとと服着てくれ」
「嫌だよ、そもそも私がどうして下着姿で圭ちゃんの上に股がっていたと思う?」
「そんなの知らねぇよ。お前が変態だからだろ?」
朋香の下着姿を見ても俺が動揺しないのはグラビア特集で散々見てきたからだ。
確かにエロいし可愛いとは思う。特に細いくびれとすらっとした美脚は流石と言ったところだ。そこに淡いブルーのブラジャーの奥でご自慢のDカップがどーんと構えている。
しかし、そこまで騒ぐ程のことでもないだろう。俺の幼なじみならこれくらい当然だ。
「ぶっぶー!ざんねーん!違いまーす!正解は圭ちゃんとの間にラブリーなベイビーを作るためだよ♡」
そう言って、さりげなくキスをしようとしてくる朋香の頭を鷲掴みにして俺は渾身の力を指先に集中させる。
「そうか。朋香はこれが食らいたかったんだな。どうだ?気持ちいいか?」
「け、圭ちゃん!?痛い!痛いって!いだだだだだっ!痛いです!頭がバカになるぅぅぅぅぅ!」
「心配するな。お前は十分バカだから、これ以上バカになることはない」
「こんな力強く頭握られたら絶対バカになるって!いだだだだだっ!」
「服を着るなら離してやってもいいぞ?」
「絶対に着な……い……でででででっ!もうやめてぇぇぇぇぇ!これ以上はむりぃぃぃぃぃ!やっぱり服着ますぅぅぅぅぅ!」
潔く負けを認めた朋香はワイシャツを羽織る。
「おい、ちゃんとボタンをかけろ」
「え?どうしてさ、この方がエロいじゃん?」
「……まあ、エロいのは確かだな」
朋香は胸元が空いた状態で両腕を胸に押し当てて谷間を強調させる。
絶景ではあるが、残念ながらこれも見飽きているのだ。
「どーう?私の胸で興奮した?したでしょ!?今なら何も言わないからタダで触らせてあげてもいいよ?」
「何も言わないのか?」
「……もちろんだよ?」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
「え……?ちょ、待って、圭ちゃん……!」
俺は躊躇なく朋香の胸を掴んで揉み始めた。
さすがはDカップ。揉みごたえがあるな。
「どうだ?気持ちいいか?」
「き、気持ちいいけど……まさか本当に……触ってくるなんてぇぇぇぇぇ……あんっ♡」
「散々見せつけておいて俺が何もしないと思ったのか?」
「そ、それは……っ、け、圭ちゃん……!そ、そこは…だめぇぇぇぇぇ!……お、おかひくなっひゃう……あひゃん♡」
約十分間、俺は朋香の胸を揉んだ。
朋香が甘い声を出すので俺も思わずエスカレートしてしまった。少し反省だ。
揉んだのはこれが初めてだったがとても満足感があった。これならまた揉んであげてもいいな。
「さてと、俺そろそろ学校行くから早く服着てお前も学校行けよ」
「……ひゃーい。また後でね」
朋香はベッドの上で撃沈していた。
「……って!もう八時過ぎてんじゃねぇかよ!俺、今日は日直なんだよ!」
そんな朋香を置き去りにして俺は急いで学校へと向かった。
この時、朋香の言った「また後でね」という言葉の意味を俺はまだ知らない。
「圭太遅いぞ。五分遅刻だ」
教室に入ると一人の眼鏡野郎がいた。
「マジですまん!
「お前絶対日直ってこと忘れてたろ?」
「そんなことねぇよ!朝ちょっとバタバタしててさ!」
「どうせ朋香ちゃんのライブ映像でも見てたんだろ?朋香ガチ恋オタクさん」
「さすがの俺も朝からライブは見ねぇよ……」
「まあ、なんでもいいけどさ。大体の仕事は俺がもう終わらせちゃったから後はこのプリントを職員室に持っていけば朝の仕事は終わりだ」
「ほんとに萌来は頼りになるな!サンキュー!」
「今日のところはいちご牛乳で勘弁しといてやるよ」
「あざーっす!」
萌来、
何よりこいつは学年一の秀才だ。トレードマークの丸渕の眼鏡が知的さを連想させる。
「そういえば、今日僕らのクラスに転校生が来るらしいぞ?」
「まじ!?男か?女か?」
職員室へ向かう最中にとんでもなく嬉しいニュースが舞い込んできた。
「僕もそこまでは知らないよ。さっき先生に少しだけ聞いただけだから」
「なんだよ、聞いたなら最後まで吐かせればいいのに」
「僕がそんなこと出来るわけないだろ。成績も大事だが、この学校で規律正しく生活することにも意味があるんだ」
「あー、分かった分かった。お前のそういう話は聞き飽きたよ」
萌来はとにかく真面目だ。
どんなことにでも几帳面過ぎて周りからはドン引きされているレベルだ。
「まあ、あと三十分もすれば朝のHRだし。すぐに会えるさ」
「それもそうだな!俺は可愛い女子が良いな!」
そして時は来た。朝のHRの時間だ。
教室の扉が開いて男の先生が入ってくる。
「あー、皆おはよう。実は今日このクラスに転校生が来ます」
その瞬間に教室中に大きなざわつきが生まれた。
転校生が来るともなれば当然の反応だな。
「先生!ちなみに可愛い女子ですか!?」
俺がそう訊ねると先生は、
「まあ落ち着きなさい。すぐそこにいるから。じゃあ入って来なさい」
再び扉が開き、コツンコツンという足音が教室中に響く。
俺はこの時確信した。間違いない、女子だと。
そして俺は伏せていた顔を勢い良く上げた。
「………………………は?」
「今日から一緒に勉強することになった「鳴海朋香」さんです。皆仲良くするように」
制服は違うが、黒板の前には朝一緒にいた朋香の姿があった。
「ま、まじかよ……」
俺の顔が一瞬にして真っ青になる中、教室中がより大きな歓喜の声を上げていた。
ここでようやく理解した、朋香のサプライズとは俺の学校に転校してくることだったのだ。
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