第8話 ヤバイ……

 体育の授業を終え更衣室へ戻ると沙耶香の姿はなかった。次の授業は出るのだろう。

 まぁ全部サボるくらいなら最初から学校きてないか。しかし進級など大丈夫なのだろうか?


「ん? そういえば名前しか聞いてないな」


 学年を聞いていない事に気づいた。

 普通に話してたけど先輩だとしたら大丈夫だったのだろうか?


「まぁ次も会うとは限らないし……もし会えば聞けばいいか。しかし雰囲気は少し怖い感じはあったが可愛かったな」


 沙耶香の事を思い出しながらまた会えるのを期待している自分がいた。

 いかん、早く着替えないと次の授業に遅れてしまう。

 急いで着替えて教室に戻った。そして午前の授業が終え昼休みになった。


「しかし体育の時の涼太は面白かったな〜。これは体育祭も楽しみだ」


 弁当を食べ終えた美佳は思い出し笑いをしてた。

 その隣でまだ弁当を食べてる莉子はうんうんと頷いていた。


「美佳はバスケ部だからまだなんとかできただろうがこっちは素人だ……マジで地獄の時間だったぞ……」


「お兄ちゃんファイト〜♪」


「舞……ならお前もやってみたらわかるぞ?」


「私には無理だよ〜」


 俺だって無理だよ……



 そうして昼休みも終え午後の授業も眠りそうになりながらもなんとか耐えて乗り切った。


「あ〜終わった〜。舞ー帰るぞ〜」


「うん」


 舞も帰る支度をして返事をした。

 そこへ美佳と莉子がやってきた。


「なぁー私達、今日部活休みだからカラオケでも行かない?」


「そうなんだー♪勿論行くよ♪お兄ちゃんも行くよね?」


 舞はウキウキしながら俺の方を向いた。

 カラオケか……こっちに来ていろいろ考えてばかりだ。大声だすのもいいかもな。


「まぁカラオケ久しぶりだし、行くか」


「やった〜♪じゃあ早速出発だね♪」


 舞は余程カラオケが好きなのだろうか?

 まだまだ知らない事多いな。


「お兄ちゃん、早く〜」


「はいはい、わかったよ」


 そうして俺達はカラオケに向かう事になった。



「ん?」


 カラオケに向かっていると美佳がいきなり立ち止まった。


「どうしたんだ?」


「いや、あそこ、なんかうちの学校の人が絡まれてる?」


 そう言うと美佳は指を差した。

 その先を見ると確かにうちの学校の制服を着た子が男の人2人といた。

 様子もなんだかおかしい。


「あれ?」


 よく見ると絡まれてる子は沙耶香だった。


「なんだ? 涼太の知り合いか? とにかく助けないと」


 美佳が駆け寄ろうとした。


「待て、危ないから俺1人で行く。なんかあったら人を呼んでくれ」


「あっ……あぁ、分かった気をつけろよ?」


「お兄ちゃん、大丈夫なの?」


 舞は心配そうに俺の方を見てる。


「いや、わかんないが見て見ぬふりはできないだろ? じゃあ行ってくる」


 そう言うと俺は沙耶香のもとへ向かった。



「おい、あんた達何してんだ?」


 俺が声をかけると男達はこっちを振り向いた。


「あぁ? 何だお前?」


 ヤバイ……この2人めちゃくちゃ強そうだ……


「……涼太?」


 沙耶香は俺だと気づいてくれた。

 しかし、いざ出てみたもののどうしよう? 喧嘩になったら絶対負けるぞ?


「この人が私の彼氏。だからもう付き纏わないでくれない?」


 沙耶香は俺の側に寄ると俺と腕を組み男達に向かってそう言った。

 あーそう言う事か……しかしそれで信じてくれる人はいないと思うが……


「……本当なのか?」


 男の1人が俺に向かって聞いてきた。


「あぁ、俺が沙耶香の彼氏だ」


 一応話に乗っておこう。

 するとその男は泣きだした。


「くそー、本気で好きだったのに……」


 信じちゃったよ……

 普通証拠をみせろ? とか言うのでは? 見た目は怖いが素直でいい奴だっんたじゃ?


「悪かったな、もう近づかないようにさせるよ」


 もう1人の男がそう言うと泣いてる男を連れて去っていった。


「助かったよ。ありがとう。……あいつ最近ずっと付き纏っててさ」


 男達の姿が見えなくなると沙耶香がお礼を言ってきた。


「でもよかったのか? 結構いい奴みたいだったぞ?」


「いいんだよ。タイプじゃないし」


 なるほど。まぁ困ってたみたいだし何事もなくてよかった。


「お兄ちゃん〜、どうなってるの?」


 俺は駆け寄ってきた舞達に今の出来事を説明をした。


「そっか〜。でもお兄ちゃんが無事でよかったよ」


「いや〜涼太もなかなかやるじゃねーか」


「見直したぞ」


 3人の中で俺の株が上がったみたいだ。

 正直ビビっていたが黙っておこう。


「あっ、そういや沙耶香って何年なんだ? 先輩だったりする?」


 俺が聞くと沙耶香は答えた


「私は2年だが?」


「あっ、先輩でした。普通に話してしまってました。ごめんなさい」


「いや、敬語とかはいいよ。今更だし。それに気を遣われてるようで好きじゃないから」


「なら遠慮なく」


「あの〜私達、今からカラオケ行くんですが、沙耶香さんも一緒にどうですか?」


 いきなり舞が沙耶香をカラオケに誘った。


「えっ?」×2


 俺と沙耶香は目が点になった。


「沙耶香って呼んでたしお兄ちゃんの知り合いなんでしょ? それに人数多い方が楽しいしどうかな?」


「私達は人数多い方が盛り上がるからOKだよ」


 舞の案に美佳と莉子が乗った。


「いや、でも知り合いと言っても今日学校でたまたま顔を合わせたぐらいだぞ?」


「そうなの? じゃあカラオケで仲良くなれるね〜♪」


 舞の中で行く事が決定されていた。


「えっと……あの……私も行っていいのか?」


 沙耶香は急にモジモジしながら聞いてきた。

 なんか可愛い……じゃなくてさっきまでの威圧的なオーラはどこにいった?


「みんないいって言うし、俺も構わないが……急にどうした?」


「えっ? ……いや、私こんな見た目だから誰も近寄ってこないし……カラオケなんて誘われたの初めてだし」


 それでモジモジしてるのか……めっちゃ乙女やん。

 その姿見せれば友達などすぐ出来たのでは? 現に舞達は可愛いと騒いでる。

 沙耶香はテレながらも


「すまない。自己紹介がまだだったな」


 そう言って沙耶香と舞達はそれぞれ自己紹介をした。

 こうしてカラオケは5人で行く事になった。

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