第4話 やっと……
「ん〜そういえば校内を案内ってどこ案内すればいいんだっけ?」
教室を出るなり舞はいきなりそう言い出した。
「いや……俺もわからないんだが?」
「そうだよね〜。あっ! ここは女子トイレだよ♪」
「俺に女子トイレの場所を案内してどうすんだよ……」
「えっ? 目の前にあったからだよ〜♪」
どうやら案内役を間違えたようだ。
このままでは校内全部まわる事になる。ここは女子高の中だ。俺が入れない所は多いだろう。
あれ? だとしたら案内は必要か?職員室や教員用男子トイレの場所はもう教えてもらっている。授業で移動があればその時ついていけばいい。
だがまぁこんな機会でもなければ校内を歩きまわることもないだろう。
それに思っていたよりこの学校はでかいみたいだ。設備等も結構充実してるみたいだし。
「お兄ちゃん、ここが学食だよー」
「おっ、ここか。ん? 放課後でも人がいるんだな?」
「うん。放課後は部活前に軽く食べれるようにパンとかだけどね」
なるほど。しかし女子でも部活前に食べたりするんだな。
「そういや、学食のおすすめとかあるのか?」
「う〜ん、やっぱ地獄ラーメンの閻魔レベルかな♪」
「……なんだって?」
俺の聞き間違いだろうか?
学食で聞くようなメニューには到底思えない。
「地獄ラーメンの閻魔レベルだよ♪」
聞き間違いではなかった。
「なんだその辛そうなラーメンは?
学食ってなんか日替わり定食とかそんなの思ってたぞ」
「辛いけどスープに深みがあって美味しいだよー♪ もちろん日替わり定食とか気まぐれ定食とかあるよ♪」
「待て、当たり前のように言ってるが気まぐれ定食って何だ?」
「作ってくれてる人のその時の気分で変わる定食だよ♪ 結構人気なんだよ?」
なんだそのギャンブル的な定食は? しかも人気だと? ……そうか、とにかく作る人の腕がいいんだな。何が出ても美味いのだろう。
「なるほど。作る人の腕がいいんだな? しかしこんなメニュー誰が考えてるんだ?」
「校長先生が学食の人に頼んでるらしいよ?」
校長……あんただったのか。納得してまった。
「おっ、2人も何か買いにきたのか?」
そう話かけてきたのは美佳だった。
「いや、とりあえず校内を案内してもらってただけだ。そっちは買いに来たのか?」
「部活前に腹ごしらえしないとな。体力が持たないんだよ」
昼休みにいっぱい食べてた気がするがそれだけ疲れる部活なのだろうか?
「何の部活入ってるんだ?」
「ん? バスケ部だよ。うちの学校結構強豪校なんだぞ?」
強豪校……なるほど。それはかなり厳しい練習をしてるんだろうな。
「そんじゃまた明日ね」
「あぁ、頑張ってな」
美佳はパンと飲み物を買うとすぐ去ってしまった。
「バスケ部強いんだな」
「うん。バスケ部だけじゃなくていろいろな部活凄いみたいだよ♪」
「舞は何か部活入ってないのか?」
「私は帰宅部だよ♪」
それは部活じゃない。しかし舞らしい返答だ。
「そっか。莉子は何か部活入ってるのか?」
舞に聞いてみた。
「えっと〜確か落語と漫才の研究会に入ってたと思う」
だから冗談とか好きなのか……
「研究会とかもあるんだな」
「お兄ちゃん何か入るの?」
「いや……入らないだろうな」
運動部は女子の中に入っても仕方ないし個人競技にしても練習できないだろう。文化系は入れない事はないがどっちにしても部員は女子だけだ。
なんか気まずいし入らないだろう。
「そっかーどっか入ったら応援しにいけたのになぁー」
舞は残念そうに言う。
「どっか入っても男1人だし練習にならないだろ?」
「陸上は?」
……練習できるのあったわ。
いや、もし入って大会なんか出てみろ。女子高から男子が出場だぞ?
恥ずかしい……
「あー確かにそれなら練習はできるな。でもやっぱ男1人だと寂しいからやめとくよ」
「えー残念」
さすがに諦めてくれ。
「あっ、一応言っとくね。あっちが部活棟でだいたいの部室があるよ」
「へー部活棟もなかなか大きいな」
いろいろな部活が凄いと言ってたが環境もよさそうだし強い人が集まるんだな。
「これでだいたいはまわったか?」
「うん。そうだね。結局どこ案内していいかわかんなくてぶらぶらしちゃったけど」
「まぁでも結構楽しかったぞ。案内ありがとうな」
「それならよかった♪」
「それじゃあ帰るか」
「うん。帰宅部の活動だね♪」
うん。もうそういうことでいいや……
「ただいまー」×2
やっと家に帰ってきた。しかし疲れた。今日は早めに休もう。
リビングの方から母親が姿を現した。
「おかえり〜。学校はどうだった?」
「どうって……女子高でビックリしたわ。お義父さんと校長先生が仲良いみたいだけどよく入れたもんだな。しかしせめて事前に言って欲しかったよ」
俺は文句ばかり出た。
「お兄ちゃん人気者だったよ〜。休み時間とか他のクラスの子達もみんな見に来てたし」
舞よ、だからそれは人気があっての事ではない。
「あらあら、よかったわね涼太」
何がよかったのだろうか?
その前に俺の文句は聞いてたのだろうか?
「じゃあお母さんは夕飯の準備するね」
「私も手伝うよー♪とりあえず着替えてくるね」
「あら舞ちゃん無理しなくていいのよ?」
「全然大丈夫だよー♪」
母親と舞もすっかり仲良しだ。
「俺は疲れたから部屋で休んでるぞ。」
2人にそう告げて俺は部屋に戻った。
着替えを終えベッドに横たわる。
「はぁ〜しかし1日がこんな長く感じたのは初めてだ。マジで疲れた……」
とりあえず夕飯まで仮眠する事にした。
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