第二百二十六話:≪龍喰らい≫
「それよりも防具の調子はどうですか?」
「ああ、問題はない」
ルキの言葉に俺はそう返した。
そして、見せつけるように自身が身に纏っていた鎧を見せつけた。
形自体は西洋甲冑を思わせるが、どこかSFチックというか近未来的というかメタリックな光沢といい、若干『Hunters Story』の世界観とはズレたデザインの防具。
「気にはなっていたが例の≪龍狩り≫の防具という……」
「ああ、そうだ。最近、ある程度完成してな」
スピネルの言葉に色々と付き合わされたのであろうルドウィークが答えた。
エルフィアンとして「楽園」のこと、『Hunters Story』のことは俺よりも詳しいはずの二人をして、興味深そうな態度。
それも当然と言えば、当然だ。
この防具は『Hunters Story』の設定にはない、完全なオリジナル防具なのだから。
「――≪龍喰らい≫と言ったか、とうとう防具の方まで作るとはな」
「良い名前でしょう?」
「ああ、全く完全にオリジナルの防具まで用意するとは……」
「というよりも防具も武具も合わせて≪龍殺し≫なので、≪龍喰らい≫は≪龍殺し≫の一部でしかないんですけどね」
とは、ルキの言だ。
俺自身、途中までは誤解していたのだが彼女の目指す≪龍殺し≫の構想というのは、武具も防具もまとめてただ≪龍種≫を討つ存在へと昇華させるものことを言うらしい。
曰く、「いや、武具だけじゃ片手落ちでしょ。常識的に考えて」とのことだ。
まあ、≪龍≫属性エネルギーという特攻エネルギー属性を使える武具というのは、確かに革命的ではあったが……言ってしまえばそれだけだ。
それだけじゃ、物足りないと考えるルキにとってはオリジナル防具を作り、それによる対≪龍種≫に向けての特殊スキルまで用意して完成ということになるらしい。
――まあ、スキルゲーな所もあるからな。確かに≪
「それでその完成度とやらは?」
「大体七割ぐらいですかね、鎧部分は問題なく出来ているでしょう?」
「俺もデザインの案を作る際には協力をした」
「自分だけのオリジナル防具……いいですよね!」
「わかってるな!」
「貴様ら本当にその方面に関しては仲がいいな。……ふっ、婚約者が妬くのではないか?」
「エヴァならむしろノリノリで……」
「全体のデザインをまとめたのはエヴァンジェル様ですよ? 私たちは無秩序に要望を出していただけで」
「あっ、そう」
スピネルが頭が痛そうに目頭を押さえていた。
「それで今回はその試運転兼ねてて装備していると?」
「ああ、七割とは言うけど十分に防具としての機能は実戦に耐えうるレベルだしな」
「いつもの≪煉獄血河≫でもよかった気もするが……」
ルドウィークがそう言ったが、確かにそれは否定はできない。
≪赫炎輝煌≫に≪剛鎧≫、≪地脈≫とどれも実戦で使いやすいスキルではあるが、流石に今回のような状態だと使い辛い。
≪煉獄血河≫のメインと言ってもいい、≪赫炎輝煌≫は攻撃時に爆炎をもって追加ダメージを与えるというシンプルで使いやすいスキルであるが、残念ながら≪シャ・ウリシュ≫は炎熱関係に対する耐性が高くほぼダメージソースとして機能しないだろう。
そして、≪赫炎輝煌≫を除けばダメージカットの≪剛鎧≫、リジェネの≪地脈≫。
強力ではあるが今回の一件は出来るだけスピーディーに敵を討つ必要がある。
そういった点を踏まえて、今回は≪煉獄血河≫はお休みである。
「そこで≪龍喰らい≫というわけなんですよ!」
「合理的な判断というやつだ」
「単に新しい装備を装備して≪
今回、≪龍喰らい≫という防具を装備した理由について懇切丁寧に説明したが、何故かスピネルとルドウィークの目には疑いの色があった。
――やはり、ウッキウキでエヴァや母さんまで巻き込んでデザイン大会したのがダメだったか……でも、あとで言ったら二人絶対拗ねてただろうし。
エヴァンジェルとアンネリーゼには逆らえないので仕方ない。
それに俺の中にもそんな気持ちが無かったわけではない、とはいえちゃんとある程度の試験で性能を確認した上での投入だから安心して欲しい。
七割とはいうものの、ほぼ上位防具としては完成しているもので欠陥品とかそういうことではないのだ。
「ならば、まあ信じるが」
「俺にとっては命を預けるものだからな。そこは信じて貰って構わない」
「……まあ、それはそうか」
「それにしてもとうとう完全オリジナルの防具までか……
「今更ですよ、今更」
「それでこの≪龍喰らい≫はどんな≪素材≫を元に?」
「よくぞ聞いてくれました! この≪龍喰らい≫は≪龍種≫の素材アイテムを基礎に創り上げました! ≪宝玉≫関係は何とかなってもそれ以外は無いですからね、補填するのも中々……。災疫龍≪ドグラ・マゴラ≫、溶獄龍≪ジグ・ラウド≫、冥霧龍≪イシ・ユクル≫のそれぞれの遺骸の素材を骨組みにですね、研究所の方にあった加工法を利用してそれから――」
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