第17話 大丈夫なやつ?

「お兄ちゃん、お待たせ〜♪」


 俺が下着屋を出てから15分ぐらいしてやっと舞が出て来た。買う物は決まったとはいえサイズを測ったりといろいろ時間が掛かるのは仕方ない。


「店員さんに測ってもらったらやっぱり大きくなってたからまた何枚か買いに来ないといけないよ〜」


 そう言いながら舞は自分の胸を揉む仕草をした。

 つい俺はその仕草を凝視してしまったら舞に気付かれた。


「あ〜! お兄ちゃんのえっち」


 舞は照れながら両腕で胸を隠してしまった。

 しまった……というか今のは恥ずかしかったんだな。舞の恥ずかしさの基準が分からない。


「いや、すまない……」


 今のは仕方ないと思うのだが俺は素直に謝る事にした。


「もー! バツとしてまた買いに来た時選んでもらうからね」


 何故そうなる? 俺は今回限りだと思っていたのに。またこの中に入らなくてはいけないのか?


「また俺が選ばなくてはいけないのか?」


「うん。これはバツだからね」


「しかし今更だが下着買いに行くなら美佳や莉子とか女の子同士の方がいいんじゃないか?」


「お兄ちゃんだからいいの。それにお兄ちゃんが選んでくれた方が今回みたいに自分では選ばないのだと新鮮さを感じていいなって思ったんだもん」


 なるほど! 何故か俺は納得してしまった。俺もおかしくなってきたのか?

 しかし今回のはたまたま間違えただけなのに舞にとってはそれが良かったみたいだ。


「まぁ……それなら選んでやってもいいぞ」


「言質取ったからね♪」


「くっ! 何か負けた気分だよ。しかし今度じゃなく今選んでもいいぞ?」


 俺は抵抗を諦めてヤケクソ気味に答えた。


「今日はもうそんなにお金持ってないよ……」


「それもそうか。俺もそんな持ってなかったの忘れてた」


「だからまた今度ね♪」


 こうして俺はまた舞の下着を選ぶという約束をしてしまったのである。


 そしてまだ時間もあったのでもう少し商業施設の中を見て回る事にした。

 すると荷物を沢山持っている人が集まっているのを見つけた。


「何かやってるのか?」


「行ってみる?」


「そうだな。気になるし」


 とりあえず何をやっているのか見に行く事にした。


「えっと、謎解きイベントだって」


「謎解き? ここでやってるのか? しかしあの荷物の多さはなんだろな?」


「あっ! あそこに説明書いてるみたいだよ」


「どれどれ……ここは受付だけで場所は違うみたいだな。そんな事あるのか?」


「私もやった事ないから分からないよ」


「そうだな。えっと……必ず食料、寝袋持参。生命の危機的状態になる前に必ずSOSボタンを押して下さい。スタッフが助けに行きます……だと?」


 ……えっ? これ大丈夫なやつ?

 謎解きで生命の危機的状態ってなるの?


「わー! なんか楽しそうだね♪」


 舞よ、これを見て楽しそうと言えるお前はやっぱ凄いよ。


「おや? 君達も参加するのかな?」


 この謎解きイベントに参加する人が話しかけてきた。

 ん? 見た事ある人だな? と思ったらうちの学校の校長だった。


「えっ? 校長先生この謎解きイベント参加するんですか?」


「あぁ、先週も参加したんだが土日ではクリア出来なくてね。今回は1週間分の食料を持ってリベンジしに来たのだよ。君達も参加するならこれぐらいは持ってた方がいい」


 ……いや、1週間分の食料って来週の学校はどうするの? サボっていいと言ってるようなもんだぞ? ってか校長は来週学校来ないの?


 もうツッコミどころ満載だった。

 とりあえず1番気になる所を聞いてみよう。


「あの、俺達はただ何があるのか見に来ただけで参加はしないんですが……このイベント、生命の危機とかありますが大丈夫なんですか?」


「何だ? 参加しないのかい? まぁそれはこの謎解きイベントを甘く見て食料も持たずに挑んだらそうなるかもね」


「そんな過酷なんですか? どこでやるんですか?」


「それはだね……おっと! 詳しい内容は話たらいけないルールだった。気になるなら君達も参加してみるといい」


 いや、しないよ……というか校長がそんな危ない事に生徒を誘うんじゃない。


「お兄ちゃん、どうする? 参加してみる?」


 舞よ、何故参加しようとする気になれる? くそっ! 何か穏便に済ませる方法はないのか?

 俺はもう一度イベントの説明を見てみた。よく見ると参加費3万円と書いてある。……高くね? いや、これだ!


「あの、俺達には参加費の3万円は無理ですので諦めます」


「わ〜! そんなにするんだね〜」


「そうだったね。高校生の君達にはこの参加費は厳しいか……そうだ! 君達は我が学校の生徒であり親友の子だ。参加費は私が出してあげよう」


 何故そこまでして参加させたがる?

 むしろあなたは止める側では?


「いや、流石に悪いのでお断りさせていただきます」


「そうか。残念だよ」


 校長はガッカリしている。もしかして1人での参加は寂しかったのだろうか?


 そうこうしている間にイベントの集合時間が来たみたいで案内の人が参加の人を集めている。


「おっと! 集合時間みたいだ。どちらにせよ君達には食料を買いに行く時間がなかったみたいだね。残念だが私1人で頑張ってくるよ」


「あの、無理はしないようにして下さいね」


「校長先生、頑張って下さい♪」


「あぁ、必ずクリアしてみせるよ」


 そうして校長は他のイベント参加者と一緒に案内人の後を付いて行った。


「俺達はそろそろ帰るか?」


「そうだね♪ お腹も空いてきたし」


 そして俺達は家に帰る事にした。

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