第31話 いつまでいる気だ?

「悪い。待たせたか? 帰りのホームルームが長引いてしまってな」


 俺は教室で沙耶香が来るのを待っていたのだがこっちもホームルームが長引いた為数分しか待っていなかった。

 沙耶香はホームルームが終わって急いで来たみたいだ。


「大丈夫だ。こっちもついさっき終わったばかりだ。というかそんなに急がなくてもよかったのに」


「そうか、それはよかった。待たせるのは悪いと思ってな」


 沙耶香はこういう所は真面目なんだな。


「それでデートは何処にいくんだ?」


「なっ! だからこれはお礼であってデートではない。涼太までそんな事を言うな。変に意識してしまうだろ」


 沙耶香はまた顔が真っ赤になっている。流石は乙女だ。しかしそれなのに泊まりに来た時はよく脱衣ババ抜きに参加できたよな? 何が良くて何が悪いのかよく分からない。でもまぁこれ以上揶揄うのは可哀想だな。


「ところでお前等はいつまでいる気だ?」


 舞は本当は暇だからだろう。しかし美佳と莉子はまだ部活にも行かずにここにいる。


「えっ? 涼太達が何処に行くのか決まるまでだよ。このまま部活に行ったら集中出来なくて怪我でもしたら涼太のせいになるぞ?」


 何でだよ? 俺のせいにするな。

 美佳の言葉に舞と莉子が頷いているが2人は大丈夫だろ? 舞は部活に入ってないし莉子は部活……というか研究会だっけ? 怪我するようなやつじゃない。


「というか男なんだから涼太がデートプランぐらい考えておけよ」


「俺はこの辺の事ほとんど知らないからな。それにデートと言うと沙耶香がどんどん縮こまっていくぞ?」


「あーそれもそうか。ってか沙耶香さんが可愛いからつい言っちゃうんだよ」


 ふむ。まぁそれには俺も賛同だ。普段は可愛いというよりカッコイイって感じだが乙女モードになると可愛くなるそのギャップがまたいい。もしここが共学でみんなその事を知ったらきっとファンクラブが出来てしまうだろう。


「まぁ気持ちは分かるがこれ以上は可哀想だぞ?」


「はーい」


 美佳達は大人しくなったが立ち去る様子はない。そしてようやく落ち着いてきた沙耶香は口を開いた。


「その、何処に行ったら良いのか今日ずっと考えてたんだが思いつかなくてだな。私から誘っておいてすまない」


「いや、気にする事はない。という事で折角ここにいるだ。3人も案を出してくれ」


 3人はそういう事なら任せておけといろいろと案を出してくれた。

 しかし、出てくる案は『豪華なクルージングディナー』等、到底高校生では無理な事ばかりだ。中には『呪われた場所への調査』とかもあり、もう意味が分からない。


 ……まぁ3人に話を振った俺が悪いか。


 そして、ようやくまともな案が出てきた。それは水族館だ。しかも平日の夕方は学生が制服を着て来たら半額に割引してくれるらしい。

 何故、始めの方にこれが出てこないのか聞いたらこの辺では学生デートの定番らしく逆に出てこなかったみたいだ。

 沙耶香の方も一応候補には考えたみたいだ。しかし、やはりデートの定番の場所だと恥ずかしいから止めとこうと思ったみたいなのだが、俺が行ってみたいと言うと即OKしてくれた。俺へのお礼なので俺が行きたい場所ならと了承してくれたのだ。


 遊びに行く場所も決まりようやく美佳と莉子は部活へと行った。舞も2人と一緒に教室を出て帰って行った。


「じゃあ俺達も行くか? 場所分かんないから案内頼むぞ?」


「あぁ、任せておけ」


 沙耶香はいつもの調子を取り戻したみたいだ。こうなるとまた揶揄いたくなるが律儀にお礼をしてもらってる身だ。止めておこう。


 そうして俺と沙耶香は水族館へと行く事になった。

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