第3話 長い1日……

 朝のホームルームが終わり俺と舞の前に2人の生徒がやってきた。


「やっほー舞のお兄さん、初めまして。私は須田美佳(すだみか)って言うの。よろしくね」


「初めまして。私は加賀莉子(かがりこ)よろしく」


「2人共私の友達だよ〜」


 なるほど、舞の友達か。


「えっと……須田さんに加賀さんね。よろしく」


「ははっ、美佳って呼び捨てでいいよ。堅苦しいの嫌いだし私も涼太って呼ばせてもらうから」


「あぁ、わかった。その方がありがたいよ。」


 美佳の第一印象は人見知りしない元気な子って感じだった。


「私の事は莉子様と呼ぶがいい」


「……えっ?」


「冗談だよ。私も莉子でいい」


 凄くビックリした。

 莉子の方は人見知りする大人しそうな感じだったからだ。こう見えて冗談が好きなのか?


 俺の驚いた顔を見て3人は笑ってる。凄く悔しかった。


「しかし涼太凄いよねー。よく女子高に転校しようと思ったよね。ハーレムじゃん」


 いきなり美佳が痛い所をついてきた。


「いや……これは親が勝手に決めていて今日ここに来るまで女子高だと知らなかったんだ……」


「えーマジで? そんな事あるんだー?」


 美佳はお腹を抱えて笑ってる。


「まぁよく分からんが大変だな」


 莉子は結構クールだった。


「お兄ちゃんもう2人と仲良しさんだねー♪」


 舞は相変わらずフワフワしてる。

 これは仲良くなったでいいのか?


「2人も驚いただろ? 男が転校してきて」


 俺は美佳と莉子に聞いてみた。


「まぁ入って来た時は驚いたけどそういうこともあるんだなーって」


「うん、私もそう思った」


 なるほど。2人もそっち側か……

 いや待て、やはり俺の方がおかしいのか? こっちに来てから感覚がおかしくなっている気がする……


 悩んでいたら授業が始まった。

 正直勉強は苦手な方だ。というより教師の言葉を聞いてると眠くなってしまうタイプだ。


 ふと舞の方を見てみると真剣な顔で授業を聞いている。そんな表情初めて見たな。


 ふむ、真剣な顔もいいがやはり笑顔の方が可愛い……いやいや義妹相手に何を言ってるんだ俺は……真面目に授業聞くか。


 そして昼休みになった。


「お兄ちゃん、私とお母さんでお弁当作ったんだよー」


 舞はそう言いながら弁当を取り出し俺に手渡した。


「おぉ、弁当作ってくれたのか? ありがとな。しかし弁当とはいえ重くなるだろ? 朝渡してくれてもよかったのに」


「えへへ、ビックリさせようと思って」


 何故そんなにサプライズが好きなのだろう?


「おっ! こんな可愛い子に弁当作って貰えるなんて羨ましいぞー」


「幸せ者め」


 俺をからかいながら美佳と莉子がやってきた。自然な流れで4人で食べる事になった。


 まぁこの学校には他に知り合いもいない上、俺以外は全員女子だ。1人で食べるかのどちからかの選択しかない。まぁせっかく作ってくれたんだ。一緒に食べるのが普通だろ。


 そう思いながらハンバーグを一口食べた。


「美味い!」


 あまりの美味さに言葉に出てしまう。


「よかったー。今日の自信作だよ♪」


 舞は凄く嬉しそうだ。


「しかし毎日作るのは大変だろ? 無理はしなくていいからな。」


「うん。その時は学食になると思うけどごめんね」


「いやいや、謝る事ないだろ? 作って貰えて感謝しかないよ」


 舞と今後の事を話してると美佳と莉子が話に入ってきた。


「学食行くのはいいけど、涼太絶対注目の的になるねー♪」


「目立つのは好きじゃない……」


 しまった。学食と聞いてちょっと憧れがあったから楽しみになってたが確かに面倒だ。


「休み時間のたびに他のクラスの子や、先輩たちまで涼太見に来てたもんねー」


「お兄ちゃん人気者だね♪」


 美佳はからかってくるし、舞は相変わらず呑気なもんだ。


「それは男が転校してきたって話聞いて本当かどうか確かめにきたんだろ?まぁしばらくすればなくなるだろ」


 そうあって欲しいと心から願う。

 話題を変えよう。何かないか……そうだ。


「そういや舞、授業中は真剣な顔で話聞いてたな。俺そんな真剣な顔初めて見たよ」


「えー? 授業中だよ。変な顔するわけないじゃん」


 いや、まぁそれもそうなんだが……

 すると莉子がとんでもない事を言い出した


「というか舞は全国模試トップクラスの実力だよ。この学校でも学年1位だし」


「なん……だと?」


 全国模試トップクラス? この舞が? いや待て! 騙されるな俺! 莉子は冗談が好きなはずだもうその手には乗らないぞ。


 見破ったぞといわんばかりの表情で莉子を見た。


「残念ながら真実だ」


 莉子がそう言うと


「あーお兄ちゃん信じてないでしょー」


 ぷーっと舞は頬をふくらませた。


「いや、信じてないわけじゃないが舞がそんなに頭がいいって聞いてビックリしてるんだよ。俺なんか勉強苦手だし」


「そっか。じゃあこれからは私が勉強教えてあげるね♪」


「いやー……お手柔らかに………ははっ」


 俺はなんとか逃げれる方法を考えようと思った。しかし家に帰れば同じ家の中だ逃げ場はない。どうする?


「涼太絶対逃げようと考えてる。」


 ドキッ! 莉子に見破られた。なかなか鋭いな。


「えー? お兄ちゃんそうなのー?」


 また舞は頬をふくらませながら聞いてきた。


「いや〜そんなわけないじゃないか……ははっ」


 かなり苦しい。


「だよねー♪頑張ろうね、お兄ちゃん」


 いけた。なんて素直なんだ。頭がいいのに何故だ? 素直すぎて俺は心配だ。


「しかし今は転校してきたばかりだしいろいろ大変で疲れてるから勉強は落ち着いてから教えてくれ」


 我ながらナイスアイデアだ。これで暫くは大丈夫だろう。


「そっかー。確かにそうだね。じゃあ落ち着いたら言ってね」


 舞は簡単に納得してくれた。美佳と莉子は疑いの目で俺を見てる。

 まぁそうだろうな。逆の立場なら俺も信じられない。


 俺は酷い事をしてまったのか?

 反省しなければ……

 そうして昼休みも終わり午後の授業も終わり放課後になった。


「あーなんか今日1日凄く長く感じた。早く帰って休みたい……」


「何言ってるの? お兄ちゃん。それじゃあ校内を案内するね♪」


 しまった。まだそれが残ってたか……


「あぁそうだった。じゃあ案内頼むよ」


 俺の1日はまだ終わらないらしい……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る