第19話 悪い気はしない

 時刻は朝の5時になった。

 舞にゲームの特訓をさせられていたが流石に眠い。


「なぁ舞、そろそろ寝ようぜ?」


「そうだね。じゃあ枕取ってくるね」


「何故枕を取ってくる?」


「えっ? だって枕ないと寝にくいでしょ? あっ! もしかしてお兄ちゃん腕枕してくれるの?」


「違う! そういう意味じゃない! 何故一緒に寝る事になってんだ?」


「お兄ちゃん一緒に寝てくれるって言ってたじゃん」


 確かに言ったな。冗談のつもりだったが……まぁそれはいいとして大事な所だけ抜けてないか?


「それはホラー映画を見た時怖くて寝れない時の話だったろ?」


「そうだったかな?」


 舞の頭の中では都合のいいようになってるみたいだ。


「だから今日は自分の部屋で寝なさい」


「ぶーぶー」


「ぶーぶー言ってもダメだ」


「もー! じゃあ昨日買った下着着けてるとこ見せてあげるからいいでしょ?」


「……いや、ダメだ」


「あー! お兄ちゃん今、一瞬考えたでしょ? えっち」


 俺も男だ! 仕方ないだろう?

 しかし今のは俺が悪いのだろうか? だんだん舞が小悪魔に見えてきた。


「分かった。エッチなのは認めよう。だがダメなものはダメだ」


「わー! 認めちゃったよ〜。ケチ〜。……分かったよ。1人寂しく寝ますよ〜」


 舞はしょんぼりしながら部屋を出ようとした。なんか可哀想に見えてきたが甘やかしてはダメだな。


「じゃあおやすみ」


「お兄ちゃんおやすみなさい」


 舞は諦めてくれたみたいでようやく部屋へと戻っていった。

 やれやれ、困った義妹だな。さて、流石に限界だ。寝るとするか。

 俺はベッドに横になるとすぐに眠りについた……がギィーとドアが開く音が聞こえてすぐ目が覚めた。


「よいしょっと」


 この声は舞だ。しかも俺のベッドに入ってきてる。舞のやつ強引な手段をとりやがった。


「舞、何やってんだ?」


「わっ! バレちゃった」


「バレるに決まってるだろ?」


「えへへ、来ちゃった♪」


「まったく、仕方ねーな」


 俺は抵抗を諦める事にした。というか眠くて抵抗する気になれない。


「やったね♪ あっ!お兄ちゃん向こう向いてみて?」


「ん? 何でだよ?」


 疑問に思いながらも俺は舞に背を向けた。


「えいっ!」


 舞は俺を抱き枕みたいに抱きついてきた。


「おっ、おい?」


「わー! やっぱりお兄ちゃん抱き心地いいね〜」


「人を抱き枕にするなよ……」


「嬉しいくせに〜」


 まぁ確かに悪い気はしない……だが背中には柔らかい感触がする。

 そう、俺の背中には舞の胸が完全に当たっている。それに舞に抱きつかれてる為逃げるに逃げれない。そんな中俺はつい背中に神経を集中させてしまう。

 くそっ! 俺は自分が思っていた以上に変態だったのか? と思ってしまった。


「じゃあお兄ちゃんおやすみ〜」


 舞はそんな事とはつゆ知らず、のんきに寝てしまった。

 本当にこのまま寝ないといけないのか? しかしもう眠気は限界だ。

 背中に神経を集中させていたが眠気には勝てずそのまま眠りに落ちていった。



「お兄ちゃん、もうお昼だよ〜」


「ん? おはよ?」


 昼まで寝てた俺は舞に起こされた。

 舞の枕がなくなっている。いつの間にか起きていたみたいだ。


「もう、寝惚けてないでお昼ご飯出来てるよ?」


「ん? すぐ行くよ……」


「とか言ってまた寝てるじゃん〜」


 舞はまた眠りにつきそうな俺を揺さぶりながら起こしにきた。


「分かった。起きるから止めてくれ」


「ちゃんと起きたら止めてあげる♪」


 俺が身体を起こすまで止めない気だ。仕方ない起きるか。


「ほら! ちゃんと起きたぞ?」


「偉い偉い♪ じゃあご飯出来てるよ」


「あぁ、分かってる。しかし舞はいつ起きたんだ?」


「私もさっきだよ♪ あっ!お兄ちゃんの寝顔って可愛いね」


「なっ?」


 俺は顔が真っ赤になったのが分かった。


「お兄ちゃんテレてる〜♪」


「もう朝から揶揄わないでくれ」


「だからもうお昼だよ? まだ寝惚けてるの?」


 ……そうだった。まぁいい、ご飯食べるか。

 俺と舞はリビングへと向かった。


「あら? やっと起きたのね?」


 母親が食卓にご飯を並べている所だった。


「舞と朝までゲームやってたからな」


「あらあら、それで一緒に寝てたのね」


 ……母親に見られていたみたいだ。


「うん、仲良く一緒に寝たんだよ〜♪」


 ……違う。舞が無理矢理ベッドに入ってきたんだろ? しかし一緒に寝たのは事実だから言い訳出来ないな。母親はどうやら朝ご飯をどうするかで呼びに来たみたいだが仲良く寝てたから起こすのを止めたらしい。親として大丈夫だろうか? まぁこんな親だ。気にしても仕方ない。昼ご飯食べるか。


「そうそう、お兄ちゃん今日美佳と莉子と沙耶香さん泊まりにくるからね」


 ご飯を食べていると舞がいきなり言い出した。


「3人が? ってか沙耶香も来るんだな?」


「うん、さっき美佳から連絡あってお泊まり会しようってなったから沙耶香さんも誘ったの」


「そうか、でも美佳は部活あるんじゃないのか?」


「うん、明日も部活って言ってたからそんなに遅くまで起きていないと思うよ?」


 それは助かった。また朝方まで付き合わされるのかと思ったよ。


「んでいつ来るんだ?」


「夜ご飯前だよ。美佳は部活終わりで、莉子は録画してたの観てからで、沙耶香さんは2人に合わせてくるって」


「そうか。じゃあ夜はうちで食べるんだな?」


「うん、お母さんに言ったらぜひうちで食べるようにって」


「そうなんだ?」


 俺が母親に聞いてみると


「そりゃ涼太がお世話になってるんだからちゃんとおもてなししないとね」


 だそうだ。すでに母親と舞は夕飯何にしようか相談し始めている。

 今日の夜は騒がしくなりそうだな。

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