第6話 さらなる不安……

「お兄ちゃん、おはよー♪」


 朝になり舞が起こしに来てくれた。

 もう朝か……昨日の疲れかまだ眠い。


「う〜ん……あと1時間……」


「分かった〜♪」


 舞はリビングへと戻っていった。

 あれ? 戻っていった? そんなに余裕あるのか?


 俺はスマホで時間を確認した。

 焦るような時間ではないがそんなに寝れる時間はない……仕方ない、起きよう。


 制服へと着替えはじめる。

 勿論前の学校の制服だ。

 転校前お義父さんからは前の学校ので大丈夫だ、と言っていたがなにせ女子高だ。そもそも男子の制服などないのだ。

 制服が間に合わないからだと思っていたがそういう意味だったのだ。


 着替え終わると俺はリビングへと向かった。


「おはよう」


「あれ? お兄ちゃん起きたんだ?」


 朝食を食べていた舞は不思議そうに聞いてきた。


「あぁ、あの後すぐ目が覚めたんだ」


「そっか〜、よかった〜♪遅刻するところだったよ〜」


 待ってるつもりだったのだろうか? この義妹ならあり得る。


 今後気をつけよう……

 朝食も食べ終わり登校する時刻になった。


「今日も弁当作ってくれたのか?」


「うん、今日も自信作だよ♪」


「それは楽しみだ。じゃあ自分の分ぐらい自分で持っていくよ」


「いいよ〜お兄ちゃんに渡しとくとお昼前に食べちゃうかもしれないから」


 俺はそんな食いしん坊に思われてるのか?


「重くないのか?」


「全然大丈夫だよ♪」


 まぁこれ以上言っても無駄だろう。


「行ってきます」×2


「行ってらっしゃい」


 母親が見送りにきた。

 わざわざ出てこなくても……



「そういえばそろそろ体育祭のチームの色わかるね〜♪」


 登校中舞はよくわからない事を言い出した。


「体育祭この時期にやるんだな?

チームの色って?」


「あっ、そっか投票はお兄ちゃんの転校前にしちゃったからね」


「投票?」


「うん、うちの学校人数多いから何チームかに分かれるだけど、そのチームの色をみんなで投票して多かった色に決まるんだよ♪ それからチーム分けのくじして決めるんだって」


「へ〜じゃあ毎年色が違うんだな?」


「そうみたいだね〜♪」


 チームの色とか固定でいいと思うけどな……

 またあの校長先生の仕業だろう……



 学校に到着して教室へと着き席に座る。


「2人共おっはよー」


「おはよ」


 席につくなり美佳と莉子がやってきた。


「あぁ、おはよ」


「2人共おはよう♪そうだ、聞きたい事あるんだけどいいかな?」


 いきなり昨日の事を聞くのか?

 ほんとに聞くんだな。


「おっ、どうしたんだ?」


 美佳が聞き返した。


「えっとねー、兄妹って一緒にお風呂入るんだよね?」


 おい、聞き方が間違ってるぞ。


「はっ?おい、まさか涼太お前……」


「なんて奴だ……」


 美佳と莉子は軽蔑の眼差しを向けた。


「待て、落ち着け……実はだな……」


 俺は昨日の出来事を説明した。


「なんだよ〜、ビックリしたじゃねーか。舞、さすがに高校生になって一緒に入る奴はいないだろ」


 美佳は否定してくれた。よかった。俺がおかしいのかって少し不安になってたよ。


「涼太もなかなか苦労するな」


 莉子よ、俺の苦労をわかってくれてありがとう。


「そっかー。やっぱりお兄ちゃんの言った通りなんだね」


 2人の言葉もあり、ようやく舞は納得してくれた。


「しかし涼太、お前の家族大丈夫なのか?」


「わからない……」


 美佳からの質問に答えられなかった。


「まぁ頑張れ」


 莉子からは励ましの言葉をもらった。

 まぁ納得してくれたみたいだし今後はこの問題は大丈夫だろう。



 朝のホームルームを終え一限目がはじまった。

 しかしこの時間は朝に舞が言ってた体育祭のチーム分けをするみたいだ。


「何色になったんだろうね?」


「楽しみだね」


 クラスのみんなはワクワクしていた。そして発表された。チーム分けは4つだった。


 それぞれ抹茶、エメラルドグリーン、山葵(わさび)、虹……


 おい、何だこの色分けは?

 抹茶、エメラルドグリーン、山葵って3つとも緑じゃねーの?

 実際に見ないとわからないが多分緑だろう。

 最後虹って……7色じゃねーか。

 せめて赤とか青とかわかりやすいのじゃないの? 本当にこれでやるのか?


「私抹茶がいいなー」


「私は山葵♪」


 クラスのみんなは誰も突っ込まない。みんなどの色に入りたいかを言っている。

 おかしいと思うのは俺だけみたいだ。

 これが普通なのか? 受け入れるしかないのか? 


「あーそうだ、白谷兄、お前は男だから1人で1チームだ」


「はい? どういう事ですか?」


 突然担任からめちゃくちゃな事を言われた。


「いや、だからお前は男だから他に混ざったらそこが有利になるからな。だから1人で頑張ってもらう事になった。色は好きな色決めていいぞ」


「えーー」


 もう体育祭の日休もうかな……


「お兄ちゃん、負けないからね♪」


 舞よ、俺が勝てる競技は何一つとしてないだろう。

 というか俺は何の競技に出てどうすればいいんだ?


「お兄ちゃん、色決めた?私は抹茶になったよ♪」


「あーもう舞が決め……」


 そう言いかけ言葉を止めた。

 待て俺、舞に決めさせたらまたよくわからない色にされそうだ。


「えっ? 私が決めていいの?♪」


「いや、やっぱ自分で決める。……名字が白谷になったし白でいいや」


「お兄ちゃんにピッタリだね〜♪」


 おそらく何の色を言っても舞はそう答えるだろうと思う。


「先生、俺は白でいいです」


「おーわかった。みんなもチーム分け終わったか?」


「はーい」


 クラスのみんなはチーム分けが終わったみたいだ。


「じゃあ体育祭まで準備とかもあるしみんな頑張れよ」


 そうして一限目のチーム分けが終わった。


「お兄ちゃん、体育祭たのしみだね♪」


 全然楽しみではない。

 しかし逃げられないだろうな……


「あぁ、そうだな……」


 俺は不安だが精一杯の返事をした。

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