第百六十七話(1/2):第五区画
時間をほんの少しだけ戻す。
「ぉおおおッ!!」
叫び声をあげるというのは大事なことだと、狩人としての戦いを経て俺は学んだ。
故にこそ、気迫を以って放った斬撃は深々と≪
――≪赫炎輝煌≫
次いでその軌跡をなぞるように起こった爆炎が傷痕を焼きながら奔る。
「aaaAAaaAAaー!!」
それは如何に大型モンスターと言えども無視できない一撃。
≪
その結果は――手応えあり。
脳内を奔る不可思議な感覚がそれを教えてくれる。
――今のは≪カウンター≫が発生したな。
頭の隅でそんなことを考えながら、俺は殺到するように襲い掛かってきた≪ジリヴァ≫の群れに向き直り、≪宝刀【天草】≫を構え直した。
そして、冷静に――一閃、二閃。
刃を走らせて、確実に≪ジリヴァ≫の首を数匹分切り落とし囲まれる前に突破する。
≪剛鎧≫によるダメージカットと≪地脈≫の回復を活かせば多少強引なことをしても被害は無いに等しい。
≪赫炎輝煌≫も確かに強力なスキルではあるが、この安定性こそが≪煉獄血河≫の真の強みとも言える。
――≪ジリヴァ≫の数も減って来たな……。
≪
――≪
こちらの動きを制限して≪
流石に本体の攻撃を諸に受けてしまうのは頂けない。
スキルの恩恵と防具の防御力もあって一度や二度程度で死ぬことはないが、強力な攻撃を受けてしまい足が止まってしまえばゲームと違ってダウン中の無敵時間があるわけではないのだ、追撃をされてそのまま……というのはあり得ないことではない。
――本体の方を仕留めようと踏み込んでも、邪魔をしてくるからな。やはり、狙うなら本体より先に≪ジリヴァ≫の群れ……。
攻撃力自体は低いからと無視して本体を狙いにかかるとドツボに嵌るタイプ。
そう判断をしてから、俺は戦い方を変えた。
まずは先にそちらを処理してから本体に取り掛かる、遠回りのように見えてこれが一番確実で安全、かつ早いのだ。
――こういうタイプのモンスターは居たな……流石に一体化しているの見たことはないが、言うなれば群れを率いて戦うモンスターと一緒だと考えれば……。
異様な外見、初めて見る攻撃、それらに目を奪われがちにはなるが、落ち着いて戦えば根底にあるものが伺えた。
――生物的な部分を完全に制御しているからこそ、ルーチンがわかりやすい。規則的だ。
ゲーム内で磨いた経験を思い出し、俺は≪
外でのモンスターはまだ似通った動きはありつつも、本能的に不意に違う行動を取ったりするというのに、≪
ただ、命じられたプログラム通りに対応し俺に襲いかかるという動きを繰り返すだけだ。
――……今っ!
≪
≪カウンター≫が発生したことを教えてくれる不可思議な感覚が脳内に奔るも、攻勢には転じず一度の攻撃でやめ一歩下がる。
そして、俺を追いつめるかのように迫りくる≪ジリヴァ≫の群れに対し、≪宝刀【天草】≫を構え直し、数匹の首を切り落としつつ包囲を突破して改めて距離を取る。
その繰り返し。
既に何度となくその一連のルーチンを行い、≪ジリヴァ≫の数も見てわかるぐらいに取れるぐらいに減ってきている。
――この調子ならイケるかな。
軽く見ているわけではない。
だが、冷静に戦況の流れを見ての結論だ。
こちらは相手の戦闘ルーチンを理解した。
それを活かして最小限のリスクで厄介な≪ジリヴァ≫の数を減らすことにも成功。
それによって敵の攻撃頻度、密度の低下。
並びに徐々にこちらの機動力が戻ってきている。
つまりは頭数が減ってきたため音響攻撃による、こちらへの動きの制限が解けているのだ。
――相手は≪ジリヴァ≫という武器を減らし、こちらは本来の力を取り戻していく。全ての≪ジリヴァ≫を駆逐すれば、後に残る本体だけならそれほど脅威でもない。
油断をしているわけではない。
≪
常に敗北へと至る可能性は側にあり、一手を誤ってしまえば容易に敗者になって命を失う。
その恐怖はモンスターと狩う者にとっての身近で、そして恐ろしい敵だ。
俺はその敵と、
「十年以上戦い続けてきた……今更だ」
息を軽く吐き、整える。
確信はある、これまでの経験という裏打ちが俺に精神的な余裕を齎してくれる。
――問題ない、このまま続けていけば……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます