第2話 現実かよ……
俺は今、義妹の舞に手を引っ張られ桜ヶ丘女子高校の校内を歩いている。
未だに信じられない。
ほんとに俺はここに転校してきたのか? ドッキリでしたって事はあるのか?
俺がいろいろ考えていると舞は歩みを止めた。
「お兄ちゃん、着いたよ〜」
「ここは校長室?」
「そうだよ〜、校長先生に呼ばれてたの」
そりゃそうか。……いやその前に普通面接やらいろいろあるのでは?
またいろいろな事を考えてしまう。
しかし舞はドアをノックして
「失礼しま〜す」
あっさりと入っていってしまった。
確かにここでいろいろ考えても答えはでない。俺も入るしかない。
「えっと……失礼します」
中に入ると2人の男性が待っていた。
「初めまして。君が涼太君だね? 私は校長の里中という。そしてこちらが君のクラスの担当の南先生だ」
「1-3担任の南だ。よろしく」
2人から挨拶をされた。
「あっ、よろしくお願いします……いや、じゃなくて俺ほんとにここに転校してきたんですか?」
俺は流されそうになったがなんとか踏ん張った。
「おや? 君のお父さんから何も聞いていないのかな?」
「はい。とりあえず舞と同じ学校だから一緒に行けばいいとだけ」
「はははっ、そうか。それはビックリしただろうね」
ビックリどころじゃない。全て嘘だと思ったよ。それはもう誰も信用できなくなるぐらいに。
そう思ってると校長先生は話を続けた。
「君のお父さんとは古くからの友人でね。それで君の事を頼むと言われてしまってね。私もおもし……いや共学にしたいなと思っていたからいい機会かなと」
今完全に面白そうと言おうとしたよね? おいおいそんなんでいいのかよ? 不安しかねーよ。
舞の方を見ると舞はニコニコしてた。分かっているのだろうか? このおかしな状況を。
南先生の方を見てみると『諦めなさい』と言わんばかりの顔してた。
それを見て俺は抵抗できないんだなと思いこの状況を受け入れるしかなかった。
受け入れたのが分かったのか南先生が口を開いた。
「現状この学校の生徒で男なのは君1人だ。女子高とだけあって男子更衣室や男子トイレはない。着替えは空き教室を臨時男子更衣室にしてトイレは教員用の男子トイレを使ってくれ。場所はその時白谷さんに連れて行ってもらいなさい。後放課後にでも校内を案内してもらってくれ。白谷さん頼めるかな?」
「うん、全然大丈夫だよ。」
俺が入る間もなく決まってしまった。まぁ更衣室やトイレは文句言ってもどうしようもないし仕方ないか。
とりあえず舞に案内してもらえるしなんとかなるか。
しかしまだ問題が……
「さぁ、じゃあ教室に向かおうか」
「はーい」
南先生が切り出し舞が返事をした。
「はい、分かりました」
俺も返事をすると
「じゃあ学校生活楽しんでね」
校長先生からそう言って見送られた。校長先生絶対楽しんでるな。
しかしここにいる人は受け入れてもらえてるのだろうが他の人達はどうなんだ? 女子高に男子が転校なんて普通受け入れられないだろ。凄く逃げたい。なんか最近凄くネガティブになってるな。
「お兄ちゃん何ぶつぶつ言ってるの?」
舞の頭の上に?マークが見える気がする。
「いや、どう考えても不安しかないよ。」
今の俺の精一杯の返事だ。
「大丈夫だよ。私もいるもん」
舞はニコニコしながら答えた。
どこからそんな自信がでてくるんだ? 兄妹になったとはいえまだ出会って数日だ。俺の事もよくわからないはずなのに。
そうこう言ってるうちに1-3の教室に着いた。
「じゃあ、みんなに説明するから呼ばられた入ってきてくれ」
南先生はそう言うと教室に入っていった。
「じゃあ、お兄ちゃん頑張ってね」
舞もその後に続いて教室に入っていった。
逃げるなら今しかない。俺の中の悪魔が囁いてくる。
いや……逃げてどうする?
俺1人では他にどうすることもできない。
それに妹が悲しむかも……兄としてそれはダメだ。
「それでは入ってきてくれ」
心の準備が出来ないまま先生から呼ばれてしまった。行くしかない。
ガラッとドア開け教室の中に入った。
「えっ? 男の子?」
「どうなってんの?」
クラスのみんながざわついてる。
そりゃそうだろな。
しかし俺の周りは事前に説明しないのだろうか? サプライズが好きなだけなのか?
そうして教壇の前に立って自己紹介をした。
「初めまして。白谷涼太と言います。俺自身なぜこの高校にきてるのかよくわかってませんがみなさんよろしくお願いします。」
実際お義父さんと校長先生が仲がいいというだけでここにいる。
ほんとによくわからないのだ。しかし受け入れられるのだろうか?
「あれ? 白谷って……」
クラスのみんなが舞に注目した。
「私のお兄ちゃんだよ。親同士が再婚して兄妹になったの♪」
舞はニコニコしながら答えた。
「何だーそうだったんだー」
「なら納得だねー」
クラスのみんながそう言い出した。
あれ? 納得されてる。 何故だ? いや普通は納得できるものなのか? 俺がおかしいのか?
俺の頭の上には?マークが飛び交っているだろう。
「はい」
1人の女子生徒が手を挙げた。
おっ! やっぱおかしいと思う人もいたのか。
「一応女子高だし制服も女の子用しかないので女装させるはどうでしょうか?」
はい? 女装だと……何故そうなる? 勘弁してくれ。
舞が立ち上がった
「じゃあお兄ちゃんじゃなくてお姉ちゃんって呼ばなくちゃいけなくなるじゃん」
待て! そもそも女装しても男だからお兄ちゃんでいい。
いや問題は今そこじゃない。
女装なんてまっぴらだ。
「あの〜女装はしたくないのですが……」
「えー、面白そうなのに」
女子生徒は残念そうだ。
俺はクラスでおもちゃ扱いをされるのだろうか?
「まぁそういうのはおいおいで、とりあえず席は白谷の隣りに座ってくれ。わからない事あったら聞きやすいだろ? まぁ授業中は静かにしてくれよ?」
南先生はそう言うと舞の隣りを指した。
「わかりました」
おいおいって女装させる気なのか? とりあえず俺は返事をして席に向かう。
「お兄ちゃん、席隣りだったねー。わからない事あったら聞いてね」
舞は笑顔でそう言った。
しかし俺の心は朝の出来事だけで疲れ果ててしまっていた。
これから授業の内容頭にはいるだろうか?長い1日になりそうだ……
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