第9話 もう友達だ

 カラオケ店に着き受付を済ませ個室へと入る。


「よーし、ジャンケンして順番決めようぜ」


 美佳はもうテンション上がっていた。

 そしてジャンケンの結果、舞が1番になった。


「私からだね〜♪」


 そう言うと舞は曲を入れて歌いだした。歌っているのは洋楽みたいだ。

 歌詞が読めない……だが歌が上手いのは分かる。


 次は莉子の番だ。歌っているのは俺も好きなアニメの曲だった。なんか嬉しくなる。


 その次は美佳、歌っているのは演歌だった。しかもかなり上手い。

 演歌をまともに聴くのは初めてだがなかなかいいと思ってしまう程だ。


 次は沙耶香の番なのだがまだ曲が決まらないみたいだ。


「すまない……何を歌っていいのかわからなくて。先に涼太が歌ってくれ」


「そんなに悩まなくても好きなのでいいんだぞ? みんなそうしてるし」


 俺がそう言うと舞達も頷いた。


「そうなのか? 分かった。ありがとう」


 歌いたいのはあったのだろう。すぐに曲を入れた。

 流れてきた曲は最近CMで流れてる有名歌手の新曲だった。この新曲は俺もいいなと思っていたやつだ。


 沙耶香が歌いだす。

 あまりの美声に俺達は驚いた。

 ヤバイぐらい上手いな……俺この後歌わなくてはいけないのか?

 沙耶香が歌い終わると自然とみんなで拍手をした。それだけ凄かったのだ。


「沙耶香凄く上手いじゃないか。プロとか目指してるのか?」


「プ……プロとか私には無理だ」


 沙耶香は顔が真っ赤になりながら答えた。


「えー、そうなんですか? 私達凄く感動しました」


 舞達も沙耶香を褒める。沙耶香は照れて言葉が出なくなったみたいだ。

 次は俺の番だ。中学の時よく聴いた曲を入れて歌った。みんなから懐かしいな〜と言う声が聞こえる。

 そこからも順番で歌っていった。

 しばらくして沙耶香が話しかけてきた。


「さっき助けて貰ったお礼に飲み物でもと思うのだが何がいいか?」


「ん? 気にしなくてもいいよ。そんなに役にたってないし」


「いや、そういうわけにはいかない」


「じゃあお言葉に甘えていただこうかな。沙耶香と同じのでいいよ」


「分かった。ちょっと行ってくる」


 そう言うと沙耶香は個室を出て飲み物を買いにいった。

 すぐに戻ってくると


「これでよかったか?」


 渡されたのはコーヒーだった。


「ありがとう。しかし俺も着いて行くべきだったな。なんかパシリみたいな事させて悪かった」


「気にするな。私が言い出した事だしすぐそこだったからな」


 俺達がコーヒーを飲んでると舞達も喉が渇いたみたいで買いにいった。

 戻ってきて手に持ってる物で驚いた。

 美佳と莉子はおしるこ、舞はコーンスープだった。

 いや、確かに美味いだろうがカラオケ中に飲むものか?

 沙耶香はそれを見て


「しまった。カラオケ中ではそれを飲む物だったのか」


「待て! あの3人は特別だ。参考にするな」


「そうなのか? しかしお前達4人は仲がいいな。涼太達は転校してきたばかりだろう?」


「ん? あぁ転校してきたのは俺だけだよ。つい先日親同士が再婚してな。

だから舞は義理の妹になる。美佳と莉子は舞とはすでに友達だったみたいだから」


「そうだったのか。しかし涼太は人付き合いが上手いんだな。私はそういうのは苦手だから……」


「何言ってんだよ。今、俺達とは普通に話せてるじゃないか。もう友達だと思ってるぞ。先輩に向かって友達って言っていいのだろうか? とは思うけど」


「と……友達。いいのだろうか? 私なんかと」


「というか、もう舞達もそう思ってると思うぞ?」


 3人は俺達の会話を聞いていたようだ。


「そうですよ。私達もっと沙耶香さんと仲良くなりたいですしまた遊びに行きましょう?」


 美佳がそう言うと沙耶香は嬉しそうに返事をした。


「あぁ、ありがとう」


「しかし沙耶香、今俺達と話してる感じでクラスの人に話しかければいいんじゃないか? 怖いってイメージないしみんな勘違いだったと思ってくれるはずだぞ?」


「そうだろうか? 自信はないな」


「大丈夫だって。みんな沙耶香の可愛さ分かってくれるって」


「かっ……可愛いだと?」


沙耶香は顔が真っ赤になった。


「あーお兄ちゃんが沙耶香さん口説いてる」


 舞がからかうように言ってきた。


「えっ? ちっ……違う。そんなつもりは」


 俺があたふたしてる姿をみてみんな笑い出した。


「いや、ありがとう。私なりに頑張ってみるよ」


 落ち着いてきた沙耶香はそう答えた。


「私達も何かあれば相談とか乗りますよ。友達ですから」


 美佳がそう言うと舞と莉子も頷く。


「ありがとう。頼りにさせてもらうよ」


 舞達も協力してくれるからなんとかなるだろう。

 その後俺達は時間まで歌いまくった。



 店を出て帰り際に俺達と沙耶香は連絡先を交換した。

 そして楽しかったと軽く雑談をしてから解散した。

 舞と話ながら帰っていると


「沙耶香さん可愛いかったねー。お兄ちゃん沙耶香さんみたいな人がタイプなの?」


 急に何を言ってくるんだ。


「いや、自分でもタイプとかわからん」


「そうなんだ? 私も沙耶香さんみたいに可愛くなりたいな」


 いや、舞は舞で可愛いと思う。

 義妹だし言わないがな。


 そして家に帰り着き夕飯やお風呂を済ませて部屋に戻りベッドに横になる。

 久々カラオケに行って結構スッキリしている。

 またいろいろ考えてしまったらカラオケ行こうかな?

 そんな事を考えながら眠りについた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る