第34話 よくわかったな

 沙耶香とのデートを終えて俺達は学校の最寄り駅まで帰ってきた。すると見慣れた3人が外にいた。


「お前等、何やってんだ?」


「何って、お兄ちゃん達そろそろ帰ってくるかな? って待ってたんだよ♪」


「わざわざ? 何の為に?」


「えっ? デートの報告楽しみにしてるって言ったじゃん」


 確かに言ってた。だがここで待ってるとは思わないだろ。


「ってか美佳はまだ部活の時間なんじゃないのか? 今日はたまたま早く終わったのか?」


「ん? まだ終わってなかったけどマネージャー勧誘しに行くって言って先に上がらせてもらったんだ。デート報告聞きたくてさぁー。まぁついでだから涼太、マネージャーやってくれよ」


 ってかレギュラーなのにそんな事して大丈夫なのか? しかも勧誘の方はついでなのかよ。


「断る」


「まぁそうだろうな。こっちは他の方法考えるとして、んで? デートどうだったんだ?」


 勧誘はどうやったら諦めてくれるんだろう? 心がタフ過ぎないか?


「どうだったと言われても、普通に水族館を楽しんでたぐらいだぞ?」


「えー? それだけー? 他に何かあるだろ?」


「ねぇーよ!」


「えー? じゃあ沙耶香さんに聞いてみるか」


 沙耶香の方を見たら電話で誰かと話していたみたいだが丁度話終えたみたいで電話を切ったところだった。


「みんな、よかったら私の家に寄っていかないか?」


「沙耶香の家に?」

「あぁ、うちはパン屋をやっていてな。今、親に確認したら少しパンが余っているみたいだからよかったら持って帰って明日の朝にでも食べてくれないか?」


「へー、そういや前、両親が忙しいって言ってたのはパンを作ってたからか」


「あぁ、だから朝なんかは特に忙しいみたいだ。舞達には何のお礼も出来なかったからな。せめてパンを持って帰ってほしいんだ。ついでに行きながら今日の涼太の事でも話そうか」


「そのついではいらなっ、もがっがっ……」


 俺の口は美佳の手によってふさがれてしまった。


「おやおや〜、涼太君その慌てようは何かあったみたいだね〜?」


「子供みたいで可愛らしいかったぞ?」


「沙耶香さん、詳しく聞かせてもらいましょう」


 俺は美佳の手を振り解こうとしたがびくともしない。なんて馬鹿力だ。


「じゃあみんな行こうか?」


「はーい」×3


 3人は元気よく返事をして沙耶香の後を付いていく。俺も観念して後を付いていった。

 みんなに水族館で子供みたいにはしゃいでいたのがバレた。3人は笑いながら可愛いとこあるなと言っている。なんかめっちゃ恥ずかしい……



 そして沙耶香の家に着いたのだが1階で店をやっていて2階に居住スペースがあるみたいだ。お店はもう閉めるみたいで沙耶香の両親は閉店作業をしているみたいだ。そんな中、沙耶香によりお店の中に案内された。沙耶香の両親も俺達に気付きこちらへとやってきたので俺達はあいさつと軽く自己紹介をした。


「いや〜、沙耶香が友達を連れて来たのは初めてだな。それに何やら沙耶香が世話になったみたいだな。残り物で悪いが残ったやつは好きなだけ持って帰ってくれ」


 とんでもない。残っているやつは少ないしこれは繁盛している証拠だ。何より全部美味しそうだ。

 俺達は遠慮なく4人で全部のパンを分けた。


「あっ、すみません。全部取ってしまって。どれも美味しそうでつい」


 俺の言葉に3人も頷いている。


「いやいや、構わないよ。それにそう言って貰える方が商売してる側にとっては嬉しいもんなんだよ」


 沙耶香の両親は優しそうでまともな人に見えた。なのに何故だ? 娘の沙耶香はまともに見えてぶっ飛んでる所がある。やはりあの学校に通うとそうなるのだろうか?


「ところでここの人気なやつって何ですか?」


「うちはカレーパンが人気かな?」


「カレーパンは本当に美味しいぞ。店に出すとすぐ売り切れるほどだ」


 沙耶香の親に続いて沙耶香もそう答えた。

 そんなにか? 食べたくなってきた。


「涼太、食べたくなってきたのか?」


「沙耶香……よくわかったな」


「もぉー! お兄ちゃん食いしん坊なんだから」


 舞の言葉にここにいるみんなが笑いだした。

しかし俺ってそんなにわかりやすいのか? 莉子もそんな事を言ってたよな?


「しかし店に出したらすぐ売り切れならいつ来れば買えるだろうか?」


「ふふっ、涼太そんなに食べたいのか? なら明日の朝に作ってもらって学校に持っていってやろうか?」


「おっ! いいのか? でも大丈夫なのか?」


 俺が質問をするとパン屋なので朝早くには店を開けるみたいでどっちにしてもパンは作るみたいだ。俺が朝寄ってもいいが少しでも早く起きれる自信はない。ここは頼むのが1番良いだろう。


「じゃあカレーパン2個頼む」


「じゃあ私も!」×3


 なんだよ! みんなも食べたかったんじゃないか! それなら笑わなくていいだろ?


 俺達は先にお金を払っとく事にした。沙耶香の友達って事で割引してくれた。しかもずっと割り引いてくれるみたいだ。最初は50%割引でいいと言われたが流石にそれだと商売にならないだろう。なんとか20%割引にしてもらった。値上げ交渉をしたのは初めてだ。まぁその間にこっそり美佳がカレーパンをもう1つ追加していたのは俺は見逃してないぞ?


 それにしてもパンのいい匂いもあり凄くお腹空いたのでここでもらったパンを食べてもいいか聞いて、大丈夫みたいなので1つ食べてみた。


 見ただけで分かっていたがやはり美味しい。学食でもパンは売られていたが流石にパンは市販されているやつだ。比べるまでもなくこっちがいい。

 俺達はこれからここの常連になるだろう。

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