第15話 恥ずかしくないのか?

 放課後デートで商業施設へとやって来た俺達はまず映画館のあるエリアに向かった。

 

「お兄ちゃんって映画よく観に行くの?」


 舞がふと疑問に思ったのか質問をしてきた。


「そうだな。TVで観るより映画で観た方が迫力があって好きだからな。観に行く方だとは思うぞ」


「そうなんだ♪ じゃあ観に行く時は私も誘ってね?」


「いいけど、ホラー系でも大丈夫か?」


「えーー? 怖くて夜1人で寝れなくなっちゃうよ……」


「ならその時は一緒に寝てやるぞ?」


「本当? やったー♪ なら安心して観に行けるね♪」


 あれ? 冗談のつもりだったのに本気にしちゃった? ……どうしよう?

 舞には冗談が通じないみたいでホラー系は止めといた方がよさそうだ。


 そして映画館があるエリアへと到着した。見た感じで俺が住んでいた所の映画館と比べると大きいのがわかる。かなりの人数が入れるのだろう。これは観に来るのが楽しみだ。

 今日は観る予定では無かった為場所の確認だけして中には入らなかった。


「中入らなくていいの?」


「あぁ、入るとポップコーン食べたくなるだろ?」


「やっぱりお兄ちゃん食いしん坊だね♪」


 ……やっぱりってそんなに俺は食いしん坊なのだろうか?


「場所も確認できたし他の店見て回ろうか。何か行きたい店あるか?」


「あっ! 私、下着屋さん行きたいな。最近ブラのサイズ合ってない気がして」


「……そうか。分かった。じゃあ俺は外で待っとくな」


「えっ? お兄ちゃん選んでくれないの?」


 舞は恥じらいもなく答えた。

 そういえば舞は兄妹は一緒にお風呂に入るものだと思っていたようでその時も恥ずかしがる様子はなく脱ぎそうになったのを思い出した。


「いや、俺が下着選ぶって舞は恥ずかしくないのか?」


「えっ? お兄ちゃんだし恥ずかしくないよ? でも他の男の人には恥ずかしくてこんな事頼めないよ」


 舞にとって兄とは何だろう? 一応信用されてるって事なのか?


「それに今日はデートとして来てるんだから選んでくれてもいいじゃん」


 デートだから? そういえば男の人が女の人に下着をプレゼントすると言う話を聞いた事もある。都市伝説だとばかり思っていたが現実だとしたらデートで下着を選ぶ事も当たり前だというのか? デート恐るべし。


「なるほど、デートとしては当たり前の事なんだな?」


「うん、そうだよ〜♪」


「一応、相談してみてもいいか?」


「誰に相談するの?」


 ……確かに。美佳は部活だろう。莉子も部活だろうが電話には出れるとは思うがこの2人はからかう事もある為ダメだ。親は……言える訳がない。なら沙耶香だ。


「ちょっと沙耶香に電話で聞いてみる」


「うん、分かった」


 そして俺は沙耶香に電話を掛けた。


「もしもし、涼太か? どうしたんだ?」


「もしもし、沙耶香、急に掛けて悪かったな。今大丈夫か? 聞きたい事があるんだが?」


「あぁ、大丈夫だぞ」


「今、舞とデートとして商業施設に来てるんだが」


「待て! お前は義妹とデートをしてるのか?」


「あぁ、舞が莉子に占いで俺とデートすると良い事があるとかでな。俺もデートと呼べるのかは分からない」


「なるほど。占いなら仕方ないな。それでどうしたんだ?」


「舞が下着が欲しいみたいなんだが今日はデートとして来てるから俺に選んでくれって言うんだよ。やっぱデートとして来てるなら選んでやるべきか?」


「しっ、下着っ? ……いや、そうだな。デートとして来てるのならちゃんと選んでやるべきだ」


「そうか。やはりそれが当たり前なんだな。分かった、ありがとう」


「役に立てたかは分からないが、相談事があればいつでも乗るぞ」


「あぁ、ありがとう。じゃあまたな」


「あぁ、それじゃあな」


 そうか。やはりデートでは当たり前だったのか。


「沙耶香さん、何て?」


「デートとして来てるなら選んでやるべきだって」


「ほらね♪ じゃあ早速行こうよ」


 そうして俺は舞に繋いだ手を引っ張られながら下着屋へと向かうのだった。

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