第46話 休みたい

 遊園地へと向かう電車の中で改めて美佳の姿を見てみた。


 黙ってるとお淑やかなお嬢様って感じだ。普段の美佳を知っていたら絶対気づかないだろう。


「涼太、何をそんなにジロジロと見てるんだよ? やっぱ私には似合わないか?」


 美佳は不安そうになっていた。


「悪い、いつもの美佳とあまりにも雰囲気が変わり過ぎててつい見てしまってた。だがよく似合っていると思うぞ」


「そっか、ならよかった。デートは初めてだからな。ここはやっぱ女らしくしてた方がいいのかな? って思って私なりに頑張ってみたんだよ」


 美佳は顔を赤く染めながら答えた。


 何だ? 今日の美佳はどうした?

 姿だけではなく中身まで女の子っぽいぞ? ……いや、女の子なんだから当たり前なんだが普段の美佳と違い過ぎる。しかしこのギャップはなかなかいい。



 そして遊園地へと着いた。


「よーし、涼太。今日は遊ぶぞー!」


 いつもの美佳に戻っていた。まぁこの方が美佳らしくていいのだろう。


「俺も遊園地は久々だな。何から乗るんだ?」


「最初はやっぱジェットコースターだろ! 早く行こう?」


 美佳はまた俺の手を取り引っ張って行く。

 しかし最初からジェットコースターか……俺は今日無事に帰れるだろうか? 凄く不安だ。



「美佳、ちょっと休ませてくれ」


 午前中だけで絶叫系に乗りまくって俺はもう限界が近かった。どこが手加減してるんだろう?


「全く、このぐらいでダウンするなんて。仕方ないなぁ、あそこのベンチで膝枕してやるよ」


 膝枕? 恥ずかしいが俺は休めるならなんでもいい。とにかく休みたい。


「ほらっ、ここに頭乗せて横になりなよ」


 美佳は膝をポンポンっと叩きながら言った。

 俺はお言葉に甘えて美佳の膝の上に頭を乗せ横になった。


「あー、なんか少し楽になってきた」


「私が膝枕してるんだ。当然だ」


「しかし絶叫系だけじゃなく少しは他のやつにしてくれ」


「コーヒーカップとか?」


「全力で回さなければな」


「あれは全力で回してこそ面白いだろ?」


「それだと絶叫系よりキツイだろ……」


「そうかな? じゃあ何がいいんだ?」


「ゆっくり休める観覧車とか?」


「おっ? 狭い密室に誘って何する気かな?」


「何もしねぇーよ!」


「……やっぱり私じゃ魅力ないかな?」


 美佳は落ち込んだ様子だ。


「えっ? いや……そんな事はないと思うぞ! 今日の美佳なんて特に女の子らしくてドキドキしてるぞ」


「へぇ〜、涼太は私でドキドキしてるんだな」


 美佳はニヤニヤしながら俺を見てる。

 やられた! 完全に揶揄われた。今日の見た目が女の子らしいからつい騙されてしまった……


「いや〜やっぱ涼太は揶揄いがいがあって楽しいな! みんなにも教えてあげないとな」


「勘弁して下さい」


「じゃあまた絶叫系に付き合ってもらうぞ?」


 くそっ! こうなったらヤケだ! 倒れるまで付き合ってやるよ!


 こうして午後からも絶叫系に乗りまくる事になった。

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