第28話 逃げ切ってやる

「いや、しかしよくこれ完食できたよな」


 俺は食べ終わったパフェの器を見て感心していた。


「やっぱお兄ちゃんいたから大丈夫だったね♪」


 舞はそう言うが半分ぐらいは舞1人で食べてた気がするのだが……

 莉子と沙耶香も最後の方はキツそうだったのだが舞だけ食べるペースは全然落ちなかった。いつもご飯食べる時は普通なのに甘い物だけは別腹に入っていくみたいだ。

 しかも次は何食べるか聞いてくる。どんだけ入るんだ? 流石に沙耶香と莉子も無理だと言っている。


 食べ過ぎで動けなかったので暫くの間学食でのんびり会話をして過ごしていた。そんな中、俺はふと思った事を口にした。


「そういえば、気にしてなかったけどこの学校って生徒何人ぐらいいるんだ?」


「えっ? みんな知らないはずだよ?

人数非公開だし調べるのは学則で禁止されてるし」


 ……何でだよ? 非公開にする必要が全くわからん。それにそんな学則何で作ったんだよ?


「何か意味あるのか?」


「細かい事は気にするなっていう学校の方針みたい。だからクラスの人数も結構バラバラみたいだよ? 10人ぐらいだったり60人だったり」


 ……そこまでやるか? やはりこの学校は普通じゃない。しかし、今まで気にしてなかったがそうなると気になってくるのだが俺だけなのか? 聞くんじゃなかった。



 ようやく動けるようになってから、せっかく学校まで来たので美佳の練習でも見に行こうという事になった。


「おぉ、美佳上手いじゃないか」


「それはそうだよ! 美佳は1年で唯一のレギュラーだよ」


「へ〜強豪校の中で1年レギュラーは凄いじゃないか。だからあんなにランニングとかも頑張ってたのか。まぁそれならたまにはランニングぐらい付き合ってやってもいいかな?」


「あれは単なる趣味だから気にしなくていい」


 莉子がすかさず否定をしてきた。余程走りたくないのだろう。それと朝の完全防備について聞いてみると


「ふっ、それに気付くとは涼太もなかなかやるじゃないか」


 やはり予想通りだった。それに莉子が言うには軽い気持ちで美佳のトレーニングに付き合うとたまにではなく、早朝や部活終わり等毎日誘ってくるようになるらしい。毎回断ってもあの性格だ、折れる事はないらしい。

 危ねぇ。莉子助かったよ。

 

 しかし、みんなぶっ飛んではいるが舞は頭が良く何でもこなせる超人だし美佳はバスケ、沙耶香は歌が上手い。まさか莉子も何か隠された才能が? そんな事を考えていると


「安心しろ。私は凡人だ」


 いや、莉子よ。お前、絶対人の心を読めるよな?


「涼太がわかりやすいだけだろ」


 俺の心と会話してないか? というか俺ってそんなに分かりやすいのか?

 むしろ他の人が分かりにくいだけだ。うん、きっとそうだ。俺はそう思う事にした。


 暫く美佳の練習を見ているとどうやら休憩に入るみたいだ。

 美佳も俺達に気付いてこっちに来た。


「おーみんなで見にきたんだな?」


「あぁ、しかし美佳上手いじゃないか。見直したよ」


「おや? 涼太、私に惚れたのか? なんなら今日は私が一緒に寝てやろうか?」


「見直したって言ったんだよ! 惚れたなんて言ってねぇーよ」


「そうか、まぁいいや! ところで涼太、暇ならバスケ部のマネージャーやらない?」


 何でそんな話になる? 切り替え早いし何故俺がマネージャーをしないといけない?


「いや〜男がいた方が力仕事してもらえるなって」


「だからって何で俺なんだよ?」


「男が涼太しかいないからだろ?」


 ……そうだった。俺が昨日、母親に言ったばかりなのに何故俺が忘れている? もしかして俺も段々とおかしくなってきているのか? 疲れてるだけだと信じたいな。


「まぁ悪いが今は部活とかする気はないんだ」


「ちぇー! 仕方ない。毎日勧誘するか」


 いや、頼むから諦めてくれ。


「美佳、お兄ちゃんなら下着見せながらの方が効果あるよ?」


「おぉーその手があったか」


 ねぇーよ! 舞もなんて事を言っている? 美佳なら本気で実行してくるじゃねーか。

 すると莉子が俺の肩に手をポンっと置いた。


「早めに諦めた方が身の為だぞ?」


 くっ! 他人事だと思いやがって。見てろよ? 逃げ切ってやるさ。



 そして美佳は休憩が終わるみたいでまた戻っていった。


「それじゃ俺達もそろそろどこか遊びに行くか? 誰かやりたい事ないのか?」


 俺が3人に聞くと沙耶香が答えた。


「ボーリングとかはどうだろう? 私はやった事ないからやってみたいのもあるが」


 今回はかなりまともだ。こういうのを待ってた気がするよ。


「沙耶香はやった事ないのか? じゃあボーリングするか。……と言ってもこの辺にボーリング場とかあるのか?」


 俺はまだ周辺の事を知らないので舞に聞いたら結構近くにあるみたいなのでボーリングに決定して俺達はボーリング場へと向かった。

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